【今週の展望】 「いつも通りの日常」を改めてかみしめる週

2016年06月26日 20:18

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好転した経済指標、企業業績で上がり、悪化した経済指標、企業業績で下がる。為替が円安で上がり、円高で下がる。そんな「いつも通りの日常」に戻れるか?

 しかしながら、オシレーター系指標を見て目を疑うかもしれない。24日、まるでこの世の終わりのように大暴落したのに「売られすぎシグナル」がたった1個しか点灯していない。点灯したのは-9.6%の25日移動平均乖離率で、売られすぎ基準の-4%(-5%とする場合もある)を大きく割り込んでいる。しかしそれ以外は、25日騰落レシオは83.5、RSI(相対力指数)は30.0、RCI(順位相関指数)は-32.9、サイコロジカルラインは5勝7敗で41.7%、ストキャスティクス(9日・Fast/%D)は43.1、ボリュームレシオは45.8で、それなりに低位ではあるものの、売られすぎ基準までは下がっていない。

 オシレーター系指標は低水準が2日、3日続けばそれなりに下がっていくが、1日だけの暴落ではそれほど動かない性質があるためで、お役人の言葉で言えば「激変緩和措置」。オリンピックの体操やフィギュアスケート競技で、審判団がつけた最高点と最低点を切り捨てて点数を出しているようなもの。だから「まだ売られすぎではなく、もっと下がる可能性がある」と悲観的になる必要はない。

 6月17日時点の需給データは、信用買い残は10日時点から1073億円減の2兆4476億円で、3週ぶりに減少に転じていた。信用倍率(貸借倍率)は3.73倍から4.00倍へ増加。信用評価損益率は-10.33から-16.49へ6.16ポイントも動いた。裁定買い残は3282億円減の1兆351億円で、3週続けて減少している。

 東証が発表した6月6日~10日の週の投資主体別株式売買動向によると、外国人は2週ぶりに2208億円の売り越しに転じた。個人は3週連続の1933億円の買い越し、信託銀行は7週連続の213億円の買い越しで、「需給三国志」は買い越しと売り越しがほぼ均衡していた。

 前々週は5日間ずっと40%台だったカラ売り比率は、前週は20日が38.9%、21日が38.3%、22日が39.5%、23日が38.2%と、ここまでは30%台に低下して改善をみせていたが、24日は42.4%にはね上がった。あれだけの大暴落では致し方なし。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)も6月24日終値は前日比+5.98の40.71で、2月以来の40台に急伸した。シカゴVIX指数(恐怖指数)も24日は+8.51の25.76へ49.33%急騰。まさかの英国のEU離脱により、24日の世界のマーケットはリスクオフで凍りついた。その恐怖はギリシャやウクライナの問題の比ではなかった。

 その24日の欧米の株式市場の終値は、ヨーロッパは英国FT100の-3.15%よりもドイツDAX指数-6.82%、フランスCAC指数-8.04%のほうが下落幅が大きかった。NYダウは611ドル安で-3.39%。外国為替市場は、ドル円は102円台前半、ユーロ円は113円台後半、英国ポンド円は140円近辺で、NYの債券市場は急騰、商品市場は金先物急騰、原油先物急落と、リスクオフが進行した。

 もっとも、ショックから時間が経過すると冷静になる。株式市場の下げ幅は、英国FT100は-8.66%から-3.15%に、ドイツDAXは-10.0%から-6.82%に、フランスCACは-10.2%から-8.04%に圧縮していた。NY市場だけが安値圏で終えていた。対円の為替レートも、英国ポンドは133円台から140円台へ、ユーロは109円台から113円台へ、ドルは99円台から102円台へ、それぞれ円安方向に戻している。異常事態には「いつも通りの日常」へ戻ろうとする力が働く。

 そんな欧米の株式、為替の状況を見れば、週明け6月27日の東京市場で日経平均が「24日の半値戻し」の643円高の15595円をザラ場中にクリアするというのも、ありえない話ではなさそうだ。24日の日経平均先物夜間取引終値は15260円、CME先物清算値は15120円だった。少なく見積もっても15100~15200円台が、今週の起点になるだろう。

 そして、マーケットにとって期待できるのが、「英国EU離脱」を想定して各国の金融当局が事前に準備していたという政策の発動だ。FRBは「流動性供給の用意がある」と言明しており、日本の政府・日銀は「あらゆる方策を検討する」方針で、25日に日銀、財務省、金融庁の関係者が緊急会合を開いた。円売りの為替介入やETF買い入れのような株価対策に政府の経済対策も加われば、東京市場が刺激を受けないはずがない。

 それらを考え合わせると今週、下値が15000円を割るようなケースはちょっと考えにくい。一方、上値のほうは16382円の25日線タッチは困難でも、25日移動平均乖離率-4%の15726円をオーバーして売られすぎ状態を脱するというシナリオはありうる。英国の国民投票前日まで様子見の薄商いがずっと続いていた売買も戻ってくるだろう。木曜日の30日に上半期末のドレッシング買いが入る期待も、あてにはできないが挙げておきたい。上値のメドはボリンジャーバンドの25日線-1σの15846円あたりか?

 ということで、今週の東京市場はブレクジット・ショックから立ち直り、24日の売られすぎの反動に月末要因、国内外の金融当局のサポートも入って反発し、日経平均終値の予想変動レンジは15000~15900円とみる。

「イベントを通過すれば、それだけで区切りがついて株価が上がる」と言われることがある。しかしそれは大きな後遺症が残らないような場合。たとえば日銀会合やFOMCは、金融政策現状維持でも後々まで尾を引くことはない。しかし英国のEU離脱は地球に大隕石が衝突したようなもので、環境へのインパクトが大きすぎる。世界のマーケットはこれから、モヤモヤとした不確実性と何年も付きあっていかねばならなくなった。それは、英国からめぼしい金融機関も企業も人材もみんな逃げ出して、「偏屈者ばかり住むヨーロッパの辺境の島国」に落ちぶれるまで続く。(編集担当:寺尾淳)