日本経済団体連合会が希望した「労働時間規制から除外される労働者」が来年4月から誕生する。自民、公明、維新などが働き方改革関連法案を成立させて認めた。高度プロフェッショナル制度(高プロ)の下で働く労働者に自殺、過労死がでたら、まず3党を思い出すことだ。
「時間でなく、成果で評価する新しい働き方」(安倍総理)に恩恵を受けるのは経営側以外の何物でもない。
「高プロは成果で評価、自由な働き方」(安倍総理)と言いながら「労働者が仕事量や労働時間を自らの裁量で決められる規定がない」のはおかしい。自由な働き方を法律で規定していない欠陥制度と言わざるを得ず、まず、こうした欠陥を当面、省令でカバーすべきだ。
参院厚生労働委員会も付帯決議で「対象業務を具体的かつ明確に限定列挙すること」や「使用者が始業・終業時間、深夜・休日労働など労働時間にかかわる働き方についての業務命令や指示などを(高プロ労働者に対し)行ってはならない。また実際の自由な働き方の裁量を奪うような成果や業務量の要求、納期、期限の設定などを行ってはならないことを省令で明確に規定するよう」求めている。
そもそも高度プロは経団連が政府に強く求めてきた制度。榊原定征前会長が安倍政権と二人三脚で進めた『働かせ方改革』のひとつ。
榊原氏の後を継いだ中西宏明会長は6月の記者会見で、働き方改革は「ここ20年、生産性が上がっていないことが議論の出発点。働き方改革は日本企業の生産性を向上させるという挑戦」と労働者のためでなく、企業の生産性向上のためと明確にした。
安倍晋三総理や加藤勝信厚労大臣が国会で答弁したような「労働者のための働き方改革」ではないことを経団連のトップが明示した発言だ。したがって政府の法案に盛り込まれた高度プロの創設に労働側からのニーズや立法事実がないのは当然のことだ。政府が虚偽説明してきたということになる。
企業の生産性向上をめざすための働き方改革関連法案であったがゆえに、参院厚生労働委員会での自公らによる採決のあと、委員会は47に及ぶ付帯決議を可決した。
付帯決議に法的拘束力はない。だが行政が尊重しなければならないものだ。労働者保護の視点から、法の欠陥をカバーし、担保していく努力が政府にも立法府にもこれから強く求められる。
高プロ労働者の自殺や過労死が出る前に付帯決議を実効あるものにすること。「付帯決議の趣旨を十分尊重し努力する」(加藤厚労大臣の委員会での発言)。努力でなく来年4月の法施行前に具体的に省令に明記することが最低限必要だ。合わせて、適用範囲を厳格にするため、今後、法律レベルで規定していくことが必要だ。(編集担当:森高龍二)