超伝導型と中性原子型という異なる方式の量子コンピュータを、共通の計算基盤から利用するイメージ。富士通とYaqumoは、方式に依存しない共通基盤の実現を目指し、中性原子型の実機を使った検証を8月から開始した(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
富士通とYaqumoは9日、量子コンピュータのハードウェア方式に依存しない共通計算基盤の実現を目指し、中性原子型量子コンピュータの実機を使った検証を8月から開始したと発表しました。両社は2026年4月から、富士通が開発してきた量子計算基盤「Open Quantum Toolchain」やアーキテクチャ「STAR」を中性原子方式へ適用するための理論検討を進めてきました。今回、理論上の検討から、Yaqumoが開発する実際の中性原子型ハードウェアを用いた実機検証段階へ移行しました。
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量子コンピュータの開発において、ハードウェアの違いを上位のソフトウェア基盤でどう吸収するかという新たな課題に向けた動きが始まりました。富士通とYaqumoは9日、量子コンピュータの方式に依存しない共通計算基盤の実現に向け、中性原子型量子コンピュータの実機を用いた検証を8月から開始したと発表しました。
現在、世界で開発が進む量子コンピュータには、超伝導、中性原子、イオントラップ、光など複数の物理方式が存在します。方式が異なれば、量子ビットを形成する物理構造だけでなく、ハードウェアに伝達する命令体系、制御方法、装置の較正作業、ジョブ管理の手順もそれぞれ異なります。そのため、利用するハードウェアごとに異なる操作系や開発環境に対応しなければならない点が、利用側の課題となっています。
富士通はこれまで主に超伝導型を想定して、量子プログラムを実行環境へ最適化する「Open Quantum Toolchain」や、量子計算に必要な資源を効率化するアーキテクチャ「STAR」の開発を進めてきました。今回の共同研究は、これらの技術をYaqumoが開発するイッテルビウム原子を用いた中性原子型量子コンピュータへ広げるための取り組みです。
両社は2026年4月から理論上の検討を進めてきましたが、8月からはYaqumoの実際のハードウェアに接続し、実機上での検証段階へ入りました。現時点で「共通基盤が完成した」わけではなく、相互接続と技術検証をスタートさせた段階となります。
検証では、Open Quantum Toolchainと中性原子型ハードウェアとの相互接続に向け、プログラム実行命令の変換、ジョブの管理、装置状態の監視・較正などを中性原子型の制御系に対応させます。ここでいう命令の変換(翻訳)とは、方式によって異なる装置への制御命令を正しく置き換え、ジョブ管理や装置状態の監視・較正などを中性原子型の制御系に対応させる処理を指します。目指しているのは、利用者がハードウェアごとの違いを意識することなく、同一の操作体系から複数の方式を扱える共通基盤の実現です。
あわせて、富士通の「STAR」アーキテクチャが中性原子方式においても有効に機能するかの検証も行われます。STARは任意角度の位相回転処理等に着目し、より少ない量子ビット数で実用的な量子計算を実現できる可能性を持つ技術です。富士通は中性原子型について「量子ビット間の全結合性を実現しやすい」としており、今回、物理特性が異なる中性原子型の実機上で、効率的な量子計算やエラー訂正に寄与できるかを検証します。
実機を提供するYaqumoは、中性原子型量子コンピュータについて、2027年度をめどに量子エラー訂正機能を備えた数百量子ビット超の実機開発を目指しています。両社は今回の共同研究を通じ、富士通のソフトウェア・アーキテクチャ技術と中性原子型の実機を組み合わせ、その適合性や技術的可能性を検証していきます。
どのハードウェア方式が性能を伸ばすかという物理層の進展に加え、多様な方式をどこまで共通した利用環境から扱えるようにするかも、量子コンピュータの実用化に向けた重要な技術課題の一つとなります。中性原子型の実機を用いた検証により、共通化に向けた具体的な技術蓄積がどこまで進むかが注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













