液晶は今ではテレビなどの大型から携帯機器の小型まで、薄くて軽量のため映像機器にはかかせない。重要デバイスとなった。しかも、最近では書籍なども電子化されており、もはや液晶なしでは映像機器は成り立たない。
液晶は基本的にバックライトを用いているが、太陽光などの自然光を光源として、その反射によって画像を表示する反射型液晶ディスプレイというものがある。これは、バックライトが不要なため、消費電力が少なく、薄く、軽いという特長があり、近年、モバイル機器用ディスプレイとして注目されている。
しかし、バックライトを用いる従来の透過型液晶ディスプレイのようにバックライトによる表示色の調整ができないことから、使用する偏光板の波長特性がそのまま表示色となってしまう。このため、従来の偏光板を使用した反射型液晶ディスプレイでは、白表示が緑黄色がかり、また、黒表示が青みがかったものになるという問題があった。
東北大学大学院工学研究科の藤掛英夫教授、石鍋隆宏准教授らの研究グループは26日、株式会社ポラテクノと日本化薬<4272>と共同で、無彩色の偏光板と、それを用いて高品位な紙のような白色表示を可能とする反射型液晶ディスプレイの開発に成功したと発表した。
同研究グループは反射型液晶ディスプレイの課題を解決するため、新しい二色性色素を合成して光の吸収波長を制御するとともに、色素の分子配向性を向上させることにより、平行及び直交透過率が可視光領域において一定な無彩色偏光板を開発することに成功した。
この偏光板と、これまでに開発を進めてきた光拡散フィルム技術により、表示光の配光分布を精密に制御したデバイス構造を考案し、高い反射率で高品位な紙のような白色表示を実現するとともに、高いコントラスト比と動画表示能力を備えた低消費電力の反射型液晶ディスプレイを開発した。
この研究の成果は、携帯型情報端末、電子値札、車載用ディスプレイ、デジタルサイネージ等への応用が可能であり、ディスプレイデバイスの低消費電力化が期待されるとしている。
この研究成果は、2014年6月1日より米国San Diegoで開催される国際シンポジウム Society for Information Display International Symposiumにて発表される予定。
液晶とは自発光型ではないため、バックライトがあるのが当然だった。今回の成果をきっかけとして、反射型液晶ディスプレイが表示色の調整が可能となれば、液晶ディスプレイの応用範囲がさらに拡大する。期待したい。(編集担当:慶尾六郎)