今回のニュースのポイント
カナダ政府は、米国による追加関税の影響を受ける国内企業と労働者を支えるため、大規模な財政支援を拡充します。日本貿易振興機構(JETRO)によると、同国政府は8月25日、総額75億カナダドル(約8550億円、JETRO換算)の追加支援策を発表しました。中小企業向け補助金の上限額を3倍に引き上げるほか、事業開発銀行による新たな融資枠の創設、産業多角化基金への増額、雇用維持や労働者の再訓練費用などを盛り込んでいます。政府は過去18カ月で既に約250億カナダドルの関税関連支援を行っており、今回の追加策で負担をさらに積み増す形です。一方、9月8日からは米国製品に対する新たな対抗関税も発動する予定で、国内保護と対抗措置を並行して進めています。
本文
米国による相次ぐ追加関税の波紋が、二国間の通商交渉や関税の応酬にとどまらず、カナダ国内の企業支援や雇用対策という多大な財政コストとして顕在化しています。
JETROの速報によると、カナダ財務省は2026年8月25日、米国の関税措置による国内経済への打撃を緩和するため、総額75億カナダドル(約8550億円)に上る追加支援パッケージを発表しました。同国政府は米国の関税問題に対応するため、過去18カ月間ですでに約250億カナダドルの支援策を実施してきましたが、今回さらに大型の支援策を上乗せすることになります。
今回の追加支援では、特に影響を受ける中小企業や産業現場への具体的な資金供給が強化されています。「地域関税イニシアチブ(RTRI)」には15億カナダドルを追加投入し、影響を受ける中小企業に対する非返済型補助金の上限を、従来の100万カナダドルから300万カナダドルへと3倍に引き上げます。これとは別に、カナダ事業開発銀行(BDC)を通じて5億カナダドルの新たな流動性支援枠を設け、資金繰り需要に対応します。
さらに、産業基盤の維持と能力強化を見据え、直ちに着手可能な設備維持や生産能力強化プロジェクト等を支援する「カナダ・ストロング多角化基金」へ20億カナダドルを追加拠出します。一時的な資金繰り支援にとどまらず、企業の設備維持や生産能力強化に向けた投資を後押しする狙いがあります。
今回の支援策で特徴的なのは、労働市場への直接的な支援にも巨額の資金が割り当てられている点です。関税の影響を受ける産業の雇用維持や、労働者の職業訓練・再訓練などを目的として35億カナダドルが投入されます。関税摩擦の余波が単なる輸出企業の売上減少にとどまらず、雇用維持や労働者の再訓練といった国内雇用政策の領域にまで拡大していることを示しています。
こうした大規模な財政支援の背景には、国内企業が抱える強い危機感があります。JETROが紹介しているカナダ独立企業連盟(CFIB)の調査結果によると、回答したカナダ国内企業の約4割が「米国の関税措置によって自社の輸出に影響が見込まれる」と回答しました。さらに、その影響を見込む企業のうち約8割が「自社の収益減少を予想している」と答えており、実体経済への圧迫感が強まっています。
カナダ政府は、国内の企業や雇用を財政面で下支えする一方、通商政策としては米国への強硬姿勢も維持しています。同国政府は9月8日から、米国製品に対する新たな対抗関税を発動する予定です。
米国の関税引き上げをめぐっては、対象品目の関税率や通商交渉の行方に注目が集まりがちです。しかし、過去18カ月の約250億カナダドルに今回の75億カナダドルを加えた一連の動きが示すように、関税摩擦は国内の資金繰り、設備投資、雇用・労働者の再訓練コストといった直接的な財政負担となって波及しています。国境での関税の掛け合いと同時に、国内の産業・雇用をいかに防衛するかという政策的な対応が各国で本格化しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













