EUの対中貿易赤字「1日10億ユーロ」 年間実績3598億ユーロ、再均衡求める

2026年09月17日 08:16

EU対中貿易

EUと中国の貿易を表すイメージ。EUの2025年の対中財貿易赤字は3,598億ユーロとなり、フォンデアライエン欧州委員長は一般教書演説で「現在、1日当たり10億ユーロ」規模として、経済関係の再均衡を求めた(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は9月16日の一般教書演説で、EUと中国の経済関係について、EU側の貿易赤字が「現在、1日当たり10億ユーロ」規模に上っていると説明し、両者の経済関係について、より大きな「再均衡(rebalancing)」が必要との認識を示しました。欧州連合統計局(Eurostat)の2025年実績データによると、EUの対中財貿易赤字は3,598億ユーロであり、365日で単純に除した1日当たりの平均赤字額は約9.9億ユーロとなり、演説で示された「1日10億ユーロ」とほぼ同水準になります。一方で、EUはサービス貿易では2025年に213億ユーロの黒字を計上しており、貿易赤字は「EU全体の経済的損失」を意味するものではありません。演説では対外的な再均衡に加え、単一市場改革など域内競争力の強化も示されました。

本文

 欧州委員会のフォンデアライエン委員長は2026年9月16日に行った一般教書演説において、欧州連合(EU)と中国との貿易関係に触れ、EU側の貿易赤字が「現在、1日当たり10億ユーロ」の規模に達していると説明しました。同氏はこの数値動向を背景に、中国との関係について対話を重ね「再均衡(rebalancing)させるため、利用可能なあらゆる手段を使う」と述べ、経済構造の再均衡を図っていく必要性を強調しました。

 この「1日当たり10億ユーロ」という演説上の表現について、公的統計機関である欧州連合統計局(Eurostat)が公表している2025年の貿易実績データで確認すると、EU(27カ国)から中国への財輸出額は1,996億ユーロ、中国からの財輸入額は5,594億ユーロとなり、年間での対中財貿易赤字は3,598億ユーロを記録していました。これを単純に365日で割ると1日当たり約9.9億ユーロ(約9.86億ユーロ)となり、フォンデアライエン氏が演説で示した規模感は、2025年の財貿易実績を1日当たりに換算した水準とほぼ一致します。

 ただし、貿易赤字は「一定期間内に域外から輸入した財の金額が、輸出した金額を上回っている状態」を示すものであり、EU全体や加盟国政府が直接的に資金を失っていることを意味するわけではありません。企業の事業損益や政府の財政赤字とは異なる概念です。さらに欧州委員会の通商資料によると、EUは中国とのサービス貿易において2025年に213億ユーロの黒字を計上しています。「1日10億ユーロ」は財貿易の差額に基づくものであり、すべての経済取引を合算した損益を示すものではない点に留意が必要です。

 演説でフォンデアライエン氏が用いた表現は、中国との経済関係を「再均衡(rebalancing)」させるというものです。同氏は中国との対話を続けながら、関係の再均衡に向けて利用可能な手段を使う考えを示しました。あわせて同氏は、重要原材料において多くの品目で中国への依存度が80%を超え、一部のレアアースでは90%に達している実態を挙げ、特定の供給網への過度な依存を低減させる課題にも言及しました。

 今回の一般教書演説では、こうした対外関係への言及と並行して、EU自身の域内環境を改善する「競争力強化策」も提示されました。同じ演説では、2027年末までの単一市場改革や、12本のオムニバス提案による年間約170億ユーロ規模の行政負担削減、許認可手続きの迅速化、ディープテック分野への投資環境整備などが盛り込まれています。

 「1日10億ユーロ」という数値は、EUと中国の間における財の取引構造を示す指標の一つです。今回の演説では、中国との経済関係の再均衡とともに、EU域内の競争力を高める政策も打ち出されました。今後は対中対話の具体的な進展に加え、域内改革がどのように制度化されるかが確認点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)