【今週の展望】今夏の下値メド「マジノ線」が形成された?

2014年06月15日 20:23

 ということは当分、日経平均の下値の「第1防衛線」は心理的節目の15000円、「第2防衛線」はまぼろしのSQ値の14807円と考えてよさそうだ。為替、株式のマーケットではそうした数値上の防衛線のことを、第一次世界大戦後にフランスがアルザス・ロレーヌ地方に築いた対ドイツ防衛線にたとえて「マジノ線」と呼んでいる。それに即して言えば、この夏の日経平均のマジノ線は第1防衛線の15000円と第2防衛線の14807円。為替のマジノ線は、割りそうで割らずにキープし続けている「1ドル=100円」だろうか。

 防衛線が定まれば、次は進出目標。しかし13日の時点では日経平均のテクニカル指標が現値の上昇になかなか追いつかず、「買われすぎ」のシグナルもちらほら。こんな状態ではなかなか上値を追えず、今週も値固めしながらチャンス到来を待つ週になりそうだ。

 テクニカルポジションを確認すると、13日終値の15097円は移動平均の5日線15051円、200日線14719円、25日線14639円、75日線14599円を全て上回っている。日足一目均衡表の「雲」はさらに低く14411~14598円に垂れ込めている。ボリンジャーバンドの「25日移動平均線+1σ(第1標準偏差)」は77円下の15020円、「+2σ(第2標準偏差)」は304円上の15401円に位置する。

 25日移動平均乖離率は3.1%とまだ低水準だが、騰落レシオが「過熱水準」といわれる130%を超えたのをはじめ、ストキャスティクスもウィリアムズ%Rも買われすぎのシグナルが点灯している。サイコロジカルラインも終値上昇日が12日中8日で、あと1日増えれば買われすぎ水準の9日に達する。それを見れば、週明けすぐに日経平均の下落が始まるようなことはないが、2週間前のようなどんどん上値を切り上げるような水準ではないことは理解できるだろう。

 需給のほうは順調に改善している。12日に東証が発表した「投資部門別・株式売買状況」(二市場)によると、6月2~6日の売買代金は前週までの主役の「信託銀行」こそ買越額が2499億円から1112億円へほぼ半減したが、前週119億円の売り越しだった「海外投資家」が2515億円の大幅買い越しに転じていた。長期保有目当てで優良銘柄の底値拾いをする年金資金に代わり、先物中心の短期の利ざや稼ぎも行う「黒船」の買いが浮上するという「週替わりヒーロー」状態。それに加えて個人投資家の買いも本格復活すれば需給は鬼に金棒になる。信用買い残も4週連続で減少し、5月16日時点で5.78倍だった信用倍率は6日時点で4.05倍まで低下した。需給の心配は週を追うごとに低下している。

 となると、今週最大の懸念は「為替の円高」だろう。なかなか上昇しないアメリカの長期金利も気がかりだが、もっと怖いのはイラク情勢。もし万が一、「反乱分子の首都バグダッド突入」という事態になったら、原油先物、金先物の急騰とともにリスクオフが世界をおおい、あわれにも「ゴルディロックス」は3匹のクマに惨殺されてしまう。為替市場では地政学的リスク回避の円買いが起こり、1ドル=100円のマジノ線も、日経平均の下値のマジノ線も危うくなりかねない。そんな確率は低いと思われるが、過激な武装集団の軍事行動だけに、そんな最悪のシナリオも想定しておかなければならない。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは、下値はマジノ線の第2防衛線である13日のSQ値を、上値は13日終値の高々プラス100円程度をメドに、14800~15200円とみる。ちなみに、「絶対突破不可能」とも言われた本物のマジノ線は第二次世界大戦下の1940年、ナチス・ドイツがこれを迂回してベルギーから侵攻し、〃サイドから最終ラインの裏のスペースを突かれた〃ために無力化され、フランスは降伏した。何事にも絶対というものはない。(編集担当:寺尾淳)