EVが静かになるほど「振動」が気になる? NTN、車内の揺れを設計段階で予測

2026年09月01日 08:09

NTN

EVに搭載される等速ジョイント(CVJ)のイメージ。NTNは、CVJが車両走行時の振動に与える影響を設計段階で予測する解析技術を開発した(画像提供:NTN)

今回のニュースのポイント

NTNは8月31日、自動車の等速ジョイント(CVJ)が車両走行時の振動に与える影響について、車両全体を対象として予測する解析技術を開発したと発表しました。電動車の普及に伴いエンジン由来の騒音・振動が減少したことで、従来は目立ちにくかった車両由来の微小な振動が体感されやすくなっています。同社は部品内部で発生する力が車体を通じて車内へ伝わる経路を設計初期に解析・評価するモデルを構築し、試作や実車評価にかかる開発工数を従来比で最大約8%削減できる見込みとしています。

本文
 ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(BEV)などの電動車が普及するにつれ、自動車の車内環境には新たな課題が浮き彫りになっています。エンジン由来の騒音や振動が低減した結果、従来は目立ちにくかった車両由来の振動や騒音が相対的に感じられやすくなり、乗り心地や静粛性といったNVH(騒音・振動・乗り心地)性能への要求が高まっています。

 こうした課題に対しベアリング大手のNTNは、自動車の駆動力をタイヤへ伝える重要部品である等速ジョイント(CVJ)に着目しました。同社が展開する「トリポード型しゅう動式CVJ」は主にデファレンシャル側に使用され、サスペンションの動きに追従しながら動力を伝達します。その際、ジョイント内部の摩擦によって「誘起スラスト力」と呼ばれる軸方向の微小な力が発生し、これが車体へ伝わることで車両の振動に影響を及ぼすことがあります。

 タイヤへ動力を伝える部品内部で生じるわずかな力が、どのような経路を通って車内の振動につながるのかを解析するため、同社はCVJ解析モデルと伝達経路解析(TPA)技術を融合させました。CVJで発生した誘起スラスト力が、電動駆動ユニット(e-Axle)やエンジン、サスペンション、車体構造部材(フレーム)などを経由して車内へ伝わる際、部品ごとの伝達特性の違いを考慮して解析を行います。これにより、CVJ単体だけでなく、車両へ搭載した際の振動性能を設計段階で評価できるようにしました。

 従来はCVJ開発の初期段階で車両搭載時の振動性能を把握することが難しく、実車評価を重ねながら検証を繰り返す必要がありました。今回の解析技術を適用することで、設計の初期段階から車両特性に応じた最適な商品を検証できるため、試作や実車評価依存のプロセスを減らし、開発工数を従来比で最大約8%削減できる見込みと説明しています。

 今回の技術開発は、同社が推進するデジタル技術活用の枠組み「Cyber Agile Engineering」の一環です。同社ではデジタル空間上での設計・解析の高度化を図り、試作や実験に依存しない開発プロセスの構築を進めています。同取り組みにおいては、過去にも転がり軸受の余寿命予測(2023年)や軸受トルクの計算手法開発(2025年)、AIを活用したハブベアリング設計(2026年)などを発表しており、部品開発全体のデジタル化を段階的に進めています。

 NTNは今後、本技術を活用して車種ごとの振動特性データベースを拡充し、将来的には実車試験を大幅に削減した開発プロセスの実現を目指す方針です。

 電動化に伴いエンジン音が小さくなったことで、それまで目立ちにくかった車両由来の微小な振動が乗り心地を左右する要素として浮かび上がっています。実車で何度も試す従来の手法から、設計初期にデジタル空間で予測する開発へ移る取り組みは、EV時代の車内快適性と開発効率化の両立に向けた試みと言えます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)