2016年11月13日、MotoGP第18戦バレンシアGPの決勝が行われた。バレンシア・サーキットは2002年以降MotoGPの最終戦の舞台として定着しており、シーズン中最も多くの観客が集結するとも言われるサーキットである。全長は4,005mで左回り。中低速コーナーの連続するテクニカルなコースでは例年激しいバトルが展開される。
予選で一番時計を出しポールポジションを獲得したのは母国GPとなるホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)。2番手にマルク・マルケス(レプソルホンダ)、3番手にバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)という布陣で決勝を迎えることとなった。
気温22℃、路面温度25℃、晴天の下ドライコンディションで迎えた決勝、抜群のスタートでホールショットを決めたのはポールポジションからスタートしたJ・ロレンソだった。2番グリッドのM・マルケスはスタート直後にマシンがウィリーして出遅れてしまった。
ホールショットを取ったJ・ロレンソがレース序盤から快調に飛ばし、早々に独走状態を築く中、激化したのは2番手争いだった。7周目、スタート直後に2番手につけたアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)と3番手のV・ロッシによる抜きつ抜かれつの大バトルが始まり、両者一歩も退かぬ状況が続いた。
11周目、スタート直後の遅れを取り戻し、4番手につけて2番手争いを後ろから見ていたM・マルケスが2番手争いに参戦。スタート直後から5番手につけていたマーベリックビニャーレス(チームスズキエクスター)を加えた4台による2番手争いはさらに荒れた展開となった。
2番手争いが激化する中、先頭を行くJ・ロレンソはハイペースながら正確な走りで後続との差を広げていった。
レースが大きく動いたのは20周目、M・マルケスが2番手争いを制し、徐々に先を行くJ・ロレンソとの差を詰め始めた。A・イアンノーネとV・ロッシは抜け出したM・マルケスについて行くことができず、レース後半はM・ビニャーレスと3番手争いを演じることとなった。
レース終盤は2番手のM・マルケスが先頭のJ・ロレンソを猛追する展開となった。一時は5秒以上あったJ・ロレンソとM・マルケスの差は残り6周の時点で3.5秒、残り3周の時点で2.5秒まで縮まったが、結局M・マルケスがJ・ロレンソを捕らえることはできず、J・ロレンソが1位、M・マルケスが2位でフィニッシュ。J・ロレンソが今季最終戦をポール・トゥ・ウィンで締めくくった。
最終周までもつれこんだ3番手争いを制し表彰台を獲得したのはA・イアンノーネ。V・ロッシは惜しくも4位だった。5位はM・ビニャーレス、6位はポル・エスパルガロ(モンスターヤマハテック3)。
また前戦までけがで欠場しており、4戦ぶりの参戦となったダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)は7周目に転倒、今季2勝を手にしたカル・クラッチロー(LCRホンダ)も17周目に転倒してリタイアを喫している。
最終戦で見事なポール・トゥ・ウィンを決めたJ・ロレンソは今季でヤマハを去り、ドゥカティに移籍する。今季中盤から後半は振るわなかかったJ・ロレンソだが、ヤマハで迎える最後のレースを最高の結果で締めくくった。
チャンピオンシップはM・マルケスが298ポイントでトップ、2位は249ポイントのV・ロッシ、3位は233ポイントのJ・ロレンソという結果だった。最終戦までもつれ込んでいたコンストラクター部門はホンダが、チーム部門はモビスターヤマハMotoGPがそれぞれ制している。
最終戦はJ・ロレンソの独壇場で終わった今季のMotoGPだが、1シーズンで9人の優勝者を出すという波乱のシーズンであった。M・マルケス、J・ロレンソ、V・ロッシの三傑がチャンピオンシップを争う中、A・イアンノーネが最高峰クラスで初優勝、ルーキーM・ビニャーレスが復活参戦したスズキに優勝をもたらし、インディペンデントライダーのC・クラッチローが2勝を手にするなど、予想外の展開も多く、非常に面白いシーズンでもあった。
2017年シーズンはJ・ロレンソがドゥカティに、M・ビニャーレスがモビスターヤマハMotoGPに、A・イアンノーネがチームスズキエクスターに移籍するなど、チーム編成が大きく変わる。
さらに来季はKTMが新たに参戦することが決定しているほか、ウイングレットの禁止等レギュレーションの変更も予定されており展開は予測不能だ。来季は果たしてどんなバトルが繰り広げられるのか、今から楽しみでならない。(編集担当:熊谷けい)