中国・上海の都市景観。世界から中国への直接投資実行額は2022年のピークから2025年までに約45%減少した。一方、在中国の欧米企業を対象とした各種調査では、将来の投資拡大意欲に持ち直しの動きもみられる(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
JETROが9月8日に公表した分析によると、2025年の世界から中国への直接投資実行額(中国国家統計局「国家データ」)は1046億6000万ドルとなり、前年比で10.0%減少しました。過去最高を記録した2022年の1891億3000万ドルから3年連続の2桁減となり、約44.7%減少した計算になります。一方で、現地で事業を展開する外資企業への各種意識調査では、米国企業の57%、ドイツ企業の61%が今後の投資を「拡大する」と回答し、将来の投資意欲に回復の兆しが見られます。対して日本企業の拡大意欲は21.3%と慎重姿勢が目立ちますが、過半数の64.3%は「現状維持」と回答しており、単純な「拡大か撤退か」では捉えにくい実態が浮き彫りとなっています。
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世界から中国への直接投資資金の流入が減少し続ける一方で、現地に拠点を置く外資企業の投資意欲には回復の兆しが見られるという、一見すると矛盾するデータが示されています。日本貿易振興機構(JETRO)が8日に公表した分析レポートにより、実績の「対中投資減」と、将来予測における「欧米企業と日本企業の意識の温度差」という多層的な実態が明らかになりました。
■実績データでは3年連続の2桁減少
まず、実際に動いた資金を示す実績データから確認します。中国国家統計局運営の「国家データ」による2025年の対中直接投資実行額は1046億6000万ドル(前年比10.0%減)でした。ピークだった2022年の1891億3000万ドルから、2023年は1633億ドル、2024年は1162億4000万ドル、2025年は1046億6000万ドルと推移し、3年連続で2桁の減少を記録しました。2022年と比較すると約44.7%縮小した計算になります。2026年1〜5月も前年同期比8.6%減(人民元建て3272億9000万元、中国商務部発表)となっており、資金流入の低迷は続いています。なお、中国の統計では香港からの投資が大きな比率を占めますが、世界各地の企業による香港経由の投資もあるとみられます。JETROは、中国側統計だけでは各国・地域からの対中直接投資の実態把握が難しいと指摘しています。
新規投資案件数においても、2025年の欧州企業による新規直接投資案件は146件(前年比5件減)、米国企業は43件(同5件減)となりました。JETROは、2025年は前年と比べて欧米企業による大型投資案件が相対的に少なく、対中投資により慎重になっている姿勢がうかがえると分析しており、足元の投資案件では慎重な姿勢がみられます。
■リスクを抱えながらも欧米企業の投資意欲は回復傾向
しかし、現地で事業を展開する各国の商工会議所などが実施した最新の企業アンケートからは、異なる景色が浮き彫りになります。
中国米国商会の調査によると、2026年の中国事業への投資を「拡大する」と回答した米国企業は57%に達し、前年調査から4ポイント上昇しました。経営課題として「中国経済の成長鈍化(64%)」や「米中関係の緊張(58%)」といったリスクが指摘されつつも、投資拡大の理由として「中国市場の戦略的重要性の高まり(28%)」や「成長期待(25%)」が挙げられています。
同様に、中国ドイツ商会の調査でも今後2年以内に中国投資を「拡大する」との回答が61%(前年比8ポイント増)となり、中国英国商会の調査でも翌年の中国事業への投資を「拡大する」との回答が35%(同4ポイント増)と上昇しました。ただし、これらの調査は調査主体、時期、設問構造、計画期間がそれぞれ異なるため数値を単純比較することはできませんが、欧米企業の間で将来の事業拡大に向けた意欲が持ち直している傾向がうかがえます。
さらにJETROは、一部の外資企業で見られる取り組みとして「In China, for the world(中国で生産・開発し、世界市場へ展開する)」という戦略的アプローチに着目しています。単に中国国内の販売市場や生産拠点として見るだけではなく、中国の高度なサプライチェーンや技術基盤、EVなどの産業エコシステムを活用し、グローバル市場へ供給する拠点として位置づける動きです。テスラの上海工場からの海外輸出や、欧州自動車大手が中国新興EVメーカーに出資して合弁で世界展開する事例、さらには日産自動車が中国で開発・生産したEVを海外市場へ輸出する計画などが具体例として紹介されています。
■日本企業は「拡大」21.3%の一方で過半数が「現状維持」
欧米企業の投資意欲回復に対し、日本企業の意識は慎重です。JETROが2025年8〜9月に実施した在中国日系企業調査(回答791社)では、今後1〜2年の事業展開について「拡大」と答えた企業は21.3%となり、調査開始以来の最低水準を更新しました。
この数字だけを見ると「日本企業の中国離れ」と捉えられがちですが、実態はより複雑です。回答の最多を占めたのは「現状維持」の64.3%であり、「縮小・第三国への移転・撤退」を合わせた回答は14.4%にとどまっています。日本企業の多くは、急激な撤退を選択しているわけではなく、既存の事業基盤を維持しながら慎重にリスクと需要を見極めている状況と言えます。
なお、中国国家統計局の「国家データ」によると、日本から中国への2025年の直接投資実行額は30億1000万ドルと、前年の21億3000万ドルから41.5%増となりました。ただしJETROは、前年(2024年)の大幅減の反動もあったと指摘しており、この単年の数値だけをもって「日本企業の中国回帰」と判断することはできません。
■開放政策と安全保障規制のあいだで
企業を取り巻く政策環境も複雑です。中国政府は2026年2月に「外商投資奨励産業目録2025年版」を施行して先進製造業などの外資誘致対象を拡大し、6月には外資企業の市場アクセス改善に向けた15項目のアクションプランを発表するなど、投資誘致の姿勢を強めています。一方、2021年から外商投資安全審査弁法が施行されているほか、2025年以降は「信頼できないエンティティー・リスト」への外国企業・団体の掲載が相次ぐなど、安全保障面では規制強化の動きもみられます。
対中直接投資の実行額は3年連続で減少し、2022年のピークから約45%縮小しました。その一方で、欧米企業を中心に将来の投資拡大計画を示す企業の割合は上昇に転じており、日本企業は慎重に現状維持を探る姿勢を強めています。対中ビジネスは「撤退か拡大か」という単純な二元論ではなく、市場リスクと技術・産業基盤の双方を見極めながら、各社がどのような軸足を設定していくのかという、より複雑なフェーズに入っています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













