今回のニュースのポイント
大日本印刷(DNP)とTOPPANホールディングスの2027年3月期第1四半期決算は、そろって営業増益となりました。DNPは半導体製造用フォトマスクやディスプレイ用光学フィルム、包装関連が伸び、営業利益は前年同期比21.3%増。TOPPAN HDは海外M&Aの効果や環境対応型パッケージなどが寄与し、営業利益は47.9%増となりました。一方、出版・商業印刷など紙媒体を中心とする従来型事業には縮小傾向もみられます。「印刷」で培った技術を半導体、包装、デジタルなどへ広げる大手2社の決算から、印刷会社の収益構造の変化を読み解きます。
■ 印刷大手2社がそろって営業増益
印刷大手2社が発表した2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)連結決算は、本業の収益力を示す営業利益でそろって大幅な増益を達成しました。
大日本印刷(DNP)の売上高は前年同期比1.9%増の3,729億円、営業利益は同21.3%増の278億円、経常利益は同25.0%増の352億円で着地しました。親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比48.0%減の235億円となりましたが、これは前年同期に計上した投資有価証券売却益など特別利益の反動によるもので、本業の稼ぐ力は順調に改善しています。
一方、TOPPANホールディングスの売上高は前年同期比15.0%増の4,573億1,800万円、営業利益は同47.9%増の200億2,400万円、経常利益は同53.1%増の229億6,300万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同131.3%増(2.3倍)の216億7,400万円となりました。
純利益の増減率では2社で対照的な結果となったものの、本業の営業利益を軸に見ると、両社ともに力強い伸長を見せた第1四半期となりました。
■ DNPを支えた「半導体」とディスプレイ
DNPの増益を力強く牽引したのがエレクトロニクス部門です。同部門の売上高は前年同期比12.4%増の713億円、営業利益は同28.2%増の178億円と大きく拡大しました。
先端品の需要が拡大した半導体製造用フォトマスクや、液晶テレビパネルの大型化に伴うディスプレイ用光学フィルムの出荷が順調に伸びました。「印刷会社がなぜ半導体関連なのか」と思われがちですが、DNPは印刷で培ってきた技術を応用・発展させ、エレクトロニクス分野へ事業領域を広げています。
■ 包装も収益源に DNPは構造改革効果も寄与
DNPのもう一つの柱であるライフ&ヘルスケア部門も好調でした。売上高は前年同期比0.5%増の1,277億円にとどまったものの、営業利益は同21.8%増の115億円と2割を超える大幅増益を記録しました。
医療用パッケージや生活空間向け製品、飲料向け事業での価格改定が浸透したことに加え、コスト削減や固定資産の適正化といった構造改革の取り組みが実を結びました。DNPの第1四半期は、成長を牽引するエレクトロニクスと、収益性を高めた生活・包装という二つの領域が利益を押し上げる構造となりました。
■ TOPPANは生活・産業が急拡大、M&Aと包装が寄与
TOPPAN HDの業績を最も強く押し上げたのは生活・産業事業分野です。売上高は前年同期比57.3%増の2,142億9,500万円、営業利益は同56.7%増の146億500万円と急拡大しました。
この背景には、単なる国内パッケージ需要の拡大だけでなく、積極的なグローバル戦略があります。前年度に買収した米州の軟包装事業や、イタリアの包材製造販売Irplast社の連結化といった海外M&Aの効果が大きく寄与しました。国内においても、水性フレキソ印刷などを活用した環境対応型パッケージ「SXパッケージ」の採用が広がっています。海外でのM&Aによる規模拡大と、国内での高付加価値(環境対応)シフトが融合し、大きな成長エンジンとなっています。
■ TOPPANも半導体領域への投資を継続
半導体領域へのアプローチはTOPPAN HDも同様です。同社のエレクトロニクス事業分野は、売上高が前年同期比33.4%減の376億8,500万円となったものの、営業利益は同3.2%増の93億2,700万円と増益を確保しました。大幅な減収に見える背景には、テクセンドフォトマスクが持分法適用関連会社へ移行したことによる連結範囲変更の影響があり、同社によればこの影響を除いた実質ベースでは増収であったとしています。
さらに同社は、次世代半導体パッケージ基板である「FC-BGA基板」の先端品認定を進めているほか、今年1月に量産開始した新潟工場の新ライン稼働、石川工場でのパイロットライン立ち上げ、シンガポールでの新工場計画など、半導体関連の生産能力増強に向けた投資を精力的に進めています。DNPだけでなくTOPPAN HDにとっても、半導体関連は次の重要な成長軸に位置付けられています。
■ 一方で「紙」の市場は縮小傾向が続く
2社が非紙領域で利益を伸ばす一方で、従来型の紙媒体市場の厳しさは続いています。
DNPのスマートコミュニケーション部門では、紙媒体市場の縮小などの影響を受けて小幅な減収減益となりました。TOPPAN HDの情報ソリューション事業分野でも、タイのカード会社買収効果が出たセキュア事業やIoT案件が伸びた一方で、出版印刷や商業印刷の落ち込みが続いた情報系印刷事業は減収を余儀なくされています。
ただし、これは「印刷事業からの撤退」を意味するものではありません。紙媒体の需要減という構造的変化に対し、両社はこれまで培ってきた印刷技術、顧客基盤、製造インフラを基点としながら、包装、エレクトロニクス、デジタル・セキュリティなどへ事業のポートフォリオ(構成)を柔軟に再構築してきた結果と言えます。
■ 好スタートも両社とも通期予想は慎重に据え置き
第1四半期は良好な滑り出しとなったものの、両社ともに通期の連結業績予想を変更せず、従来計画を据え置きました。
DNPの通期予想は、売上高が前期比1.2%増の1兆5,300億円、営業利益が同6.9%増の1,080億円を見込んでいます。TOPPAN HDの通期予想は、売上高が前期比6.6%増の1兆9,250億円、営業利益が同19.2%増の800億円としています。
両社とも第1四半期は営業増益となりましたが、通期予想は据え置いています。第1四半期に見せた増益基調を残る9カ月で維持できるかが、今後の観察点となります。
かつて「印刷会社」と聞けば、新聞や雑誌、書籍、チラシなど、紙への印刷を扱うビジネスが真っ先に思い浮かびました。しかし今回の2社の決算では、半導体関連部材や環境対応パッケージ、海外M&Aといった事業が収益を強力に支える姿が鮮明となりました。紙媒体市場の縮小という共通の課題に直面するなか、DNPはエレクトロニクス、TOPPAN HDは生活・産業分野を中心に、それぞれ独自の成長ルートを描いています。印刷技術で培った強みを別の市場へどう広げるか。「印刷大手」という言葉からイメージされる従来の姿と、実際の稼ぎ方との距離は、今回の決算を通じてもさらに広がっていると言えそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













