【今週の展望】日本株の「彼岸天井の物語」が始まる週か

2014年03月09日 20:28

 NN倍率は、かつては日経平均のほうが数字が大きいのが普通で1を上回っていた。それが2010年以降はずっと1を割り込むようになり、アベノミクス相場前夜の2012年11月14日のNN倍率は0.54だった。翌日からアベノミクス相場が始まり、およそ半年後の2013年5月20日にNN倍率は1をオーバーし、22日も1.02をマークした。つまり、アベノミクス相場とはNN倍率的に言えば「1に戻っていくプロセス」だった。

 しかし、2013年中に終値でNN倍率が1を超えたのはこの2日間だけで、5月23日の「大暴落」以後、1はどんどん遠のき6月13日には0.82まで下がる。そこから再び約半年をかけて徐々に戻して、12月3日には0.98と1まであとひと息に迫った。日経平均が年初来高値をつけた12月30日のNN倍率は0.987で、この時期は「第二次アベノミクス相場」と名付けてもいいかもしれない。

 今年に入るとNN倍率=1は再び遠のき、2月14日には0.88まで下がった。前々週の2月25日のNN倍率は0.930だったが、それからNYダウが3日続伸、日経平均が3日続落して28日は0.909まで下落した。それが1週間後の前週末の3月7日には0.928まで戻したが、その動きは日本株の「売られすぎ」からの修正がかかったと解釈できる。

 そして今週、外部環境の好転を受けて期待できそうなのがNN倍率の「ボックス圏上放れ」である。NN倍率の日足チャートを見ると、数値が一定の範囲で上下動する「ボックス圏」がよく現れる。直近では2013年11月15日から今年の2月3日までの間、0.94~1.00の範囲のボックスになっていた。名付けるとすれば「年末年始ボックス」。それが2月3日の0.95から、日経平均が今年の最安値をつけた2月5日の0.91にかけて「ボックス圏下放れ」が発生し、2月5日から3月7日までの間、今度は0.88~0.93の範囲のボックスになっている。名付けるとすれば「節分底ボックス」か。今週、絶好の外部環境を追い風にこのボックスを脱して上放れするとしたら、NN倍率はどこまで上昇できるか。

 次のボックスを「彼岸天井ボックス」と名付けるとしたら、堅めに見積もってまず考えられるのは「年末年始ボックス」への回帰である。その変動範囲は0.94~1.00だったから、7日のNYダウ終値で試算すると、「彼岸天井ボックス」の日経平均終値の底値は15465円になる。ボックスの上放れも下放れも5日以内に終わるものなので、今週はこの数値が日経平均の上値のメドになると思われる。それはNN倍率が3月中に再び1まで戻っていく「彼岸天井の物語」の始まりだ。

 一方、今週の下値のメドは15158円とみる。前週、何度も語られていた12月30日の昨年来高値と2月5日の今年の最安値の中間点で、「半値戻しは全値戻し」というフレーズを耳にタコができるぐらい聞かされた。「彼岸天井の物語」で全値戻しを目指すなら、このラインを割り込んではまずい。

 7日のテクニカル指標を確認すると、75日移動平均線の1円下だが、ほぼクリアとみていい。ミニ・ゴールデンクロスを演じてくれた5日移動平均線も25日移動平均線もずっと下にある。上を見ると15299円に日足一目均衡表の「雲」の下限があるが、上限は15496円でしかも今週は都合がいいことに「ねじれ」が起きるので抵抗を受けにくい。海が二つに割れて通り道ができるようなもので、突き抜けるにはチャンス。日本株は「約束の地」にたどり着けるか。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは15158~15465円とみる。日銀の金融政策決定会合が現状維持でも問題はないが、怖いのはプーチン大統領の裏切りだ。