今回のニュースのポイント
厚生労働省の2026年6月分毎月勤労統計調査(確報)では、物価変動を考慮した実質賃金が前年同月比2.2%増となりました。注目されるのは、夏季賞与などを含む特別給与だけでなく、基本給などに相当する所定内給与も3.5%増えていることです。2025年には物価上昇に賃金が追いつかず実質賃金のマイナスが続く局面がみられましたが、2026年に入ってプラスとなる月もみられるなど変化がうかがえます。今後は所定内給与をはじめとする賃金の伸びが持続し、実質的な購買力の改善につながるかが焦点となります。
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物価高に賃金上昇が追いつくのか。長く続いてきたこの「追いかけっこ」の構図に、足元で変化の兆しが表れ始めています。
厚生労働省が24日に発表した2026年6月分の毎月勤労統計調査(確報)によると、事業所規模5人以上の現金給与総額は前年同月比4.0%増の53万4,823円となり、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.2%増となりました。しかし、今回のデータを読み解くうえで注目すべきなのは、「6月の実質賃金が2.2%増であった」という単月の数字だけではありません。
毎月勤労統計の時系列データを振り返ると、2025年は物価上昇のペースに賃金の伸びが追いつかず、実質賃金が前年同月を下回る月が多くみられました。これに対し、2026年に入ってからは実質賃金がプラスとなる月もみられるなど、前年とは異なる動きが表れています。これが一時的な要因によるものなのか、それとも賃金の基調そのものが変化しているのかを見極めることが、今後の動向を占ううえで重要な視点となります。
その解を求めるうえで注目されるのが、6月の「所定内給与」の動きです。
6月の現金給与総額(53万4,823円)の内訳を見ると、夏季賞与などが含まれる「特別に支払われた給与」は23万5,152円で前年同月比4.7%増となり、その伸びが現金給与総額を押し上げました。一方、基本給などに相当する「所定内給与」も27万9,511円となり、前年同月比で3.5%増という伸びを示しています。賞与などの一時的な給与だけでなく、毎月受け取る基本給などに相当する所定内給与も前年同月を上回っている点が注目されます。
こうした所定内給与の伸びは、特定の労働者層にとどまらず確認できます。就業形態別に所定内給与の動きを確認すると、一般労働者の所定内給与は前年同月比3.7%増の35万5,690円となりました。一方で、パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内給与)も1,446円と、前年同月比で4.4%増となっています。一般労働者、パートタイム労働者の双方で、所定内給与に関する賃金指標が前年同月を上回っています。
ここで、6月の「賃金」と「物価」の関係を整理してみます。実質賃金の算出に用いられる持家の帰属家賃を除く消費者物価指数は前年同月比1.9%の上昇となりました。物価の上昇ペースが2%を下回る水準となるなか、名目賃金である現金給与総額が4.0%増と物価上昇率を上回った結果、指数同士の比率から算出される実質賃金指数は2.2%増となりました。名目賃金の伸びが物価上昇率を上回ったことが、6月の実質賃金をプラスに押し上げた形です。
もっとも、実質賃金がプラスとなったからといって、「即座に物価高の問題が完全に解消した」と結論付けることはできません。
実質賃金は前年同月との比較であり、プラスになったからといって、それまでの物価上昇によって高まった生活コストの水準そのものが低下したことを意味するわけではありません。実質賃金のプラスは購買力を見るうえで前向きな材料ですが、それが家計の負担感の改善にどこまでつながるかは、今後の賃金と物価の動きを継続して確認する必要があります。
では、今後の焦点はどこにあるのでしょうか。
6月は夏季賞与など特別給与の影響を受けやすいため、今後は賞与などの影響が小さくなる時期にも、所定内給与を中心とした名目賃金の伸びが物価上昇を上回る状況が続くかが注目されます。所定内給与の伸びが続き、物価上昇率を上回る名目賃金の伸びが維持されれば、実質賃金を下支えする環境が整うことになります。反対に、物価上昇が再び加速したり、賃金の伸びが鈍化したりすれば、再び実質賃金が圧迫される懸念もくすぶります。
日本経済では近年、賃上げの持続性が重要なテーマとなってきました。いくら名目賃金が増加しても、それ以上に物価が上がってしまえば、家計の実質的な購買力は改善しにくくなります。6月の毎月勤労統計調査は、現金給与総額が物価を上回り、その背景に所定内給与の3.5%増という動向が存在することを示しました。
今後の焦点は「単に賃上げが行われたか」だけでなく、「基本給を中心とした賃金の伸びが、物価上昇を継続的に上回れるか」に移ります。実質賃金のプラスが一時的な現象に終わらず定着していくのか。今後の所定内給与の推移と物価動向の力関係が、その行方を左右することになりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













