政府は昨年12月になって、2017年度の税制改正大綱を決定し、そのなかに酒税法改正が盛り込んだ。
酒税法改正の大きな柱は、ビール系飲料の税率一本化だ。ビール系飲料の現在の税金は、レギュラー缶と呼ぶ350ml缶で、ビールは221円(うち酒税が77円)。発泡酒164円(同47円)、第3のビール143円(同28円)となっている。改正大綱によると10年後の2026年に、ビール系飲料の酒税を一本化して54.24円にするという内容の報告をした。
今回は、その追加報告である。先述のビール系飲料の酒税一本化と同時に政府が進めているのが、「ビール定義の見直し」だ。現在、酒税法によると、ビール製造(醸造)にあたりビールは原料の「麦芽比率は67%以上」とされている。これを「麦芽比率50%以上」に変更するという。
麦芽比率を引き下げるのと同時に、主原料のモルト&ホップのほか、これに加える麦や米、トウモロコシやジャガイモ、デンプンなどに限っている副原料に、風味付けなどのために果実や香辛料なども使用できるように変える。ビールの定義を緩和し、多様な商品の開発を促すのが狙いだ。2017年度税制改正大綱に盛り込み、2018年度から実施する。
ビール酒造組合によると、副原料のなかで米やコーンスターチは、優れたデンプン原料で、濁りの原因になるたんぱく質が少ないという特徴がある。これら副原料を使うと、たんぱく質やアミノ酸などの少ないすっきりとした味わいのあるビールとなる。一方、副原料を使わないビールは麦芽の特徴が強く出た味わいのあるビールとなると解説している。が、この副原料が麦芽の量を超えると、それはビールではなく“発泡酒”と税制上区別されてきた。
ここ数年、個性的な味わいで人気となっている「クラフトビール」や「輸入ビール」のなかには、麦芽比率が67%に届かない製品や、香辛料など規定以外の原材料を使っている製品も多い。その場合、ラベルに「発泡酒」と表記して販売しなければならない。しかし現在の酒税法では、麦芽比率が50%以上ならビールと同じ高い税額を適用するルールがあり、業者から「(発泡酒表記で)イメージは下がるのに、税金はビールと同じで高い」との不満が出ていた。
今回の「ビール定義見直し」が実施されれば、それらも「ビール」と表記できる。政府与党は、この見直しを通じて大手4社や特徴あるビールをつくる小規模メーカーなどの商品開発意欲を高めたい考えだ。
国内の大手の現行発泡酒は基本的に麦芽比率25%未満のため、当面影響は受けない。が、冒頭で述べたように、10年後の2026年に、ビール系飲料の酒税を一本化して54.24円にするとしている。国内大手は、発泡酒や第3のビールでも、強いブランドはビールと価格差を付けて残すことになりそうだが、2017年以降に発泡酒や第3のビールのリストラは間違いなく始まる。(編集担当:吉田恒)