今回のニュースのポイント
東京海上HD、MS&AD、SOMPO HDの2027年3月期第1四半期決算は、3社ともに親会社の所有者に帰属する四半期利益が増加しました。東京海上では海外保険の修正純利益が1,643億円、MS&ADでは海外事業の利益が同111.6%増、SOMPOでは海外保険収益が同約58.9%増となり、3社共通して海外保険事業が大きな存在感を示しています。一方、3社とも通期業績予想を据え置きました。今後は自然災害や金融市場、為替などの外部環境と、第2四半期以降の業績進捗が焦点となります。
■ 3社そろって最終増益、ただし「中身」は一様ではない
国内損害保険大手3グループの2027年3月期第1四半期連結決算(2026年4〜6月、全社IFRS適用)が出そろいました。東京海上ホールディングス(HD)、MS&ADインシュアランスグループHD、SOMPOホールディングスの3社はいずれも前年同期比で増収を確保し、親会社の所有者に帰属する四半期利益も揃って前年同期を上回りました。
・東京海上HD:保険収益 2兆471億34百万円(12.3%増)、親会社所有者帰属四半期利益 2,643億円(3.3%増)
・MS&AD:保険収益 1兆6,861億87百万円(14.1%増)、親会社所有者帰属四半期利益 3,286億18百万円(33.4%増)
・SOMPO HD:保険収益 1兆6,169億82百万円(28.0%増)、親会社所有者帰属四半期利益 1,811億68百万円(52.8%増)
3社とも最終利益で増益を確保したものの、その伸び率には大きな差が見られます。さらに、各社のセグメント別損益を精査すると、「好決算」の具体的な背景や収益構造には明確な違いが現れています。
■ 東京海上は海外保険が国内損保の弱さを補う構図
業界最大手の東京海上HDは、売上高に相当する保険収益が前年同期比12.3%増の2兆471億34百万円と2兆円の大台を突破し、四半期利益も同3.3%増の2,643億円となりました。
しかし、同社がグループの持続的な業績を示す主要指標と位置付ける「修正純利益」は、前年同期比3.6%減の2,613億51百万円と縮小しています。内訳を見ると、国内損害保険の修正純利益が前年同期の975億円から772億円へと約203億円減少したことが響きました。この国内の伸び悩みを支えたのが海外保険事業です。海外保険の修正純利益は前年同期比138億円増の1,643億円へと拡大し、全社修正純利益の過半を占める形でグループ全体の損益を下支えしました。
■ MS&ADは3割増益、海外事業の利益は2倍超へ拡大
MS&ADは、保険収益が前年同期比14.1%増の1兆6,861億87百万円、親会社所有者帰属四半期利益が同33.4%増の3,286億18百万円となり、修正利益も同29.7%増の3,106億円と力強い伸びを見せました。
国内損害保険主要2社(三井住友海上、あいおいニッセイ同和)では、保険サービス損益が同9.8%増の1,306億円へと改善し、金融損益の拡大も重なって四半期利益は同64.4%増(2,752億円)となりました。さらに顕著な成長を示したのが海外事業です。海外保険子会社・関連会社の四半期利益は、前年同期の455億円から964億円へと111.6%増(2倍超)に達しました。海外保険がグループ全体の利益成長を支える重要な収益源となっています。
■ SOMPOは最終利益5割増、国内損保利益は2倍超
3社のなかで最終利益の伸び率が最も大きかったのがSOMPO HDです。保険収益が前年同期比28.0%増の1兆6,169億82百万円、親会社所有者帰属四半期利益が同52.8%増の1,811億68百万円となりました。
同社では海外保険事業の保険収益が前年同期の5,629億円から8,947億円へと約58.9%拡大し、連結全体の保険収益の過半を占める規模へと成長しました。利益面で大きく貢献したのが国内損害保険事業で、四半期利益が前年同期の324億円から704億円へと約2.2倍に急増しました。海外での規模拡大と、国内損保における大幅な損益改善という両輪が噛み合い、高い増益率を達成しています。
■ 通期業績予想は3社そろって「据え置き」
各社ともに第1四半期として堅調な数字を並べましたが、2027年3月期の通期連結業績予想については3社そろって従来計画を変更していません。
・東京海上HD:親会社所有者帰属当期利益 8,300億円(前期比56.2%増)、修正純利益 9,500億円
・MS&AD:親会社所有者帰属当期利益 4,250億円(前期比16.8%減)
・SOMPO HD:親会社所有者帰属当期利益 4,900億円(前期比23.4%減)
第1四半期時点では3社とも年間計画を維持しました。損保各社の業績は保険引受の状況だけでなく、自然災害や金融市場、為替などさまざまな要因の影響を受けます。今後は第2四半期以降の業績進捗とともに、こうした外部環境が年間業績にどう影響するかも焦点となります。
■ 「最終利益」だけでは見えない損保の収益力
今回の決算は、損害保険会社の業績を読み解く際、単一の最終利益だけで判断することの難しさも示しています。
東京海上の決算が示す通り、IFRS上の四半期利益は3.3%増となった一方で、一時要因等を調整した修正純利益は3.6%減となる二面性がみられました。また、MS&ADでは投資損益などの金融損益(同40.3%増)が利益を押し上げ、SOMPOでも金融損益が前年同期の664億円から1,463億円へ拡大するなど、運用環境の影響も大きく作用しています。
損保各社の収益力を多面的に見る上では、会計上の最終利益にとどまらず、保険本業の採算性を示す保険サービス損益やコンバインド・レシオ、金融損益、さらには各社独自の修正利益などを多角的にチェックする必要があります。
■ 海外市場での稼ぎがグループ業績を左右する要素となっている
今回の3社の決算から共通して浮かび上がったのは、海外保険事業の存在感の大きさです。
東京海上では修正純利益2,613億円のうち1,643億円を海外保険が稼ぎ出し、SOMPOでは保険収益の過半を海外が占める構造となっています。MS&ADでも海外利益が2倍超へと跳ね上がりました。国内損保大手の決算でありながら、海外市場でどれだけ収益を積み上げられるかが、グループ業績を左右する重要な要素になっていることがうかがえます。
■ 焦点は「増益率」から「利益の質」へ
損保大手3社の第1四半期はそろって最終増益となりました。しかしその中身を見ると、海外保険が国内の減少分をカバーした東京海上、国内損保の改善と海外の大幅増益が重なったMS&AD、海外の規模拡大と国内損保の利益倍増が奏功したSOMPOと、それぞれ異なる姿が確認できます。
3社がそろって通期予想を据え置くなか、今後は単純な最終利益の増減だけではなく、国内損保の引受採算の改善や海外事業の成長をどこまで持続できるかという「利益の質」が、年間業績に向けた重要な焦点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













