日銀、物価上振れリスクを警戒 円安・AI需要注視、追加利上げ継続へ

2026年08月18日 06:24

日銀8

物価上振れリスクや円安の影響を注視し、経済・物価情勢に応じて政策金利を引き上げる方針を示す日本銀行

今回のニュースのポイント

日本銀行は最新の「経済・物価情勢の展望」で、2026年度の日本経済について緩やかな成長が続くとの見通しを示しました。消費者物価(除く生鮮食品)は2026年度後半以降、2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めると予想。原油価格に加え、AI関連需要に伴う半導体価格の上昇や最近の円安が物価を押し上げる可能性を指摘しています。日銀は現在の金融環境をなお緩和的と評価しており、経済・物価情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げる方針を示しています。

■ 日銀、日本経済は「緩やかな成長」を維持

 日本銀行がまとめた最新の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、わが国の経済について、原油高による下押し圧力がありつつも、グローバルなAI(人工知能)関連需要の拡大や政府の政策、緩和的な金融環境に支えられ、緩やかな成長を続けるシナリオが描かれています。

 政策委員による2026年度の実質GDP成長率の見通し中央値は前年度比プラス0.6%となり、前回の4月時点(プラス0.5%)から小幅に上方修正されました。続く2027年度はプラス0.8%、2028年度もプラス0.8%と見込まれています。見通し期間後半にかけては、原油高の負の影響が和らぐとともに、所得から支出への前向きな循環が一段と強まり、潜在成長率並みの成長ペースを維持するとの見立てです。

■ 2026年度物価2.5%、ただし年度後半は「2%をはっきり上回る」

 物価の見通しにおいては、基調的な上昇圧力を強く意識する内容となっています。2026年度の生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の見通し中央値はプラス2.5%と、4月時点のプラス2.8%から下方修正されました。しかしこれは、政府による夏場の電気・ガス代負担緩和策などの一時的な押し下げ効果によるものです。

 日銀は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、これまでの原油価格上昇やAI関連需要に伴う半導体価格等の上昇、最近の円安などを背景に、2026年度後半以降には「2%をはっきりと上回る水準」まで伸び率を高めていくと予想しています。企業の賃金・価格設定行動が積極化するなか、物価の上昇傾向が強まるとみています。

■ 円安が物価へ、日銀「過去より影響しやすい」

 日銀が物価の上振れ要因として特に警戒感を強めているのが為替相場の動向です。レポートでは、最近の円安が輸入物価を通じて耐久財など幅広い品目の価格上昇に及ぶ可能性を提示しています。

 さらに重要な点として、企業の賃金・価格設定行動が従来よりも積極化していることから、「過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」との認識が示されました。為替変動による輸入物価への影響が、幅広い品目の価格へ波及しやすい環境になっているとみられます。なお、18日早朝の外国為替市場では1ドル=159円46銭近辺と円安傾向が続いており、日銀が警戒する為替から物価への波及をみるうえで、円相場の動向が一段と注目されます。

■ AI需要、景気押し上げと物価上昇の「両面」

 世界的に加速するAI関連投資について、日銀はその影響を景気と物価の「双方」から多角的に評価しています。

 AI需要の拡大は、日本の設備投資や輸出、企業収益を直接押し上げる強力な追い風となる一方、半導体や銅などの素材、機械類の価格上昇を通じて、消費者物価に上昇圧力をもたらすリスク要因としても挙げられています。加えて、将来的に投資に見合った収益の拡大が実現しなかった場合には、資産価格の変動などを伴って金融市場に調整圧力が生じる懸念にも触れており、成長の追い風である一方、物価上昇圧力や調整リスクを併せ持つとみています。

■ 日銀「引き続き政策金利を引き上げ」

 こうした経済・物価の判断を踏まえ、金融政策の方向性について日銀は、基調的な物価上昇率が2%の目標に近づくなか、現在の実質金利がマイナス圏にあるなど「金融環境はなお緩和的である」と評価しています。そのうえで、経済・物価・金融情勢の推移に応じて「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との基本的な方針を明確に維持しました。

 あらかじめ特定の利上げ時期やペースを決定づけているわけではなく、中東情勢やAI需要の動向、為替相場の変動による影響を丹念に点検しながら判断するスタンスです。日銀が物価の上振れリスクを意識するなか、円相場が159円台まで円安方向に動いていることは、今後の金融政策を考えるうえでも重要な判断材料となります。成長を支えるAI需要と、為替・資源価格を通じたインフレ圧力の双方を見極めながら、今後の利上げ時期やペースを判断していくことになります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)