今回のニュースのポイント
日本銀行が9月30日に公表した「国債市場の流動性指標」では、現物国債市場でディーラー対顧客取引が高水準で推移する一方、長期国債先物市場では注文量でみた市場の厚みが過去と比べて低い状態が続いている状況が示されました。現物国債の顧客取引では、特に「外国人」による買入れ額が大きく増加しています。一方で、先物市場の「ベスト・アスク枚数」は2018年前後と比べて低水準にあり、価格インパクトも高めで推移しています。取引量の拡大と市場構造の厚みが必ずしも同一方向に動かない実態が、日銀の提
示する各種指標から浮かび上がります。
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日本銀行金融市場局は9月30日、日本の国債市場に関する「国債市場の流動性指標」を公表しました。今回の公表資料では、現物国債市場におけるディーラー対顧客取引が拡大傾向にある一方で、長期国債先物市場では注文板の「厚み」を示す指標が過去の比較で低い水準にとどまるなど、市場の側面によって異なる動向が示されています。
■現物国債の顧客取引、近年大きく増加
現物国債市場におけるディーラー対顧客取引の取引高(顧客の国債グロス買入れ額)を見ると、2020年代に入ってから取引高が高水準で推移しています。
特に顧客別の内訳では「外国人」の取引拡大が顕著です。2010年代後半から2020年代初頭にかけての推移と比べ、2022年ごろから外国人による買入れ額が大きく増加しており、足元では他の顧客区分を上回る水準となっています。なお、このデータは都市銀行、地域金融機関、所定の投資家、外国人を対象としたグロス(総額)ベースでの買入れ額を示したものであり、ネット購入額を示すものではありません。
■売買活発でも先物市場の「厚み」は過去を下回る
現物市場で顧客取引が高水準となる一方、長期国債先物市場の流動性指標では対照的な状況が確認できます。
日銀が市場の厚み(depth)の指標として掲載している「ベスト・アスク枚数」(最良売気配の注文枚数)は、1分ごとの中央値をもとに算出されています。日銀の図表では、ベスト・アスク枚数が少ない方向を「流動性が低い」としています。2017年から2018年ごろにかけては100枚を大きく上回り、時には200〜300枚を超える水準に達する局面もありました。しかし、2022年以降は低い状態が続いており、直近の2026年8月末時点でも数十枚程度の水準にとどまっています。
現物市場で顧客の取引高が増加しているからといって、先物市場の注文板に十分な注文量が常時並んでいるわけではないことを示しています。
■価格インパクトも2012年平均を上回る水準
先物市場におけるもう一つの指標である「価格インパクト」も高めの水準にあります。日銀資料では価格インパクトを5分ごとに算出して平均し、2012年の平均値を100として指数化しています。
日銀の図表では、価格インパクトが高い方向を「流動性が低い」としています。2026年8月末時点でも、価格インパクトは2012年平均の100を大きく上回る水準にあります。
■現物国債でもスプレッド拡大の局面
現物国債市場における値幅の狭さ(tightness)を示す指標でも、一部で変動が見られます。
ディーラー対顧客取引における5年債、10年債、20年債の「ビッド・アスク・スプレッド」(売り気配と買い気配の差)を見ると、2026年に入ってから各年限でスプレッドが一時的に拡大する局面が確認できます。特に20年債では、2026年夏にかけてスプレッドが広がる動きが確認できます。日銀の資料では、スプレッドの拡大は流動性が低下している方向を示します。
■多角的な観点から市場構造を測定
日銀は国債市場の流動性について、取引量(volume)、値幅の狭さ(tightness)、市場の厚み(depth)、弾力性(resiliency)、特定銘柄の希少性(scarcity)など、複数の側面から指標を公表しています。
今回の資料では、現物国債の顧客取引高が大きく増えている一方で、板の厚みや価格インパクト、気配値のスプレッドといった側面からは異なる動きが示されました。日銀が公表する複数の流動性指標からは、取引量だけでは捉えられない国債市場の異なる側面が確認できます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













