今回のニュースのポイント
住友電装とエクサウィザーズは、製造現場において複数のAIエージェントを連携させる「フィジカルAI」技術の開発を2026年8月に開始したと発表しました。本取り組みでは、生産ラインを監視する「監査AI」、現場リーダーに対応を促す「介入AI」、熟練者との対話から知識を蓄積する「レビューAI」などを組み合わせ、生産ラインの異常予兆検知や暗黙知の学習を目指す仕組みを構築します。両社は2026年度中に海外拠点での実証実験を行い、2027年度のグローバル全面展開を目指す計画です。製造現場で熟練者の判断や知識をAIに取り込む動きとしては、日立製作所が化学プラントの運転支援向けにシステムを年内販売する計画を示しており、アプローチの異なる複数の取り組みが動き出しています。
本文
自動車用ワイヤーハーネス大手の住友電装株式会社と、AIプロダクトの開発を手がける株式会社エクサウィザーズは、製造現場において複数のAIエージェントを相互に連携させる「フィジカルAI」を活用したシステム構築を2026年8月より開始しました。本取り組みでは、製造現場で役割の異なる複数のAIエージェントを連携させ、現場の監査や対応支援、熟練者の知識の学習・蓄積につなげる仕組みの構築を進めます。
今回開発されるシステムの最大の特徴は、役割の異なる複数のAIエージェントが連携して動作する構造にあります。対象となる製造現場では、「監査AI」が生産ラインのカメラ映像や設備データから、生産ペースの低下や異常の予兆などをリアルタイムで検知する仕組みを構築します。次に、その監査結果を受けた「介入AI」が、現場リーダーなどに必要な対応を促します。さらに「レビューAI」は、熟練者や現場リーダーとの対話を通じて、現場に存在する暗黙知やノウハウを学び、蓄積していきます。
現場を見る「監査AI」、人に対応を促す「介入AI」、熟練者やリーダーとの対話から知識を学び蓄積する「レビューAI」など、役割の異なるAIエージェントを連携させる点が今回の特徴です。ただし、本取り組みは現在、システム構築および実証の段階にあります。工場の自律化や異常防止が完全に達成されたわけではなく、現実の製造プロセスにおける実効性を検証するフェーズに位置付けられています。両社は、今回開発するAIエージェント群について2026年度中に海外拠点での実証を行い、2027年度のグローバル全面展開を目指す計画です。
製造現場のデータや熟練者の知識をAIへ取り込む取り組みとしては、株式会社日立製作所の事例も挙げられます。日立は2026年7月、化学品などの製造プラントを対象に、熟練オペレーターの技能を取り込んだフィジカルAIによる「最適運転ガイダンスシステム」を2026年内に販売開始すると発表しています。同システムは、原料投入等に伴って複雑に変化する設備内部の状態を可視化・予測し、温度や圧力、流量などの最適な操作指示を現場のオペレーターへ提示する仕組みです。
両者の取り組みは対象工程や技術体系が異なります。日立のシステムが化学プラントを対象に設備状態を予測し、熟練オペレーターの運転判断を直接支援するアプローチであるのに対し、住友電装とエクサウィザーズの取り組みは、監査・介入・レビューという役割の異なる複数のAIエージェントを組み合わせ、製造現場の判断サイクル全体を支援する構造をとっています。両社が個別に進めるこれらの取り組みは、共通してオフィス空間における文章作成等の汎用的な生成AI活用にとどまらず、現実世界の製造データや人間の熟練ノウハウをAIと組み合わせようとする試みとして位置付けられます。
時間軸の観点では、日立が2026年内の製品販売を予定している一方、住友電装とエクサウィザーズは2026年度中の海外実証を予定し、2027年度のグローバル全面展開を見据えています。製造業におけるフィジカルAIの活用において、商用製品としての販売や実際の工場における海外実証へと具体化する事例が出てきています。
製造現場で蓄積されてきた熟練者の判断や知識をどのような形によってAIへ取り込み、現場へと戻していくのか。日立がプラント運転支援システムの年内販売開始を予定する一方、住友電装とエクサウィザーズは監査、介入、熟練者の暗黙知を学ぶ複数のAIエージェントを構築し、海外実証へ進みます。それぞれの仕組みが実際の製造現場でどのような実効性を示すかが、今後の確認点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













