米NSF、次世代半導体を研究から製造へ AI活用含む5分野で移行支援

2026年09月18日 07:40

シリコンウェハーイメージ

次世代半導体の研究・製造現場を表すイメージ。米国立科学財団(NSF)は、低次元材料を含む次世代半導体技術について、材料開発から製造プロセス、回路・フルチップ実証、製造移行までを支援する「NSF ELEGANT」を発表した(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

米国立科学財団(NSF)は9月17日、次世代半導体技術を研究段階から製造および産業利用へ移行させる新たな取り組み「NSF ELEGANT」を発表し、関連機関の募集に向けたOTASOを公開しました。対象は「低次元(low-dimensional)材料」と呼ばれる次世代半導体材料やデバイスです。材料開発から製造プロセス、回路・チップ実証、製造成熟度の向上、AIを活用した開発加速までを包括的に支援し、研究成果と半導体製造現場を結ぶ仕組みの構築を目指します。

本文

 米国立科学財団(NSF)は現地時間9月17日、次世代半導体技術の研究成果を製造および産業利用へ円滑に移行させるための新たな取り組み「NSF ELEGANT」を発表しました。同時に、エコシステムコーディネーターや専門実施チームを募集するためのOTASO(Other Transaction Agreement Solutions Offering)を公開し、制度上の手続きを開始しています。

 本取り組みの正式名称は「NSF Ecosystem for Low-dimensional Electronics: Growth, Assembly, Nanoelectronics, and Translation」です。対象となる「低次元(low-dimensional)材料」とは、材料の物理的・電子的な次元性に由来する専門用語であり、性能が低いという意味ではありません(編集部注)。NSFはこうした次世代半導体技術について、研究室での実証成果を米国の半導体メーカーが採用を判断できる水準の製造技術へ高めることを主な狙いとしています。

■材料からフルチップまで5つの注力分野

 NSFは、次世代半導体技術の移行に向けて大きく5つの分野を支援対象として設定しています。

 具体的には、①製造可能な材料プラットフォームの確立、②製造プロセスおよびPDK(プロセス・デザイン・キット)の開発、③デバイス・回路・フルチップによる動作実証、④製造成熟度の向上と製造工程への移行支援、⑤AIを活用した技術開発の加速、という5分野です。

 単に新材料の研究開発にとどまらず、実際の回路やフルチップでの実証、さらには製造現場への移行までを一貫して射程に入れている点が特徴です。また、AI技術についても完成した半導体の用途としてだけでなく、半導体技術そのものの開発スピードを向上させる手段として組み込まれています。

■産業界による検証で技術リスクを引き下げ

 もう一つの大きな特徴は、開発過程において産業パートナー(industry partners)による検証プロセスがあらかじめ組み込まれている点です。

 NSFは産業界の評価を受けられる仕組みを導入することで、先端マイクロエレクトロニクス製造技術のリスクを引き下げ、メーカー側が自社の製造ラインへ採用するかどうかの判断を根拠に基づいて行える段階まで進めることを目的としています。これは現時点で特定の技術の量産化や商用化を決定するものではなく、製造移行に向けた技術的リスクを低減させるアプローチです。

■AI・HPC・先端通信への活用を想定

 NSFは本プログラムで開発を進める次世代半導体技術の想定能力や用途として、人工知能(AI)、高性能コンピューティング(HPC)、先端通信などを挙げています。単一の用途に限定せず、幅広い次世代エレクトロニクス基盤の強化を狙ったものです。

 なお、NSFの9月17日の発表本文では、プログラム全体の予算額や採択件数、具体的な量産開始時期などは示していません。したがって現段階では政策規模を金額のみで評価するのではなく、NSFが研究成果から製造への移行を支援する取り組みを打ち出し、募集手続きに着手した事実が焦点となります。

 半導体分野では、優れた新材料や素子の研究成果が得られても、それを安定して製造できるプロセスや設計環境が整わなければ実際の導入には結びつきません。NSF ELEGANTは、材料から設計、製造移行までを一体的に扱う枠組みを提供します。今後はOTASOを通じた募集・選定の進展に伴い、具体的な実施チームや産業パートナー、支援体制がどのように示されるかが確認点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)