2016年、「爆買い」の奥に潜む百貨店業界の状況

2016年01月03日 19:16

 2015年、百貨店業界は中国人を中心とする訪日外国人旅行客による「爆買い」効果により、業績を大きく伸ばした。問題は、この「爆買い」が16年以降も続くかどうかだ。もちろん、すぐになくなることはないだろうが、中国経済が低迷しつつあることから、「16年も爆買いにより、業績拡大は確実」とは言えない状況だ。

 大手百貨店のうち、三越伊勢丹ホールディングス<3099>の4~9月期の訪日外国人旅行客の免税売上高は前年の3.1倍の260億円、売上高に占める割は8.1%となっている。三越伊勢丹ホールディングスは三越銀座店のなかに、市中免税店(空港型免税店)を16年に開設するとしている。そして高島屋<8233>の3~11月期は訪日外国人旅行客の消費に下支えされて、増収増益をはたしている。こうした結果を目にしていると、16年以降も好調さは維持されるように思われるが、冒頭に書いた通り、中国経済の今後の動向次第では事態がどう変化するかはわからない。そうした時、問題となるのは国内の消費の冷え込みだ。

 三越伊勢丹ホールディングスの4~9月期の国内百貨店売上高は、免税売上高を除くと約2%増にとどまっている。また、高島屋の3~11月期では、富裕層と中間層の消費にばらつきが生じており、100万円以上の顧客の売上高は8.5%増と大きく伸長しているが、一方100万円未満では1.9%減となっている。この富裕層と中間層の消費のばらつきは、三越伊勢丹ホールディングスの業績にも見て取れる。

 現状は訪日外国人旅行客や富裕層の消費により支えられているが、この支えが無くなった時、冷え込んだ消費の影響をそのまま受けることにもなりかねない。そして、「爆買い」の奥に隠れて見えにくくなってはいるが、機能性や品質を重要視した「選別消費」傾向や、節約志向の高まりなど、百貨店業界を取り巻く環境は決して楽観視できるものではない。「爆買い」効果はあくまで一時的なものと考え、16年以降は国内の幅広い層の消費を促す施策に力を入れるべきではないだろうか。(編集担当:滝川幸平)