豪送電網、11.85億豪ドルの安定化設備計画 AERが収入回収3.86億豪ドルを決定

2026年10月01日 11:07

変電所設備イメージ

豪NSW州では、石炭火力の退役と再生可能エネルギーの拡大に対応するため、同期調相機を活用した送電網の安定化設備整備が進む。AERはTransgridが2026~31年に消費者から回収できる収入額を3億8560万豪ドルとする最終決定を公表した(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

オーストラリアのエネルギー規制当局(AER)は9月30日、主要送電事業者Transgridがニューサウスウェールズ(NSW)州で進める送電網安定化事業「System Strength Project」について、2026~31年の規制期間に回収できる収入額を名目額で3億8560万豪ドルとする最終決定を公表しました。同事業は石炭火力発電所の退役と再生可能エネルギーの急拡大に伴う系統強度の低下に対応するもので、Transgridは総額11億8500万豪ドルの設備投資計画を提示しています。AERは今回、2026~31年にTransgridがNSW州の電力消費者から回収できる収入額を確定しました。

本文
 オーストラリアのエネルギー規制機関であるAustralian Energy Regulator(AER)は9月30日、送電大手Transgridがニューサウスウェールズ(NSW)州で推進する「System Strength Project」に関し、2026年10月から2031年9月までの規制期間にNSW州の電力消費者から回収できる収入額を名目額で3億8560万豪ドル(約375億円)に確定する最終決定を発表しました。

 本プロジェクトは、NSW州のエネルギー相が優先ネットワークインフラ事業(Priority Network Infrastructure Project)としてTransgridに実施を指示した送電網安定化事業です。再生可能エネルギーの急速な導入が進む同州において、大規模な石炭火力発電所の閉鎖予定に伴う「系統強度(System Strength)」の低下を抑え、電力供給の信頼性を維持することを目的としています。

 事業規模を巡っては、Transgridが総額11億8500万豪ドル(2026年9月価格)の設備投資計画(契約関連の競争部分9億1810万豪ドル、非競争部分2億6150万豪ドル等)を提示し、これに伴う回収収入額として4億80万豪ドル(名目額)をAERに提案していました。AERは審査を経て、特定リスク事象に関する事業側の暫定引当額が適切な競争プロセスの結果と認められないことなどを理由に減額し、提案額から1520万豪ドル(約3.8%)減となる3億8560万豪ドルを適正な回収収入額として最終決定しました。なお、AERの役割は事業者が回収する費用の妥当性を審査することであり、11億8500万豪ドルの設備投資計画そのものを直接「承認」したり、公的補助金を交付したりするものではありません。

 具体的な設備整備では、Newcastle、Kemps Creek、Armidale、Wellington、Darlington Pointの州内5拠点において、同期調相機10基の導入が進められています。NewcastleとKemps Creekでは、同期調相機の設置に向けた関連工事がすでに始まっており、機器の調達や現地工事を含めて各拠点で12~14カ月程度の施工期間が見込まれています。Transgridはこれらの設備について、2029年2月までの順次稼働を目指して計画を推進しています。

 背景には、オーストラリアにおける急激なエネルギー転換があります。石炭火力発電所の退役が見込まれる一方、太陽光や風力などインバーター経由で送電網に接続する電源が拡大しています。同期発電機を備えた大型火力の縮小に伴い、送電網の安定運用に必要な系統強度などの確保が課題となっており、発電側の再エネ投資のみならず、送電網側の補強投資の必要性が高まっています。

 今回のAER最終決定により、2026~31年にTransgridがNSW州の電力消費者から回収できる収入額が確定しました。現地では同期調相機の設置に向けた関連工事もすでに始まっており、石炭火力の退役と再生可能エネルギー拡大に対応する送電網側の設備整備が進んでいます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)