14年度の国内クラウドファンディング市場は197 億1,200万円に 今後も株式型を中心にさらに市場拡大へ

2015年09月05日 19:23

 クラウドファンディングは、米国発祥のサービスといわれ、「Crowd」(=群衆)と「Funding」(=資金調達)を組み合わせた造語で、資金を必要とするプロジェクト等がインターネットを介して不特定多数の人々から比較的少額な資金を幅広く調達する手段を意味する。海外では、既に大きな市場を形成しているようだが、日本では、2000 年代になってからクラウドファンディングのサービスが提供されたといわれる。その後、東日本大震災を契機に、2011 年以降、寄付を募るプロジェクトから認知が進み、社会貢献性や共感性の高いプロジェクトが多数起案されてきたことを背景に本格的な展開となった。

 一方、クラウドファンディングと類似のビジネスモデルで資金貸付を行う、ソーシャルレンディングと呼ばれるサービスも 2008 年から始まっている。現在、国内のクラウドファンディング市場は「寄付型」、「購入型」、「投資型(ファンド型)」、ソーシャルレンディングの「貸付型」サービスにより構成され、各々のサービスを提供するウェブサイト運営企業が存在している。

 矢野経済研究所によると、2014年度の国内クラウドファンディングの市場規模(新規プロジェクト支援額ベース)は前年度比59.5%増の197億1,200万円と拡大した。同社では、国内におけるクラウドファンディング市場の調査を実施し、その結果をまとめた。調査期間は2015年5月~7月、調査対象はクラウドファンディング運営企業、利用企業など。調査方法は同社専門研究員による直接面談、ならびに電話・e-mail などによるヒアリングを併用した。

 調査結果によると、2015年7月末時点におけるクラウドファンディングを扱う企業数は100社程度であった。このうち、独自にウェブサイトを開設している専業事業者(企業)は約40社、専業事業者のプラットフォームを利用して自社でクラウドファンディングのウェブサイトを開設している企業や自治体等が約60社である。また、大手企業が子会社を設立したり、資本参加によってクラウドファンディングサービスに参入してきている。

 こうしたなか、当該サービスのみではなく、資金の集まったプロジェクトに対する事業化支援までを行うといった事業の多角化や、単一分野のみならず、様々なプロジェクト分野を取り扱うといった多種化も進展しつつある。
 
 その一方で淘汰も始まっており、撤退する専業事業者もある。現下、政府による「貯蓄」から「投資」へと促す施策のもと、こうしたサービスの一形態で未上場株式に投資できる「株式型」クラウドファンディングについて法整備が進められているとしている。

 また、調査では年間の新規プロジェクトに対する支援額を市場規模として算出した。2014年度の国内のクラウドファンディング市場規模は新規プロジェクト支援額ベースで、前年度比59.5%増の197億1,200万円であった。類型別では、購入型が約20億円、寄付型が約1億円、投資型(ファンド型)が約19億円、貸付型(ソーシャルレンディング)が約156億円と推計した。

 最も規模が大きい類型は貸付型で、全体の79.2%を占め、市場拡大に大きく貢献している。次いで、購入型は参入企業数が最も多いが支援額ベースでは 10.2%である。寄付型は年々規模が縮小しているが、その他の類型では市場規模は拡大基調にある。

 2015年度の国内のクラウドファンディング市場規模は前年度比で 43.9%増の 283億7,300万円を見込んでいる。なかでも投資型(ファンド型)は新規参入事業者の増加や、組成本数の増加を背景に大きく拡大するものと見られる一方、購入型、貸付型(ソーシャルレンディング)も拡大基調を見込むとしている。

 株式型の法整備が進展していることから、今後はネット証券の参入の可能性もあり、株式型を中心にさらに市場規模は拡大すると予測した。(編集担当:慶尾六郎)