カナダ1.5億加ドル、ドイツ1億ユーロをAI開発へ LawZero「Scientist AI」、360人雇用計画

2026年09月17日 12:11

カナダとドイツ

カナダとドイツの国旗。両国政府は非営利AI研究機関LawZeroに対し、カナダが最大1億5,000万カナダドル、ドイツが1億ユーロを投資する計画を発表した。カナダでは360人のフルタイム雇用創出も計画する(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

カナダ政府とドイツ政府は9月16日、カナダ・モントリオール拠点の非営利AI研究機関LawZeroに対し、それぞれ1億5,000万カナダドル、1億ユーロを投資する計画を発表しました。同機関が開発を目指す「Scientist AI」は、自律的に目標を追求する現在のフロンティアAIとは異なり、推論過程の透明性と証拠に基づく出力を重視する設計思想を掲げます。本プロジェクトによりカナダ国内で専用のソブリン計算インフラを構築し360人のフルタイム雇用を創出するほか、両国でAI主権と安全な技術基盤の確保を目指します。

本文
 カナダ政府とドイツ政府は2026年9月16日、AI(人工知能)の安全な技術基盤および国家・地域によるAI主権の確立に向け、カナダ・モントリオールを本拠とする非営利AI研究機関「LawZero(ローゼロ)」へ大型投資を行う計画を発表しました。

 今回の公表における資金規模の柱は、両国政府による支援計画です。カナダ政府は「戦略的対応基金(Strategic Response Fund)」を通じて、LawZeroに対し最大1億5,000万カナダドルを投資する計画を示しました。研究・エンジニアリング人材の確保やプロジェクトに必要な計算能力の強化に充てられます。一方、ドイツ政府も1億ユーロを投資する計画を公表しており、LawZeroが新設するドイツ拠点での研究開発活動を支援します。なお、両国政府の公表はいずれも資金を投じようとする計画の表明段階であり、特にドイツ側の支援実行にあたっては欧州委員会への事前通知手続きなどが前提条件となっています。

 本プロジェクトの産業・技術上の最大の特徴は、開発対象となる「Scientist AI」の設計思想にあります。発表資料によると、同技術は現在のフロンティアAIのように、自律的に行動したり目標を追求したりするよう設計されたシステムとは異なるとされています。LawZeroは、推論過程の透明性を重視し、AI自身の目標に左右されない、信頼性のある証拠に基づく出力を目指す手法としてScientist AIの開発を進めています。

 開発は段階的に進められる計画です。Scientist AIは完成済みのフロンティアAIモデルではなく、まずは既存のAIシステムの評価・監督を支援するツールや科学研究支援から着手する一方、設計段階から安全性を組み込む「safe-by-design」のフロンティアモデルに向けた新たな手法の開発を進める計画です。

 さらに経済的な観点からは、AI主権(ソブリンAI)の確保と国内産業への波及効果が注目されます。プロジェクトでは研究、高度人材、計算資源を国内に確保し、外国企業が管理するAIシステムへの依存低減を図ります。カナダ国内ではHypertecや5Cといった地元事業者と連携し、専用のソブリン計算インフラを構築する計画です。また、この取り組みを通じてカナダ国内で360人のフルタイム雇用を創出する見込みです。

 両国は2026年2月にAIに関する共同意向宣言に署名し「ソブリン・テクノロジー・アライアンス」を立ち上げており、その際にもLawZeroを含むsafe-by-design分野での協力が協議されていました。今回の投資計画は、その連携を具体化させるものとなります。大規模言語モデルなどの能力向上や自律型エージェントの開発競争が激化するなか、自律的に目標を追求するAIとは異なり、透明な推論と証拠に基づく出力を目指す別のアプローチがどこまで具体化するか、そしてカナダと欧州が独立した計算基盤と人材を強固に構築できるかが今後の注視点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)