東京メトロ「日比谷線」新駅は写真でいうと手前側、虎ノ門ヒルズの西側、桜田通りと環状2号線の交差点付近の地下。そもそも日比谷線は、1964年の東京五輪前の開業を目指して建設された地下鉄だ。今回の新駅開業は2020年の五輪開催前を目指す。日比谷線は東京五輪と縁が深い。
神谷町~霞ケ関間に新駅建設、虎ノ門駅への地下道も……。虎ノ門ヒルズの完成と虎ノ門ヒルズの1階を貫通する東京都市計画道路環状2号線「新橋~虎ノ門」開通で周辺の景観が大きく変わった。
ところで、虎ノ門ヒルズ周辺の開発はまだ終わっていない。東京メトロは、ここに日比谷線の新駅を開業すると発表したからだ。事業費は100億円超で新駅は銀座線・虎ノ門駅とつながり、乗り換えの利便性も高まる。2020年の東京五輪の開催に合わせて開業させるという。超高層複合ビル「虎ノ門ヒルズ」を中心に周辺のビルは地下通路で繋がり、大規模な再開発が進む同エリアの利便性は大きくアップしそうだ。隣接駅・神谷町よりもビジネスエリアとしての魅力がアップすることは間違いない。
新しい駅は虎ノ門ヒルズの西側、国道1号線「桜田通り」と環状2号線の交差点付近地下。日比谷線・神谷町駅から北に約500m、霞ケ関駅からは約800m離れている。
東京メトロの既存路線での新駅開業は、1997年の銀座線溜池山王駅以来。虎ノ門新駅は東京五輪開催前に開業する。そもそも日比谷線は、1964年の東京五輪前の開業を目指して建設された地下鉄だ。日比谷線は東京五輪と縁が深い。
東京メトロの前身である、帝都高速度交通営団が編纂した「東京地下鉄道日比谷線建設史」によると、「営団では、オリンピック東京大会開催前に日比谷線全線の開通を目標に」建設を進めてきたと記してある。全線開業は1964年8月29日。10月10日に開会式を迎えた五輪直前だった。
地下鉄日比谷線の車両は独特だ。ドアの数が多い車両が連結されていることが多い。全8両編成のうち、先頭2両後方2両(1、2、7、8号車)が5ドア車となっている。ほかの車両は3ドアだ。
東京メトロによると、5ドア車があるのは日比谷線だけ。他の路線では4ドアが主流だ。「日比谷線は改札がホームの端にある駅が多いので、先頭と最後尾が混みやすい。その混雑緩和のため1990年から5ドア車を採用した。ところが、この5ドア車は5年後には完全に姿を消す。2016年度から19年度までで、日比谷線の車両をすべて入れ替える。実に28年ぶりの全面更新だ。
車両の長さも変わる。18mから20mへ長くなって7両編成になるという。なぜ、一気に変えるのだろうか。理由は昨今対策が進んでいる転落事故防止用のホームドアの設置だ。現在の車両編成では、8両すべてが3ドア車両と両端2両が5ドア車両とが混在しているためドアの位置が違う。すべて4ドア車両に統一することで、ホームドアが設置できるようになる。
ただ、単にドアの位置をそろえるだけなら、わざわざ車両の長さを変える必要はない。18mのままでも対応できるはず。なぜ面倒な車両の変更を行なうのだろう。その訳は日比谷線に相互乗り入れする東武鉄道の車両にある。
■相互乗り入れする東武鉄道と車両の共通化を図る
日比谷線は現在、東武スカイツリーラインとの相互乗り入れを行なっている。この東武線、日比谷線のほかにも半蔵門線や東急田園都市線など路線の車両が走っている。それら車両は20m。将来的な安全性を担保するホームドア設置のために、この機に20mに統一するというわけだ。
日比谷線は急カーブが多い地下鉄だ。2000年3月に中目黒駅で発生した脱線衝突事故は、その急なカーブで起きた。車両が長ければ長いほど、カーブは曲がりにくい。一般的に半径200m以下のカーブは電車にとって相当な急カーブとされる。車両をやや少し傾けながら、「キーッン」と嫌な音を立てて走っている場所は、そんな急カーブだ。
東京メトロによると、日比谷線内で最もカーブがきついのは人形町と茅場町間のカーブで、その半径は126m。築地~東銀座間、日比谷~霞ケ関間、神谷町~六本木間にもそれぞれ半径130m前後の急カーブがある。東京メトロによると、そのための対策も進んでいる。
検証の結果、トンネル内を現在の20m車両で走行しても問題はなかった。が、カーブの区間に設置された一部の駅では、ホームと車両の隙間が空きすぎてしまう。そのため、ホーム自体を改良する予定だという。六本木駅などが改良の対象で、電車とホームの間が広く空くカーブ状ホームの駅だ。このような駅ではホームドア設置と同時に、隙間を埋める可動式のステップを設置する。電車が到着したらホームから自動的にステップがせり出し、隙間を埋める。すでに丸ノ内線・中野富士見町駅などに導入されているシステムだ。
日比谷線に急カーブが多い理由は、地下鉄建設初期の工法にあるという。東京メトロによると、日比谷線は地面から穴を掘り下げていく手法がとられた。この工法は地下鉄だけでなく首都高速中央環状線トンネルの一部でも採られた。道路の上に仮の路面として鉄の板を嵌めて掘っていた地下鉄工事を覚えている人もいると思う。この方法だと道路に沿って工事が進められない。このため交差点などで大きく曲がるカーブができたというのだ。
前述したように、日比谷線は五輪と縁が深い。1964年の東京オリンピックを契機に生まれ、2020年の五輪に向けて大きな変化を遂げる。(編集担当:吉田恒)