EU加盟国の代表で構成するAI Boardは9月17日、第9回会合を開催。AI Act(人工知能法)の市場監視や適合性評価に加え、フロンティアAIの新たな能力や最近のインシデント、サイバー能力の評価・テスト基盤などを議論した。(画像は資料写真)
今回のニュースのポイント
EU加盟国の代表で構成するAI Boardは9月17日、第9回会合を開催しました。協議の焦点はAI Act(人工知能法)のルール策定から、実際の市場監視や適合性評価、執行に関する具体策へと移っています。8月2日に透明性ルールが適用開始されたことを受け、会合では行動規範(Code of Practice)やガイドラインの運用状況、市場監視、フロンティアAIの新たな能力と最近のインシデント情報、サイバー能力の評価・テスト基盤が議論されました。日本でもAI法が全面施行され、体制強化が進む中、EUにおける運用実務の積み上げは比較材料となります。
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欧州連合(EU)加盟国の代表で構成されるAI Boardは9月17日、通算9回目となる会合を開催しました。アイルランドのEU理事会議長国の下で開催された今回の協議では、欧州委員会の執行活動・優先事項やAI Act(人工知能法)の実施状況、市場監視、市場投入前の適合性評価など、成立したルールを実際に運用する段階の課題が幅広く議論されました。
今回の会合における重要な前提となるのが、制度の段階的な運用開始です。EUでは2026年8月2日にAI Actの透明性ルール(第50条)が適用開始となっており、今回のAI Boardでは行動規範(Code of Practice)やガイドラインなど、透明性ルールを支える措置についてアップデートが共有されました。法律の成立から具体的な義務の適用、そして現場での運用指示へと実務プロセスが進んでいます。
あわせて行われたのが、実効性を担保するための行政体制と監視枠組みの議論です。会合では、加盟国の各市場監視当局間における連携や、市場投入前における適合性評価(conformity assessment)のガバナンス体制が議題となりました。さらに、各国の市場監視当局から欧州データ保護監督官(EDPS)への出向制度を導入する可能性についても議論されました。
さらに、最先端の大規模AIモデル(フロンティアAI)をめぐる動向も主要テーマとなりました。欧州委員会はAI Boardに対し、最先端モデルの新たな能力(new capabilities)に関する分析を報告するとともに、「最近のAIインシデント(recent AI incidents)」に関する情報共有を行いました。ただし、特定の企業名やモデル名、被害規模などの詳細は公開されておらず、当局間で技術変化や潜在リスクに関する最新情報を継続的に把握・評価する実務が始まった形です。
また、サイバーセキュリティーとAIに関する行動計画についても報告があり、フロンティアAIのサイバー能力をめぐる評価・テストのためのインフラ開発などが取り上げられました。AIの能力そのものだけでなく、その能力を評価・検証するための基盤も制度運用上の論点となっています。
こうした「法制定後の運用実務」は、日本における政策展開を見る上でも参考となります。日本では、2025年6月に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」が公布され、同年9月1日に全面施行されました。内閣府は同法について、AIのイノベーションを促進しつつ、リスクに対応するための制度と位置付けています。
政府は2026年7月、「信頼できるAI」を掲げるAI基本計画(日本AX)を提示し、人工知能戦略本部のもとでAI法を含む関連制度の能動的な見直しや、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)の機能・体制強化を進める方針を定めました。8月には政府からAIの評価機能や制御機能を一層強化する方針が示され、AISIも7月に「AIセーフティに関する評価観点ガイド」を更新しています。
EUのAI Actと日本のAI法は規制体系や事業者への法的義務の置き方が異なっており、制度の単純な比較や同一視は適切ではありません。一方、日本政府もAIの評価機能や制御機能の強化、AISIの機能・体制強化、AI法を含む関連制度の能動的な見直しを掲げています。EUで市場監視や適合性評価、フロンティアAIの能力・インシデント把握などの実務がどのように進むかは、日本の制度運用との違いを考える上でも比較材料となります。
なお、今回のAI Boardにはモルドバが初めてオブザーバー参加しており、次回第10回会合は11月18日に予定されています。EUで今後、市場監視や適合性評価、フロンティアAIの安全性検証などの運用実務がどのように具体化されるかは、日本のAI制度運用との違いを考える上でも重要な確認点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













