年金は70歳からというオーストラリアの決断が示すもの

2014年07月28日 08:42

画像・年金は70歳からというオーストラリアの決断が示すもの☆

オーストラリアに限らず、ほとんどの先進国が年金問題では頭を悩ましている。医療技術が高度化し、平均寿命が長くなったのは良いことだがその反面年金を受給する期間が長期化し、財源の確保が難しくなっているのだ。

 オーストラリア政府が大いなる決断を下した。年金支給の開始年齢を70歳へと引き上げる方針を固めたのだ。年金支給開始年齢に対する様々な意見はこれまで多くの識者から提案され続けてきた。しかし、政治家は高齢者層からの支持を失うことを恐れ、この問題から目を逸らしタブー視し続けてきた。だが、このままでは年金制度自体が破綻してしまいかねない。オーストラリア政府は勇気と覚悟を持ってこの問題に真正面から取り組み始めた。

 現在のオーストラリアの年金支給開始年齢は65歳。しかし平均寿命は82歳を超えている。このまま更に平均寿命が延びれば年金制度が崩壊するのは明らかだ。

 財務相のホッキー氏は言う。「風土改革に着手すべき」と。つまり、これからは健康寿命を延ばし雇用の流動性を高め、高齢者であっても教育や訓練を受けることによって新たな雇用機会に恵まれる。そんな社会を創ることが必要なのだと。

 無論、言うは易く行うは難しである。反対意見も多い。「国民に先進国の誰より長く働けというのか」と主に左派を中心とした勢力は猛反対している。

 オーストラリアに限らず、ほとんどの先進国が年金問題では頭を悩ましている。医療技術が高度化し、平均寿命が長くなったのは良いことだがその反面年金を受給する期間が長期化し、財源の確保が難しくなっているのだ。1990年に多くの先進国で70歳代であった平均寿命は既に80歳を突破している。ドイツも2029年までに67歳へと年齢を引き上げるべく行動を開始しているが「それでは間に合わない」という意見も多い。

 翻って我が国、日本の現状はどうだろう。日本はすでに世界でもっとも高齢化の進んだ国となっている。2.5人に1人は65歳以上の高齢者という時代がすぐそこにまで迫っている。日本では47年から49年生まれの人口が突出して多い。そしてこの団塊と呼ばれる世代は既に年金受給開始年齢に達してしまっている。このような状況では迅速に支給開始年齢を引き上げることは難しいだろう。前述した通り、そのような政策を主張する政治家は高齢者層からの支持を失ってしまうからだ。
 
 本来ならばこの先進的な取り組みは何年も前に、日本が世界に先駆けて挑戦すべきだったのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)