今回のニュースのポイント
素材大手企業の最新決算が出揃いました。今回の決算では、価格競争にさらされやすい汎用品から、AI・電子部品や航空宇宙などの成長市場向け高機能・高付加価値材料へ収益源を移す構造転換の成果が鮮明になりました。東レや東洋紡が高機能フィルムや炭素繊維の需要伸長によって大幅な増益を達成したほか、クラレでは繊維事業が前年同期の赤字から黒字へ転換しました。帝人でも本業の採算性改善が進むなど、各社で収益構造を見直す動きが進んでいます。
■ 素材大手、高機能・高付加価値分野が収益支える
国内の主要素材大手(東レ、東洋紡、クラレ、帝人)の最新決算が出揃いました。
なお、クラレは12月期企業のため2026年12月期中間決算(1〜6月)であり、東レ、東洋紡、帝人の3社は2027年3月期第1四半期決算(4〜6月)となります。対象期間や会計基準に違いがあるものの、各社の業績を精査すると、汎用品への依存度を下げる構造転換の進展という共通の動向が浮かび上がります。
最新決算では、AI・電子部品や航空宇宙など成長市場向けの高機能材料が業績を力強く支える動きが目立ちました。東レでは営業利益が前年同期比72.1%増の大幅増益となり、東洋紡も同28.1%増を確保しました。クラレでは繊維事業が前年同期の赤字から黒字へ転換し、帝人も本業の収益力を示す事業利益が同56.8%増と伸長しました。
素材メーカー各社は長年、海外競合との価格競争にさらされやすい汎用品から、高い技術力や用途開発力を生かせる高付加価値分野への転換を進めてきました。世界的なAI関連投資の拡大や航空需要の回復が、その収益構造の変化を後押ししています。
■ 東レ、営業利益72%増 航空・電子部品向け伸びる
高機能材の成長が収益拡大にストレートに結びついたのが東レです。2027年3月期第1四半期(4〜6月)連結決算は、売上収益が前年同期比14.0%増の6,789億円、営業利益が同72.1%増の473億円と売上の伸びを大きく上回る大幅な増益を達成しました。
業績を強力に牽引したのが炭素繊維複合材料事業と機能化成品事業です。炭素繊維複合材料事業は、航空・宇宙・防衛用途の順調な拡大に加え、スポーツ・一般産業用途の回復により、売上収益が897億円(前年同期比34.1%増)、事業利益が79億円(同71.3%増)と大幅に拡大しました。機能化成品事業でも、積層セラミックコンデンサ(MLCC)等の電子部品向けフィルムや樹脂の販売が堅調に推移し、事業利益は231億円(同69.4%増)に達しました。
航空・防衛や電子部品といった成長分野へ高機能素材を供給する事業構造が、今回の大幅増益を支えています。
■ 東洋紡、AIサーバー需要取り込む 一方で従来型繊維は赤字
東洋紡の決算は、高機能用途の拡大と従来型事業の苦戦という明暗を象徴的に示しています。2027年3月期第1四半期(4〜6月)連結決算は、売上高が前年同期比7.3%増の1,103億円、営業利益が同28.1%増の71億円となりました。
成長の推進力となったのは、AIサーバー向けなどの先端需要です。フィルム事業において、MLCC用の離型フィルムがAIサーバー向けに順調に拡大したほか、液晶偏光子保護フィルム「コスモシャインSRF」の強い需要に支えられ、セグメント利益は同29.0%増の51億円へ伸長しました。AIブームによる需要拡大が、電子部品そのものだけでなく、その製造工程に使用される高機能フィルムにまで波及している実態を示しています。
一方で、従来型の繊維事業は中東向け特化生地の販売減少やコスト増により3億6,300万円の営業損失(前年同期は8,300万円の営業損失)となり、苦戦が続いています。どの市場・用途に製品を供給できるかによって、セグメントごとの採算性に明確な差が生じています。
■ クラレ、繊維が黒字転換 通期売上予想も上方修正
クラレの決算は、「汎用品からの脱却」が単に「繊維事業の縮小」を意味するわけではないことを提示しています。2026年12月期中間連結決算(1〜6月)は、売上高が前年同期比7.8%増の4,310億円、営業利益が同9.8%増の288億円となりました。
耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」を擁するイソプレン事業や、歯科材料などの機能材料事業が収益改善を果たしたことに加え、繊維事業も営業利益41億9,600万円(前年同期は5,700万円の営業損失)と大幅な黒字化を達成しました。人工皮革「クラリーノ」の需要回復などが寄与しています。
重要なのは特定の素材ジャンルそのものではなく、高い機能性と競合優位性を持ち、差別化できる用途へ製品構成をシフトさせられるかどうかにあります。足元の堅調な販売動向を踏まえ、同社は通期の売上高予想を従来の8,500億円から8,800億円へと上方修正しました。
■ 帝人、本業改善も純利益急増には「特殊要因」
帝人の決算においては、数字の質を慎重に見極める必要があります。2027年3月期第1四半期(4〜6月)連結決算は、売上収益が前年同期比8.7%減の2,219億円となった一方、営業利益は599億円(前年同期は22億円)、最終利益は451億円の黒字(同7億円の赤字)へと急拡大しました。
最終利益が急増した最大の要因は、デュポン帝人関連会社などの株式売却に伴う関係会社株式売却益454億円を計上した特殊要因によるものです。一方で、こうした非経常損益を除いた本業の稼ぐ力を示す「事業利益」も同56.8%増の123億円となっており、本業の採算性改善自体も着実に進んでいます。
スペシャリティマテリアルズ事業では事業赤字(10億円)が残るものの、資産リサイクルを進める一方、本業の事業利益も改善しており、既存事業を見直しながら収益構造を再構築する動きが進んでいます。
素材大手の決算では、AI・電子部品や航空宇宙など成長市場向けの高機能材が収益を支える構図が鮮明になっています。一方、従来型事業では採算改善が課題となる分野も残り、企業によって収益改善の中身には差があります。素材各社にとって、単純な販売量の拡大ではなく、技術力を生かして高い付加価値を確保できる用途へ事業を移せるかが、今後の成長を左右することになりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













