今回のニュースのポイント
国内自動車大手8社の2027年3月期第1四半期決算が出そろい、営業利益では6社が前年同期比増益または黒字転換となりました。円安による為替効果が多くの企業の収益を押し上げたほか、販売構成の改善やコスト削減などが寄与しました。一方、トヨタ自動車とSUBARUは営業減益となり、原材料価格や諸経費、販売奨励金などのコスト負担も表面化。同じ円安環境でも、販売地域や商品構成、事業構造によって利益の伸びには差が生じています。
■ 自動車8社、6社が営業増益・黒字転換
国内自動車大手8社(トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、スズキ、SUBARU、マツダ、三菱自動車工業、いすゞ自動車)の2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)連結決算が出そろいました。
本業の儲けを示す営業利益の動きを一覧すると、以下の通りです。
・トヨタ自動車:1兆634億円(前年同期比8.8%減)
・日産自動車:778億円(前年同期は791億円の営業赤字)
・ホンダ:5,307億円(前年同期比117.4%増)
・スズキ:1,580億円(前年同期比11.2%増)
・SUBARU:425億円(前年同期比44.3%減)
・マツダ:328億円(前年同期は461億円の営業赤字)
・三菱自動車:100億円(前年同期比78.8%増)
・いすゞ自動車:747億円(前年同期比30.7%増)
8社中6社が増益または前年同期の赤字からの黒字転換を果たしました。一見すると業界全体で利益改善が広がっているように映ります。しかし、企業規模や事業構造が異なる各社の決算を詳細に紐解くと、同じ為替環境下にありながら利益の伸びや内容には明暗が生じていることが分かります。
■ 共通の追い風となった円安、それでも利益は分かれた
今回、多くの企業に共通してプラス要因となったのが為替の円安効果です。
トヨタでは為替変動が営業利益を3,450億円押し上げたほか、マツダでも413億円の増益要因となりました。スズキやSUBARUなどでも、円安が収益の押し上げ要因となりました。
しかし、円安という共通の追い風を受けながらも、最終的な営業損益の結末は一様ではありません。
トヨタは営業収益(売上高)が10.4%増の13兆5,254億円と伸びたものの、営業利益は8.8%減となりました。為替効果(3,450億円)や営業努力(700億円)があったものの、諸経費の増加(マイナス1,900億円)や原価改善のマイナス(マイナス850億円)などが上回り、円安効果だけでコスト増を吸収しきれず営業減益となりました。
SUBARUも売上収益が3.0%増の1兆2,508億円となった一方、営業利益は44.3%減と大幅な減益となりました。円安効果や関税影響の縮小といったプラス要因があったものの、主力の北米を中心とした世界販売台数の減少(9.5%減)、販売奨励金(インセンティブ)の増加、原材料価格や市況の悪化が利益を圧迫しました。
円安は収益の押し上げ要因となるものの、それだけで利益成長が決まるわけではないことが分かります。
■ 日産・マツダ黒字転換 販売台数だけでも決まらない
一方で、販売台数の伸びと営業利益の連動性が必ずしも一対一ではない点も今回の決算の特徴です。
日産は、グローバルでの小売販売台数が前年同期比0.9%減の70万1,000台と微減になりました。しかし、円安に伴う為替効果や全社的なコスト削減活動の推進が寄与し、連結営業利益は778億円を計上し、前年同期の791億円の営業赤字から黒字転換しました。
マツダも前年同期の461億円の営業赤字から、328億円の営業黒字へと回復しました。世界販売台数が1.2%増の30万4,000台にとどまるなか、北米や欧州での販売伸長に加え、高価格帯の大型車種を中心とした車種構成の改善が利益を押し上げました。
さらに、三菱自動車は中東やASEANでの需要軟化により世界販売台数が8%減(17万9,000台)となったものの、機動的な販売活動や収益改善施策が奏功し、営業利益は78.8%増の100億円と大幅な増益を達成しました。
単なる「販売台数の増加」だけでなく、商品構成や販売地域、販売施策、コスト削減、為替など複数の要因が、最終的な採算を左右しています。
■ ホンダ2.2倍 二輪・金融も支える自動車メーカー
営業利益で前年同期比117.4%増(5,307億円)と大きな伸びを示したのがホンダです。
ただし、この増加を四輪車の販売増加だけで説明することはできません。その背景には複数の要因が影響しています。
二輪事業が2,339億円の営業利益を確保し、収益を牽引。金融サービス事業も1,058億円の営業利益を確保しました。また、前年同期に計上していた電気自動車(EV)関連損失の反動により、前年同期に296億円の赤字だった四輪事業が1,921億円の黒字へ転換したことも寄与しています。
非四輪事業の寄与は他社にも見られます。トヨタでは、金融事業の営業利益が融資残高の増加を背景に24.0%増の2,756億円となり、減益となった自動車事業を下支えしました。
また、連結で黒字転換した日産ですが、事業別に見ると本業の自動車事業は177億円の営業赤字(前年同期は1,720億円の赤字)が残っています。連結黒字化を支えたのは、861億円の営業利益を確保した販売金融事業でした。
自動車メーカーの収益力をみる上では、新車販売だけでなく二輪や販売金融を含めた事業構造を把握する必要があります。
■ 好調企業にも残る原材料高・販売コスト
第1四半期で増益を達成した企業も含め、各社に共通して影響を与えているのがコスト面の負担です。
スズキはインドやパキスタンでの販売好調や円安により、第1四半期の営業利益が11.2%増の1,580億円と増益でスタートしました。しかし同社は、中東情勢に伴う原材料価格高騰の影響を考慮し、通期の連結営業利益予想を従来の5,700億円から5,400億円へ300億円下方修正しました。
マツダでも、原材料価格や物流費の高騰が240億円の減益要因となりました。SUBARUでは販売奨励金(インセンティブ)の増加などが利益を圧迫しています。
売上高の拡大や円安効果がプラスに作用する一方で、原材料・物流コスト・販売奨励金などの負担が、利益を圧迫する要因となっています。
■ 通期予想にも温度差 ホンダ上方修正、スズキは営業益下方修正
こうした経営環境を踏まえ、各社が公表した2027年3月期の通期業績予想にも違いが見られます。
・ホンダ:進捗状況等を踏まえ、通期の親会社の所有者に帰属する当期利益予想を4,000億円へ上方修正。
・スズキ:売上収益や親会社の所有者に帰属する当期利益の通期予想を引き上げた一方、原材料高を織り込み営業利益予想を300億円引き下げ。
・トヨタ:営業収益54兆円(6.5%増)、営業利益3兆4,000億円(49.7%減)などの通期予想を修正。
・日産、SUBARU、マツダ、三菱自動車、いすゞ:従来の見通しを据え置き。
第1四半期に好調な実績を示した企業を含め、通期見通しには各社で温度差がみられます。
■ 円安の先に問われる「自力の収益力」
今回の国内自動車大手8社の決算は、円安が多くの企業に追い風となる一方、各社の収益構造の違いが示される内容となりました。
・トヨタ:コスト増加が円安効果を上回り営業減益。
・SUBARU:販売減や奨励金増などにより大幅減益。
・日産:連結黒字化も自動車事業には赤字が残存。
・マツダ:車種構成改善や北米好調で営業黒字転換。
・ホンダ:二輪・金融の堅調さと四輪の黒字化で大幅増益。
・スズキ:増益確保も原材料高を織り込み通期営業利益予想を下方修正。
為替相場が今後変動し、円安の追い風が弱まった場合、為替効果を除いた各社の収益力が、これまで以上に問われる可能性があります。
販売台数や売上高といった表面的な数字だけでなく、各社それぞれの収益構造やコスト管理能力が、今後の業績を左右する重要なポイントとなりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













