パブリッククラウドサービスの利用について新たな課題が顕在化

2016年10月02日 20:01

 IDC Japanは、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用を妨げる課題について調査結果を発表した。

 調査では、ITバイヤーに対するインタビュー調査の結果から、エンタープライズITインフラストラクチャにおけるパブリッククラウドサービス利用の際の課題について分析している。これによると、エンタープライズITインフラストラクチャにおけるパブリッククラウドサービスの利用に当たり、新たな課題が顕在化していることがわかった。顕在化した課題は、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用を妨げ、両者を組み合わせた最適なエンタープライズITインフラストラクチャの実現を遅らせているという。

 パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用に際して顕在化した課題は、ID管理、データ連携、アプリケーション連携、運用/管理、費用配賦(各部門への費用の割り振り)の5つの領域で発生していることがわかった。これらの中で、特に深刻度が高いのは、ID管理、データ連携とアプリケーション連携であるとIDCではみている。パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携利用する上で、阻害要因となるからだとしている。

 パブリッククラウドサービスは、サービス提供者が個々に独自のID管理機能を有しており、個別に運用することを基本としている。つまり、ITバイヤーがオンプレミスITインフラストラクチャで利用しているシングルサインオン機能では、即座にIDを統合管理することができない。その結果、ITバイヤーは、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャでIDの二重管理を行うか、シングルサインオン実現のためにあらたにID連携機能を追加導入することを強いられるという。

 パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャとの間におけるデータ転送の遅延によって、アプリケーション側の処理とデータベースアクセスのタイミングに差が生じ、アプリケーションの異常終了や従来実現していた処理性能を発揮できない場合がある。また、パブリッククラウドサービスは、サービス提供者が個々に独自の操作画面を提供しており、オンプレミスITインフラストラクチャのアプリケーションの操作画面とユーザーインターフェースを共通化する際には課題が顕在化する場合もある。

 IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの下河邊雅行氏は「企業のパブリッククラウドサービス利用は拡大している。しかし、同サービスの利用に当たって新たな課題が顕在化している。ハードウェアベンダーは、ITバイヤーが抱える課題の解決策を早急に提供すべきである。ハードウェアベンダーが、ITバイヤーの課題に対処するということは、パブリッククラウドサービスとオンプレミスITインフラストラクチャの連携処理に関する各種APIや、自動構成機能を自社ソリューションに備えることを意味する。つまり、ハードウェアベンダー製品において、Software-Defined Infrastructure(SDI)への対応を強化し、ITバイヤーのエンタープライズITインフラストラクチャの最適化実現に寄与することが、ハードウェアベンダーにおける注力ポイントになる」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)