今回のニュースのポイント
国内ゲーム・エンターテインメント大手の最新決算(主に2026年4~6月期)では、主力ゲームやIP(知的財産)の好調を背景に増収増益や黒字転換が相次ぎました。任天堂は「Nintendo Switch 2」の販売が順調に推移し、ソフトウェア販売比率の上昇などを背景に営業利益が前年同期比約2.5倍に拡大しました。カプコンやコナミグループもデジタル販売や主力IPの伸長で大幅な増収増益となり、スクウェア・エニックスHDもゲーム事業が全体を牽引しました。 一方で、前年に大型ヒットタイトルがあった反動を受けた企業もあり、各社の業績は単なる新作の動向だけでなく、既存タイトルのリピート販売、デジタル展開、IPの多面的活用など収益構造の広がりによって違いが表れています。
本文
国内ゲーム・エンターテインメント大手8社の最新決算が出そろいました。主要8社の決算を横断してみると、新作タイトルだけでなく、デジタル販売の強化やカタログタイトルの活用、玩具・映像・アミューズメント等へのIP展開など、収益源を多層化させている各社の姿が浮かびます。
■ ゲーム・エンタメ各社で好業績相次ぐ
今回決算を発表した主要8社の直近業績概要(売上高、営業利益等、前年同期比)は以下の通りです。
・任天堂: 売上高 5,178億1,300万円(前年同期比 9.5%減)、営業利益 1,425億9,600万円(同 150.5%増)
・スクウェア・エニックスHD: 売上高 784億2,300万円(同 32.3%増)、営業利益 170億800万円(同 88.6%増)
・セガサミーHD: 売上高 950億2,800万円(同 17.3%増)、営業利益 23億8,400万円(前年同期は5億1,900万円の赤字)
・バンダイナムコHD: 売上高 3,284億9,400万円(同 9.3%増)、営業利益 692億400万円(同 33.3%増)
・カプコン: 売上高 704億1,000万円(同 54.7%増)、営業利益 410億5,400万円(同 66.9%増)
・コナミグループ: 売上高 1,295億2,400万円(同 33.6%増)、営業利益 452億8,500万円(同 63.3%増)
・KADOKAWA: 売上高 682億5,200万円(同 5.3%増)、営業利益 12億6,400万円(同 45.5%減)
・ガンホー: 売上高 517億5,900万円(前年同期比 2.3%増)、営業利益 63億8,000万円(同 27.1%増)
(※ガンホーは2026年12月期第2四半期累計/中間期決算。その他7社は2027年3月期第1四半期決算。決算期間や事業構成が異なるため、絶対額の順位付けではなく前年同期からの変化を比較)
■ 任天堂、Switch 2販売が順調 営業利益2.5倍
業績の急拡大で存在感を示したのが任天堂です。2027年3月期第1四半期連結決算は、売上高が前年同期比9.5%減の5,178億1,300万円となった一方、営業利益は同150.5%増(約2.5倍)の1,425億9,600万円と大幅な増益となりました。
「Nintendo Switch 2」の販売は順調に推移し、当四半期における本体販売台数は382万台、専用ソフト販売本数は946万本となりました。また、ゲーム専用機のデジタル売上高は1,327億円(前年同期比90.0%増)となり、映画貢献等を含むIP関連収入等も348億円(同107.4%増)へ拡大しました。
利益面では、ソフトウェア販売が堅調に推移して売上高に占める割合が上昇したことに加え、売上原価として計上していた米国IEEPAに基づく関税の還付を受けたことなどが営業利益を押し上げました。
Switch 2の販売が順調に推移するなか、ソフトウェアやデジタル、IP関連収入など複数の収益源が動きました。営業利益は、ソフトウェア販売比率の上昇や米国関税の還付などを背景に前年同期の約2.5倍となりました。
■ カプコン・コナミ、利益成長際立つ
デジタル分野を軸とするカプコンとコナミグループでは、利益が大きく伸びました。
カプコンは売上高が前年同期比54.7%増の704億1,000万円、営業利益が同66.9%増の410億5,400万円を記録。売上高営業利益率は約58%という高水準に達しました。新作『プラグマタ』が全世界で250万本を突破したことに加え、『バイオハザード』シリーズや『デビル メイ クライ』シリーズなどのリピート(旧作・カタログ)タイトルの世界的な販売拡大が収益を力強く支えています。
コナミグループも売上高1,295億2,400万円(前年同期比33.6%増)、営業利益452億8,500万円(同63.3%増)となり、第1四半期として売上・利益の全項目で過去最高を更新しました。主力のデジタルエンタテインメント事業が売上高1,000億8,300万円(同36.5%増)と大きく伸び、「eFootball」や「プロ野球スピリッツA」、「遊戯王」といった継続型の主力コンテンツが業績を支えました。
■ スクエニ、ゲーム事業復調で純利益2.8倍
スクウェア・エニックスHDも本業の復調が見られました。第1四半期連結決算は売上高が前年同期比32.3%増の784億2,300万円、営業利益が同88.6%増の170億800万円、四半期純利益が同175.7%増(約2.8倍)の132億4,400万円となりました。
業績を引っ張ったのは全社売上の6割以上を占めるデジタルエンタテインメント(ゲーム)事業で、セグメント売上高が前年同期比51.8%増、セグメント営業利益が同91.8%増と急伸しました。「ファイナルファンタジーVII リバース」などのマルチプラットフォーム展開に加え、カタログタイトルの積み上げやMMO(多人数参加型オンラインRPG)「ファイナルファンタジーXIV」の拡張パッケージ発表に伴うアクティビティ改善が寄与しています。新作だけでなく、カタログタイトルや継続型タイトルも業績を支えています。
■ バンダイナムコ、幅広いIP展開が全社利益支える
ゲームソフト以外の事業ポートフォリオを持つ企業の強みを示したのがバンダイナムコHDです。同社の第1四半期決算は売上高3,284億9,400万円(前年同期比9.3%増)、営業利益692億400万円(同33.3%増)と堅調な増収増益を確保しました。
その内訳を見ると、デジタル(ゲーム)事業は新作タイトルの端境期などにより売上高が前年同期比15.7%減、セグメント利益が同30.8%減となりました。しかし、ガンプラや「一番くじ」、カード商材などが牽引する「トイホビー事業」が売上高1,927億6,000万円(同31.2%増)、セグメント利益539億4,400万円(同88.8%増)と大幅な伸びを見せ、ゲーム事業の減益を補い、全社利益を押し上げました。
単一のゲーム事業に依存せず、IPを軸に玩具・アミューズメント・映像など幅広いカテゴリーへ展開できる「IP軸戦略」の強みが表れました。
■ セガサミー、前年赤字から黒字転換
セガサミーHDは第1四半期の売上高が前年同期比17.3%増の950億2,800万円となり、営業損益は前年同期の5億1,900万円の赤字から23億8,400万円の黒字へと転換しました。
ゲーム(コンシューマ分野)におけるリピート販売やライセンス収入が順調に推移したことに加え、遊技機(パチスロ)事業において新台や追加販売が大きく貢献し、全社の黒字化を牽引しました。同社は『ペルソナ4 リバイバル』などの大型ゲームタイトルの投入を第3四半期以降に控えており、下期に向けた助走期間としても底堅いスタートを切っています。
■ ガンホー、モバイル成熟市場でも増益を確保
決算期が異なるガンホー・オンライン・エンターテイメントの2026年12月期中間期(1~6月)連結決算は、売上高が前年同期比2.3%増の517億5,900万円、営業利益が同27.1%増の63億8,000万円となりました。
国内モバイルゲーム市場は近年概ね横ばい傾向が続いており、動画コンテンツ等の台頭による「ユーザーの可処分時間の奪い合い」が激化しています。そうした市場環境下においても、主力タイトル『パズル&ドラゴンズ』の各種イベント展開や子会社の海外タイトルの貢献により堅調な利益成長を達成しました。
■ KADOKAWA、大型タイトル反動が示すゲーム産業の変動性
一方で、KADOKAWAの第1四半期決算はゲームビジネス特有の変動性を提示しています。全社売上高は前年同期比5.3%増の682億5,200万円となったものの、営業利益は同45.5%減の12億6,400万円にとどまりました。
主力の出版・IP創出事業が黒字転換を果たした一方、ゲーム事業は売上高が同37.4%減の54億1,800万円、セグメント利益が同58.8%減の13億9,000万円と減少しました。これはフロム・ソフトウェアの『ELDEN RING』大型コンテンツ等が大きく寄与した前年同期の反動によるものです。大型タイトルの発売時期によって、ゲーム事業の業績が大きく変動する面があることも示されています。
■ 収益構造の多様化と業績変動のリアル
今回比較した8社の動向を振り返ると、各社が利益を生み出すアプローチは極めて多様化しています。
・任天堂: 新ハード普及に伴うソフト・デジタル・IP収益の相乗効果
・カプコン・コナミ: デジタル販売比率向上とリピート・継続型タイトルの高収益化
・スクウェア・エニックスHD: 旧作カタログ資産の活用とマルチプラットフォーム展開
・バンダイナムコHD: 玩具・カード等、IPを軸としたメディアミックスの強み
・セガサミーHD: ゲーム・アミューズメント・遊技機を組み合わせたポートフォリオ
・ガンホー: 既存モバイルタイトルの長期運用とユーザー保持
・KADOKAWA: 出版・アニメ等と連携したゲームIPの創出
共通しているのは、一本の新作ゲームの発売と売り切りだけに依存せず、デジタル配信や課金、旧作の長期販売、さらには他メディアへの展開など、収益源を広げる動きです。一方でKADOKAWAの決算が示すように、大型タイトルの発売時期による業績変動がなくなったわけではありません。
■ 好決算の一方で、通期予想は慎重姿勢を維持
第1四半期(あるいは中間期)において好調な滑り出しを見せた企業が多いものの、通期の業績予想に対しては慎重な姿勢を崩していません。
任天堂は通期営業利益予想(3,700億円)を据え置いたほか、カプコン(通期営業利益830億円)、コナミグループ(同1,430億円)、スクウェア・エニックスHD(同490億円)、セガサミーHD(同445億円)も従来予想を維持しています。また、バンダイナムコHDは上期予想の上方修正を行ったものの、通期営業利益予想(1,850億円)については精査が必要として据え置きました。
ゲーム・エンターテインメント業界は、年間最大の商戦期である冬の年末年始商戦や、下期に控える大型タイトルの動向によって業績が大きく左右されます。そのため、第1四半期のスタートダッシュの成功をもって通期の着地を楽観視せず、各社とも足元の動向を見極める構えをとっています。
■ 強さは「一本のヒット」から「IPを育てる力」へ
今回の8社決算からは、日本のゲーム・エンターテインメント産業の力強さが改めて示されました。しかし今回の決算からは、ヒット作の有無だけでは説明できない各社の収益力も見えてきます。
ヒット作を生み出す力に加え、既存タイトルの長期販売やデジタル展開、IPの多面的な活用などを通じて収益源を広げられるかが、各社の今後の成長を見る上で重要になりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部)













