前週5日間のカラ売り比率は、5日が38.3%、6日が38.8%、7日が35.2%、8日が35.8%、9日が38.1%で、メジャーSQ週ながら一度も40%を超えていなかった。マーケットのリスクオン/オフを示す日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)も9日終値は18.65で、2日終値の20.86から2.21ポイント下落している。7日には18を割り込むなど、リスクオンの状況はなお続いている。
9日のNYダウは142ドル高で週間全勝の5日続伸。5日連続で終値が過去最高を更新した。NASDAQもS&P500も過去最高値更新。ヨーロッパ市場は続伸し、原油先物価格も上昇。「トランプ・ラリー特急」は、ウォール街では週末要因も蹴散らし、いつ停まるか見当がつかない快走が続いている。ミシガン大学消費者態度指数速報値は市場予測を上回り1年11カ月ぶりの高水準。10月の卸売在庫は前月比-0.4%で速報値と同じ。卸売売上高は+1.4%増で前月比で伸びも拡大した。NY時間の為替レートは、ドル円は2月以来の115円台に乗せて115円台前半、ユーロ円は121円台後半。メジャーSQを通過し3月限に変わった大阪先物夜間取引終値は19170円。CME先物清算値は19185円だった。
ワルノリ気味のトランプ・ラリー特急は東京でも、そろそろ停まる頃かと思えば外部要因にあおられて再び加速し、前週9日には19000円にもタッチした。昨年12月30日の大納会終値19033.71円をオーバーすれば年間騰落がプラスに変わる。それは、個人投資家を再起不能にしかねない必殺の凶器「追い証」の声も聞かれていた1月、2月の「暗黒の冬」も、6月のまさかの国民投票での英国のEU離脱決定も、11月のまさかのトランプ氏のアメリカ大統領当選も、全て結果オーライで白く塗りつぶしてしまう。これは終値ベースだが、さらに大納会の日の高値19113.18円まで上昇すればザラ場ベースでも完全に年間騰落はプラスになる。今週の上値追いのメドはその近辺とみる。オシレーター系指標はいっぱいいっぱいの状態だが、トレンド系指標のボリンジャーバンドではその程度までの上昇余地はありそうだ。
一方、下値のほうは最悪のシナリオとして、たとえば日ロ首脳会談でプーチン大統領が領土問題に関し英語の「ノー」にあたるロシア語の「ニエット」を連発したためそれ以外の話が何もできず、共同宣言も出せない状態で日本を後にし、外務省も安倍首相も面目が丸つぶれになる事態になればザラ場で「1000円安、18000円割れ」の大暴落もありうる。
共同宣言が「領土問題も含めて日ロ間の諸問題は話し合いを継続することに合意した」程度でお茶を濁せば、失望させても18500円程度への下落で止まるだろう。もちろん、領土問題と切り離して経済協力で何らかの成果が出れば、下落幅はもっと小さくなる。
つまり、12月の前半にアメリカの雇用統計もイタリア国民投票もメジャーSQ週も通過し、FOMCでの利上げはほとんど既成事実化し織り込み済みになっている東京市場にとって今週最大のリスクは、ひとえにプーチン大統領の胸の内、なのだ。予測が難しいが、トランプ氏の大統領当選によりハッピーなサプライズのほうは期待が薄らいだ。一方、交渉が事実上決裂し「日本に何しに来た」と国内世論の怒りを呼ぶような事態もロシア側は避けたいはず。状況の前進がみられなくても共同宣言が「話し合いの継続」で日経平均500円安どまりというシナリオは、非礼にならない落としどころとして、あるとみる。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは18500~19100円とみる。
「ロシアはヨーロッパか? そうでないのか?」は意見が分かれるかもしれないが、少なくとも外交では16世紀、イワン雷帝が無謀にも英国女王エリザベス1世に手紙でプロポーズしてすげなく無視された時代から、海千山千の諸国が「国益」をミッションにキツネとタヌキの化かしあいを繰り返すヨーロッパの国際政治に400年以上も関わってきた。それはアメリカの独立以来の歴史の2倍の歳月に及ぶ。ロシアとの交渉事が一筋縄でいかないのは、言わずとも知れたこと。(編集担当:寺尾淳)