「1日の残業が1カ月の残業より長いケースが19件」など、デタラメ過ぎるデータを根拠に『裁量労働制拡大』が労働者の働き方改善にもつながるとしてきた政府の姿勢が問われている。
日本経済団体連合会など雇用側の期待する政策推進姿勢を浮き彫りにしたような事案だ。仕切り直しが必要だ。
政府は『裁量労働制拡大』と『高度プロフェッショナル制度の創設』について、働き方改革関連法案から今回除外し、労働者にとって懸念される部分を取り除いた「働き方改革につながるもののみ」を今国会で先行成立させることが必要だ。
裁量労働制の拡大が雇用者のみでなく、労働者にもプラスになるというのであれば、裁量労働制導入事業所、制度適用を受けている労働者への実態調査を実施し、精度の高いデータをもとに、再検討するのが政府の責任といえよう。
今回のもとになった調査データ(2013年度労働時間等総合実態調査)では87事業所で、新たに117件にデータの誤りが明らかになった。加藤勝信厚生労働大臣はさらに増える可能性も国会答弁で示唆した。
明らかになったものでは、1日の残業が1カ月の残業より長いケースが19件、1日の最長残業が1週間の残業より長いケースが24件など、ありえないもの。
さらに加藤大臣が「ない」とした段ボール32箱分におよぶ調査票の原本が厚労省地下室で見つかった。どういうことなのか。理解しがたい。
自由党の小沢一郎代表(事務所)は「4月から全国の小学校で『道徳』が、成績評価される『教科』となる。しかし、文部科学大臣が散々国会で嘘をつき続けたり、国税庁長官は虚偽答弁がばれて逃亡犯のように逃げ回ったり、厚生労働省は自分達の政策に都合のよいデータを勝手にねつ造したり、まず道徳を学ぶべきは安倍内閣そのものである」とツイッターで批判した。同調する国民はすくなくなさそうだ。
こうしたずさんさも含め、23日の与野党幹事長・書記局長会談では、野党側が「平成25年労働時間等総合実態調査」の再実施など裁量労働についての全般的な再調査を求め、「働き方改革」関連法案提出の見送りを申し入れた。
与党は週明けに回答すると持ち帰ったが、少なくとも、信頼できるデータに基づいた法案作成が大前提で、根拠がずさんなものである以上、与党は申し入れに応じる誠実さを持つべきだ。政府も真摯に対応すべきことは言うまでもない。(編集担当:森高龍二)