前週の日経平均の軟調をもたらしたのは、雇用統計のポジティブサプライズに対してアメリカの長期金利が全然反応せず、ずっと低調に推移したこと。これに尽きる。もし長期金利が少しは上昇して為替のドル円が102円台に定着していたら、ウクライナ情勢が悪化しようとモメンタム銘柄が軟調に推移しようと、7日の424円の大幅安はなかったはず。「労働参加率が低下している」などと雇用統計の数字にケチをつける「ポジティブサプライズ殺し」が横行した結果、こんなことになってしまった。就業をあきらめて労働市場から退出するなんて今に始まった話ではない。100年前にもそんな人はいたはずだ。
ボヤキはこれぐらいにして、もし、今週のアメリカの長期金利に上昇の動きが出て為替のドル円が102円台に安定的に乗れば、日本株の上昇を抑えて日経平均の上値を重くしている条件は変わる。引き続き史上最高値圏にあるアメリカ株にフォローされて、「迷宮」から脱出を果たせるはずだ。前週は為替の円高があったために東京市場はアメリカの株高に追随できず、日米連動ならぬ「日米逆相関」の状態になっていた。
今週は為替レートの1ドル=102円が分水嶺になると思われる。102円台に安定的に乗れば日経平均が14000円台前半にくすぶっている状態を脱し、14000円台後半に上昇して15000円に迫る体制が整うだろう。しかし102円を突破できなければ14000円台前半でのボックス圏もみあいの迷宮の中に閉じ込められることになる。そうなれば、脱出しようとしても脱出できないことより、「まあ、こんなもんでしょう」「居心地は別に悪くない」と、状況になじんでしまうほうが怖い。
為替レートの予測は影響を与える要素が多くて難しいが、あえて好意的に解釈すれば、ウクライナ情勢にポジティブな動きが出て世界を安心させ、アメリカ株が引き続き史上最高値圏で推移するとみて、今週早々にはドル円が102円台に安定的に乗ると予想する。
それを前提に9日時点の日経平均のテクニカルポジションを確認すると、終値14199円の上には5日移動平均線14267円、25日移動平均線14421円、75日移動平均線14580円、200日移動平均線14660円があり、ボリンジャーバンドの25日移動平均線の「±1σ(第1標準偏差)」は14110~14731円。14648~14977円に日足一目均衡表の「雲」が横たわっている。14500円まであと301円もあるが、終値でもそれを超えて上値は雲の下限、あるいは200日線の14660円ぐらいまでは届くことができるとみる。
一方、下には9日のSQ値14104円があり、これが下値のサポートラインとして効いてくる。ボリンジャーバンドの「25日線±1σ」の下限も14110円である。アメリカS&P500の平均予想PERが17.0倍に対して東証1部は14.7倍、日経平均225種は14.0倍で日本株は明らかに割安で、前週開いた日米の株価指数の差を埋める意味でも、今週は反発してもおかしくないポジションにある。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは14100~14660円とみる。もちろんこれはドル円が今週早々に102円台に乗せることが前提。そうならなかった場合は、残念ながら日本株はインディ・ジョーンズのように迷宮をさまよい続けることになるだろう。(編集担当:寺尾淳)