定年後の働き方に問題提起。定年後の再雇用で賃下げは違法か

2016年05月28日 12:51

 いま、日本企業に広がっている定年後の再雇用問題へ一石を投じる判決があった。横浜市の運送会社に勤める嘱託トラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務をしているのに給料が下げられたことを不服として訴訟を起こしていたが、5月13日、東京地裁で判決が下った。

 裁判長の佐々木宗啓氏は「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に反する」と答弁。定年前の賃金規定を適用して差額分を支払うよう運送会社に命じた。

 訴えた運転手3人は2014年に定年を迎え、その後1年ごとの嘱託社員として採用となった。給料は嘱託社員のため定年前の2・3割減額となった。一説には60歳で定年を迎えた7割が再雇用契約となり、その後も仕事をしているという報告がある。その際の給与体系は多くの場合、大幅減額となり、中には1/3、1/4になる人もいる。多くの再雇用者は働けるだけありがたいと大幅な給与減額も受け入れているのが現状だ。

 定年後、生活のために働いている再雇用社員からは新聞の投書欄などには歓迎・喝采の声が上がっているが、一方、30・40代の若い社員の意見としては、いまだに日本の企業には若い内は給料は低いが年を重ねれば高給になるという年功序列型賃金体型が残っている。もし、今後再雇用後も高給が約束されれば若い社員への賃金抑制が起こるのではないかと懸念する。

 一筋縄ではいかない再雇用問題だが、その背景には年金財政が破綻するという政府の危機感が大きく関係する。年金支給を65歳に引き上げ、年金の空白期間を埋めるために2012年制定されたのが「改正高年齢者雇用安定法」だ。定年後希望者全員に再雇用を義務づけるという法律だが、現状では安い給与で便利に働かせる企業側が有利になる仕組みとなっている。年金支給が高年齢化し、さらに経済が停滞する日本において、原則、同じ仕事には同じ賃金という制度はある程度整えた方が良いのではないかと筆者は考える。

 最後にこの裁判だが、運送会社側は運転手側の勝訴となった判決を不服として東京地裁に控訴している。再雇用問題の裁判・議論はまだまだ続くことになる。(編集担当:久保友宏)