レベルファイブ、ヌーラボ、ケンコーコム〈3225〉…。東日本大震災以降、企業の移転が続く福岡県。東京への一極集中を脱し、さまざまなリスクを回避する狙いがある。
代表格は2013年11月にLINEの100%出資子会社として設立されたLINE Fukuokaだろう。博多にあるオフィスでは636名(10月現在)が働いている。LINEの福岡進出は当初、震災後の一時的なものだった。しかし、国内外へのアクセスの利便性、生活環境の快適さ、地震を始めとする災害時のリスクが少ない-、など予想以上のメリットを感じ拠点を持つことを決めたという。
アクセス面でのポイントは「福岡空港」と「博多港」だ。福岡空港は繁華街の天神や博多から地下鉄で5~10分で行くことができる。羽田-福岡間は1日あたり55便もある上に対馬や五島列島、奄美大島といったローカル空港とも結ばれている。コンテナ取扱個数で国内6位の実績を持つ博多港も、福岡市中心部より車で15分程度の距離にある。
生活環境の良さは賃料や物価が安いこと、まち全体がコンパクトであまり移動せずに全てのことが済むこと、食べ物が美味しいこと、などがあげられている。
そして大きな理由の災害の少なさだ。東日本はもとより、南海トラフに戦々恐々の静岡~大阪~四国、意外と地震の多い北海道や北陸と比べるとそのリスクの少なさは明白だ。九州の南と違い火山もなく、台風の被害も少ない。
そんな福岡も万能ではない。急増したビジネス需要に供給が追いついていないのだ。「都心部にはスマートビルが圧倒的に少ないですし、コンベンション施設もホテルも足りていません。国際会議は施設の稼働率が高すぎて毎年数十件単位で開催をお断りしています(高島宗一郎福岡市長)」。
また、自力ではどうしようもない問題もある。中国大陸からやってくる「黄砂」「PM2.5」だ。福岡から北京は1430km、上海は900kmの距離にある。福岡―札幌が1420km、東京-上海が1780kmであることと比べても、その近さが分かる。
この秋にもPM2.5が環境基準を超過するという予測を県が出した日があった。しかし「外出時はマスクなどを着用する」「空気の入れ替えは控える」という自衛策しかないのが現状だ。
もうひとつの厄介者、黄砂は花粉と同じような春の風物詩となっている現象で、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠からやってくる。小さな粒ほど遠くまで飛ばされるため、福岡には直径2-6マイクロメートルの粒が届く。そして中国沿岸部を通過する際、ばい煙や大気汚染物質が付着するとされている。細菌やカビなどの微生物も含まれ、アレルギー性鼻炎やぜんそくなどのアレルギー疾患を悪化させることが分かってきた。
それでもこの人口減社会の中、福岡市の人口は2035年まで増え続けると市が予測している。行政もベンチャー企業へ起業サポートや規制緩和に積極的で、まだまだ福岡の経済発展は続きそうだ。(編集担当:久保田雄城)