27日のNYダウは74ドル高。大雪で延期されたイエレンFRB議長の上院銀行委員会での議会証言では、最近の経済指標の軟調は大寒波も一因とみるが今後の動向を注視し結論を急ぎたくないと述べていた。量的緩和縮小の再考もあり得るような含みを持たせて下院の時と同様に好感度が高く、新規失業保険申請件数の悪化で安く始まったNYダウをプラス圏に押し上げた。ウクライナ情勢悪化で米国債が買われ長期金利が低下したのも追い風になりS&P500終値は過去最高値を更新。28日朝方の為替レートは、ドル円は102円前半、ユーロ円は140円近辺で前日とあまり変わらない水準だった。
月末最終営業日なので取引時間前は経済指標の発表ラッシュ。消費者物価指数(CPI)の全国1月は1.3%増と8ヵ月連続プラスで市場予測通りになり、東京都区部2月は0.9%増。1月の完全失業率は3.7%で横ばい、有効求人倍率は0.01ポイント増の1.04倍でどちらも市場予測通り。全世帯家計調査・支出は1.1%増、鉱工業生産指数速報値は4.0%増、商業販売統計の小売販売額は過去最大の伸びの4.4%増でいずれも市場予測を上回り、ネガティブな数字は一つもなかった。
イエレン証言のイベントを通過し、未明に種子島でH-IIAロケット23号機の打ち上げに成功したが前日には北朝鮮もスカッドミサイルに打ち上げに成功。週末、月末特有の変動要因も予想される日経平均は6.44円高の14929.55円と小幅高で始まった。序盤は売り買いがせめぎあい、おおむね14900~14940円の狭いレンジで行ったり来たり。膠着状態を抜け出したのはドル円が102円を割り込んだ午前9時50分頃からで、14900円を割って10時2分に日経平均は14857円、TOPIXは1209.46まで下落し、そこで底を打ってV字回復。プラス圏寸前まで上昇するが押し戻され、14880~14900円近辺での小動きになる。11時頃から一時プラスにも浮上するが、前引けは2.46円安の14920.65円だった。
方向感の定まらない市況は後場も続き、中国の株安を背景に安くスタートして急落。たちまち下げ幅が100円を超え午後0時40分に14800円割れの14797円の最安値をつけた後、14850円近辺に戻すなど激しく振れる。1時台になると落ち着いて14820~14850円近辺のレンジでの安値もみあいがしばらく続くが〃小春日和〃はつかの間。1時45分頃からまた大きく下げ、2時1分に14735円の最安値をつけた。その後は戻しても14800円にタッチできず3ケタ安でウロウロするが、大引け前に月末の「ドレッシング買い」が入ったかにわかに上昇し14800円、14850円を突破する。しかし最後の最後で押し戻され終値は82.04円安の14841.07円で3日続落した。
今週は1勝4敗、前週末比で24.60円安で取引を終えた。2月の月間トータルの騰落は73.46円安で上昇の波に乗りきれなかったが、1月の1376円安と比べればまだましだろう。この日は乱高下した印象があっても日中値幅は208円。TOPIXは-5.96の1211.66だった。売買高は23億株、売買代金は4日ぶりに2兆円を超えて2兆2479億円だった。
東証1部の値上がり銘柄は487、値下がり銘柄は全体の3分の2近い1174。33業種別騰落率のプラスは精密機器、鉱業、保険、医薬品、水産・農林、金属製品の6業種。マイナス幅が大きい業種はパルプ・紙、銀行、小売、倉庫、不動産、鉄鋼などだった。
日経平均採用225種は値上がり73銘柄、値下がり141銘柄。プラス寄与度1位はKDDI<9433>で+8円、2位は日東電工<6988>で+4円。マイナス寄与度1位は良くも悪くも2月最大の注目銘柄だったソフトバンク<9984>で-28円、2位はファーストリテイリング<9983>で-19円だった。
メガバンク、証券大手は軒並みマイナス。ウクライナ情勢を受けてアメリカが金利安、為替がドル安円高になっては輸出関連の自動車は分が悪い。今年4~9月期は部品の値下げ要求を抑えて協力企業の経営改善を働きかけると報じられたトヨタ<7203>は70円安。その協力企業のデンソー<6902>は80円高。ホンダ<7267>は52円安だった。電機もパナソニック<6752>16円安、富士通<6702>11円安、NEC<6701>6円安、東芝<6502>2円安など良くないが、6円高のシャープ<6753>と23円高のソニー<6758>は逆行高。ソニーは創業の地の東京・御殿山にある通称「ソニー村」の旧本社ビルを売却と報じられると「聖域なきリストラ」が好感を呼び、シティがレーティングと目標株価を引き上げた。
大引けでMSCI銘柄採用のリバランス買いが見込まれたセイコーエプソン<6724>は売買代金5位に入り25円高。TDK<6762>は上釜健宏社長が「自動車向けの売上高を17%から20%に拡大し2000億円以上にする」と話し40円高だった。アップル関連銘柄のフォスター電機<6794>は通期の経常利益見通しを80億円から66億円に下方修正すると204円の大幅安で値下がり率1位。iPhoneなどスマホ上位機種向けの需要が伸びないという。鉱工業生産指数に良い数字が出て受注増期待で機械セクターは好調。ジェイテクト<6473>は工作機械の新機種を発売し42円高。コマツ<6301>は27円高。しかしファナック<6754>はクレディスイスが目標株価を引き上げたものの5円高どまり。「御三家」はかなしからずや、好材料にも染まずただよふ。
東北電力<9506>は通期経常利益2.2倍の上方修正、3期ぶりの5円復配も発表し8円高。伊藤忠エネクス<8133>は、2016年3月期は電力関連事業で営業利益40億円を目指すという計画を発表し14円高。火力発電所のポンプを製造する酉島製作所<6363>は野村證券が投資判断を新規に「バイ」、目標株価を1850円としたため急伸し170円高で値上がり率1位。火力発電だけでなく海水淡水化プラント用のポンプも好調という。
オリックス<8591>は、通期の純利益を350億円上方修正し増益率が60.8%に拡大するのを好感され12円高。売買代金12位に入った。買収したオランダの資産運用会社ロベコなど海外子会社の収益が寄与し売上高も1000億円上方修正。連結子会社化した大京<8840>の株式評価益を計上して純利益が上積みされる。大京は3円安だった。日本駐車場開発<2353>の8~1月期の営業利益は従来予想の14.6%増の12.04億円に拡大し、通期見通しは据え置きでも配当を2円50銭から2円70銭に増額修正して1円高。
JT<2914>はEUのたばこ規制強化が尾を引いて50円安。ゼンショーHD<7550>は4月から牛丼並を10円値下げし270円にすると発表したが反応は冷淡で28円安。ロボット関連の菊池製作所<3444>は、東京理科大の小林宏教授が開発した装着型の動作補助装置「マッスルスーツ」商品化を目的にイノフィス社を設立と発表しストップ高比例配分の700円高。日本テレビHD<9404>は定額動画配信「Hulu」の日本向け事業を取得すると発表し33円高になった。
この日の主役はミクシィ<2121>。スマホ向けゲーム「モンスターストライク」が約300万人のユーザーを獲得し、中国でも配信。ゲームの広告宣伝に使う目的で公募増資と売出しで80億円を調達と発表した。朝はマイナスで始まったが見直し買いが入り、さらにストップ高までいって1000円高。今やSNS関連と言うよりゲーム関連とみなされており、個人投資家の人気が高いこのジャンルは増資=希薄化懸念、売出し=需給悪化懸念で株価が下がるというセオリーを打ち破れるだけのパワーがある。(編集担当:寺尾淳)