公正取引委員会は20日、東京電力グループの東光高岳が電気量計取り換え工事を約100の業者に委託する際に、委託料に消費税増税分を上乗せしていなかったとして、再発防止を勧告した。公取委によると、電力量計の中には電力自由化に必要なスマートメーターへの取り換えも含まれていた
公取委や経済産業省では、2014年4月に消費税が5%から8%に上がったあとに、適正に税が支払われないケースが後を絶たない。典型的な例が、今回のように上位にある業者が下請け業者の納入品に対して増税分を支払わないというもの。下請け業者は増税分で負担した経費を自分でかぶらなければならないわけだ。
これに対し、経産省では、買手側の転嫁拒否行為に対して「転嫁Gメン」による監視・取締りを行っている。増税開始から15 年12 月までの1年8カ月の累計で、指導を2,398 件、勧告・公表を31 件、行った。
15年の勧告・公表事例では、「プロ野球球団を運営し、球団のロゴマーク等を表示する商品(グッズ)の販売を行う広島東洋カープが、グッズの納入業者に対して消費税率の引上げ分を上乗せせずにグッズの仕入れ価格を据え置いた」「自動販売機を設置し、清涼飲料水等の小売業を行うコカ・コーラウエストと西日本ビバレッジは、自動販売機の設置場所を提供する事業者の一部に対し、消費税率の引上げ分を上乗せせずに販売手数料を据え置いて支払っている」というように、世に知られる企業が多く含まれていた。
また、企業名は公表されない指導では、テレビ番組の出演者に対して本体価格(税抜) で出演料を決めていたにもかかわらず,出演料を支払う際に消費税分を上乗せせずに支払っていた件や、学校法人が入試案内などの新聞広告の作成を委託している事業者に対し消費税率の引き上げ分を上乗せすることなく消費税込みの業務委託料を据え置いていた件などがあった。
経産省のモニタリング調査(15年12月)では、消費税の転嫁状況について、「全て転嫁できている」と回答した事業者が70~80%、「全く転嫁できていない」と回答した事業者は4~6%となっている。
経済省の外局の中小企業庁では、「意図的に行っているケースも、気付かずに続いているケースもあるが、数的には横ばいの状態。今後も監視の目を光らせていく」としている。下請けいじめのイメージが強いが、弱者の泣き寝入りだけは防いでほしい。(編集担当:城西泰)