化学大手、相次ぎ大幅増益 市況回復とAI・半導体需要が追い風

2026年08月18日 17:39

化学

市況・採算の改善に加え、AI・半導体向け高機能材料の需要拡大を背景に、化学大手で大幅増益や黒字転換が相次いでいる(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

化学・素材大手の直近決算では、大幅な増益や黒字転換が相次ぎました。石油化学や基礎化学品で市況改善、価格転嫁、在庫評価損益の改善などが利益を押し上げたほか、生成AIやデータセンター投資の拡大を背景に、半導体・電子部品向けの高機能材料も成長しています。原材料価格や地政学リスクなど不透明要因は残るものの、汎用品の採算回復と高付加価値分野の成長が重なり、化学業界の収益改善が鮮明になっています。

■ 化学大手で大幅増益・黒字転換相次ぐ

 2026年4〜6月期を中心とする化学・素材大手の決算では、大幅な増益や業績の黒字転換を達成する企業が相次ぎました。これまで業界の重荷となってきた汎用化学品の採算が改善し、収益改善の動きが幅広い企業に広がっています。

 代表的な業績をみても、三菱ケミカルグループがコア営業利益で前年同期比101.7%増、最終利益で約2.9倍を達成したほか、住友化学が親会社の所有者に帰属する四半期損益で前年同期の45億円の赤字から408億円の黒字へと大きくV字回復を果たしました。三井化学もコア営業利益が同88.4%増と急伸しています。さらに、東レが営業利益で同72.1%増、三菱ガス化学が同153.5%増、日本触媒が同182.7%増を記録するなど、幅広い企業で利益が拡大しています。主要各社で同時に業績改善が進んだ背景には、市況・採算の改善と成長分野の需要拡大という二つの大きな流れがあります。

■ 重荷だった汎用化学・素材の採算が改善

 一つ目の要因は、長らく採算が悪化していた基礎化学品や汎用素材の市況改善と、それに伴う採算の好転です。原材料価格の上昇に合わせた販売価格の改定が進んだことに加え、在庫評価損益の良化が各社の利益を大きく押し上げました。

 住友化学では、石油化学事業を担うエッセンシャル&グリーンマテリアルズ事業のコア営業損益が前年同期の赤字から272億円の黒字へ転換しました。三井化学でもベーシック&グリーン・マテリアルズ事業が赤字から198億円の黒字へ浮上しています。また、日本触媒ではアクリル酸や高吸水性樹脂の販売価格上昇が寄与し、三菱ケミカルグループでも中東情勢を背景としたMMAモノマーなどの市況高騰や在庫評価損益の良化が収益拡大につながりました。化学各社の業績を下押ししてきた汎用分野の環境改善が、業界全体の底上げを果たした形です。

■ AI・半導体需要、高機能材料へ広がる

 もう一つの要因は、世界的なAI(人工知能)の普及やデータセンター建設の加速に伴う高機能材料の需要増加です。化学・素材業界でも、先端分野向け材料の出荷が力強く推移しています。

 三菱ケミカルグループでは半導体製造装置向け高機能材料が伸び、三井化学でも半導体・光学材料などのICTソリューション事業が好調に推移しました。三菱ガス化学では半導体パッケージ用BT材料やAIサーバー向け基板材料の販売が伸び、機能化学品事業の利益を押し上げました。ダイセルではAIサーバー向け液晶ポリマー、東洋紡では積層セラミックコンデンサ向けの離型フィルムや電子材料、東レでも電子部品向けフィルムなどが業績を支えています。AI投資の連鎖が製造装置や制御機器といった設備にとどまらず、それらを構成する化学素材や高機能フィルムにまで広がりを見せています。

■ 価格転嫁・構造改革も利益回復を後押し

 外部環境の追い風に加えて、各社が進めてきた事業構造の改善や適切な価格転嫁も利益改善を後押ししています。

 カネカは、原燃料高に対し製品価格への転嫁(価格改定)を機動的に進めたほか、ヘルスケアや食品分野の伸長も加わり、全4事業ユニットで増収増益を達成しました。三井化学では事業構造改善による固定費削減、クラレでは前期の減損に伴う減価償却費の減少が利益改善に寄与しました。さらに帝人では、関係会社株式売却益約455億円という一時的な要因が含まれるものの、本業の稼ぐ力を示す事業利益においても前年同期比56.8%増と実態面の改善が進んでいます。外部環境の好転と社内改革の双方が重なったことが、幅広い企業の利益改善に寄与しました。

■ 上方修正相次ぐも、先行きには不透明感

 足もとの好調な業績進捗を受け、業績予想を引き上げる企業も出ています。

 三菱ガス化学と日本触媒は通期の連結業績予想を上方修正し、日本触媒は年間配当予想も引き上げました。クラレも通期の売上高予想を上方修正しました。また、三菱ケミカルグループや東レは第2四半期累計(中間期)の業績予想を上方修正しています。一方で、通期予想については見直しを行わず従来計画を据え置く企業も少なくありません。中東情勢の動向や原燃料価格の推移、さらには為替や化学品市況の変動など、下期に向けた不透明感が根強いためです。

 化学業界では、汎用化学品の採算改善とAI・半導体向け高機能材料の成長という二つの追い風が重なり、収益回復が幅広い企業へ広がっています。一方、外部環境の動向次第では市況が再び変動するリスクも残されています。足もとの好調な業績ペースを下期まで維持できるかが、今後の焦点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)