憲法解釈変更を浮き立たせた総理会見・検証

2014年05月17日 09:36

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安倍総理は「憲法が掲げる平和主義はこれからも守りぬいていく」とした。

 安倍総理は「憲法が掲げる平和主義はこれからも守りぬいていく」とした。

 そのうえで、安倍総理は「あらゆる事態に対処できるからこそ、また対処できる法整備によってこそ、抑止力が高まり、紛争が回避され、我が国が戦争に巻き込まれることがなくなると考える」と同盟国との一層の深化が戦争回避になるとの考えを示した。集団的自衛権を行使できるようにしなければ、深化は図れないとの論理だ。

 安倍総理は「安保法制懇からふたつの異なる考え方を示してもらった」とし、一つは「個別的か集団的かを問わず自衛のための武力行使は禁じられていない。国連の集団安全措置への参加といった国際法上合法的な活動には憲法上の制約はないとするものだが、これはこれまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない」と総理としての考えを述べ「憲法がこうした活動のすべてを許しているとは考えない」として「政府として、こうした考えは採用できない」とこの考え方は採用しないと表明した。

 一方、二つ目の考え方として「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することが許されるとの考え方だ」とし、「憲法前文、憲法13条を踏まえれば、自衛のための必要な措置をとることは禁じられていない。そのための必要最小限度の武力の行使は許容される。従来の政府の考え方を踏まえた考え方だ」と述べ、安倍総理は安保法制懇が出した、国民世論からも全く支持されないであろう「認められない論理」と自らの落としどころとしての論理を展開させることによって、限定的であれば憲法解釈の変更が世論の支持を取り付けられると判断したのだろうと思われる展開を記者会見で見せた。

 安倍総理は「(二つ目の考えに基づき)今後、検討を進めていきたい」と述べるとともに、「従来の憲法解釈のままで必要な立法が可能なのか、一部の立法にあたって憲法解釈を変更せざるを得ないとすれば、如何なる憲法解釈が適切なのか、今後、内閣法制局の意見も踏まえつつ、政府としての検討を進めるとともに、与党協議に入りたい。与党協議の結果に基づき、憲法解釈の変更が必要とされれば、この点を含めて、改正すべき法制の基本的方向を閣議決定し、今後、国会においても議論を進め、国民の理解を得る努力を継続していく」と語った。

 安倍総理は「十分な検討をし、準備ができ次第、必要な法案を国会にはかりたい」と今後の姿勢を示した。安倍総理は「あらゆる機会を通して説明をしていきたい」と説明責任を果たしていく考えも強調した。

 与党の山口那津男公明党代表は「安倍総理はグレーゾーン事態への対処、PKOや後方支援などの国際貢献活動はこれまでの憲法解釈を変えなくても対応が可能とされた。この点については与党で議論に取り組みやすいのかなと思う」とする一方、「国の重大な安全にかかわる状況においては集団的自衛権を限定的に使うことができるという点については政府としても今後検討を進めるということだったが、今後、与党に対して議論を投げかけられるので、従来の政府の憲法解釈と論理的整合性があるのかどうか、憲法9条の規範性、法的安定性を確保できるのかどうかの視点で検討していく」と語り、これまでと変わらない慎重姿勢をみせた。

 巨大与党の中で、安倍政権の暴走を止める制御役を野党以上に果たしている公明党が、どこまで客観的な判断をしていけるか。統一地方選を考えると公明党との連立政権を堅持しなければならない自民党だけに、解釈改憲が許されるのかどうかも含め、公明党には政府・自民との協議を通して、国民によりわかりやすい環境を作り出して頂きたいと願う。

 また、「国民の命と暮らしを守るため」と何度も口にした安倍総理には、時間をかけて国会での議論をしていくことを切に願う。改憲によらないのであれば、尚更、慎重な議論を公開で進めていくことが必要だろう。さらに解釈変更を争点にした総選挙を考えるべきだろう。そこで勝利すれば、これまでの政府解釈を変更することも許されるのかもしれない。(編集担当:森高龍二)