車載駆動用バッテリーの進化がEV普及のカギを握る。日産リーフ初期型の電池容量は24kWh。5年後には30kWhに進化。写真の新型リーフは40kWhになり400kmの航続距離を得た、来年は60kWh搭載モデルが発売される
欧州や中国などで喧伝される自動車の電動化シフト。「EVバブル」という言葉も飛び出してくるほど、電気自動車(EV)社会へ熱い視線が注がれている。
とはいえ、東京都内を走っていても街中でEVと遭遇することは、滅多に無い。EVに興味はあっても“手が出ない/出せない”理由はいくつか考えられる。
手が出せない最大の理由は「航続距離」だ。満タン(満充電)でも200kmほどしか走れない、のでは「やはり不便だし、不安」だ。また、電力が減ってきたときの充電も面倒な作業で、都内各地に充電スポットが出来たとはいえ、ガソリン給油のように“数分で満タン”というわけにはいかない。急速充電器をつかっても30分ほどかかる。電池が抱える基本的な弱点が、EVの弱点にそのまま直結しているのが現状なのだ。
EVが使っているリチウムイオン電池は、基本的にノートパソコンやスマートフォンの電池と同じと考えて良い。小さいか大きいかの違いだけだ。スマホなどの電池なら「保ちが悪くなったら」電池の交換や、スマホそのものを買い換えるという手もある。
が、しかし、300-400万円もするEVを頻繁に買い換えるわけにも行かない。2010年に発売された、国内EVの代表「日産リーフ」の初期型は、新車時なら満充電で130km程度走れたものの、経年劣化は避けられず5年も経つと冬場に暖房を入れて60km走行した程度でアラートが出ることもあるという。そこで、電池交換を行ないたいが、60万円以上の出費を背負ってまで古いリーフを延命させるべきか、悩ましいところだ。
ただし、バッテリー技術開発は、凄い勢いで進んでいる。前述した初代リーフ初期型の電池容量は24kWh。それが5年後には30kWhに進化。先日発売された新型リーフでは40kWhになり400kmの航続距離を得た、来年は60kWh搭載モデルが発売される予定だ。8年で実に2.5倍に容量アップが図られたわけだ。
一方で、リチウムイオン電池は、注意が必要な製品特性を持つ。リチウムイオン電池は、化学反応によりリチウムイオンが電池内で正極と負極の間を移動することで、充電、放電している。このため、過充電の状態を継続すると、発熱、発火、爆発するといった危険な状態に至る。最近になって、何度か報道された電車の中で、乗客がバッグに入れてあった充電用モバイルバッテリーが発火したという、あの事故に象徴される問題だ。
また、リチウムイオン電池に負荷を接続し過放電の状態を継続すると、電池容量の低下や、電池寿命を速め、再充電してもすぐに消耗してしまうようになってしまう。
そこで、リチウムイオン電池は、電池セルの状態をつねに監視し、過充電、過放電といった状態を回避するための専用の保護回路が必要だ。その保護回路の中心的役割を担うLSIが、電池監視LSIである。
先日、幕張メッセで開催されたCEATECで、京都の電子部品メーカーのロームとその子会社ラピスセミコンダクタは、リチウムイオン電池を制御する大規模集積回路(LSI)を発表した。電池の充放電を監視して制御することで電池の発火を防ぎ安全性を高めるLSIだ。マイコンと呼ばれる中核の半導体を使わなくても動くため、ソフトプログラムの手間がなくなり開発期間の短縮にもつながるという。
このようにEV普及に向けた電池の開発、大容量化、寿命の延長、そして安全性の確保に、世界的な注目が集まっている。(編集担当:吉田恒)