DayOneとSembcorp、アジアのデータセンター電力確保で協力へ 開発初期から電源を一体設計

2026年10月30日 12:58

変電所設備イメージ

変電所の電力設備。DayOneとSembcorpは、アジアのデータセンター開発で電源設備や電力調達を初期段階から組み込む協力について、覚書を締結した(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

データセンター開発・運営企業のDayOneとシンガポールのSembcorp Industries傘下Sembcorp Utilitiesは2026年10月29日、アジアのデータセンター向け電力・エネルギーソリューションの共同検討に関する覚書(MOU)を締結しました。施設の開発初期段階から電源設備や電力調達を一体で設計する「BYOP」構想を掲げる一方、個別案件の投資決定や新規の電力供給契約は含まない検討段階です。

本文
 データセンター開発・運営のデイワン(DayOne Data Centers)と、シンガポールSembcorp Industries傘下のSembcorp Utilitiesは2026年10月29日、アジアのデータセンター向け電力・エネルギーソリューションを共同検討する覚書(MOU)を締結したと発表しました。施設の開発初期から電源や電力調達を一体で組み込むことを目指す枠組みです。今回の発表は共同検討の開始であり、具体的な施設建設や電力供給が決定したものではありません。

 今回の協力構想でデイワンが掲げるのが「Bring Your Own Power(BYOP)」です。これはデータセンターの施設計画と並行して必要な電力供給手段を開発初期から一体的に確保する考え方を指します。電力系統への接続制約が厳しい地域では、建屋を整備できても送配電網の容量不足で稼働が遅れるリスクがあります。両社は電源設備や燃料供給、再生可能エネルギー調達を組み合わせ、稼働までの時間短縮を目指します。なお、BYOPは系統電力からの完全独立を意味するものではありません。

 覚書で共同検討の対象とする領域は、現地電源設備、発電、再生可能エネルギーの調達、燃料供給・貯蔵、運用・保守などです。データセンターの電力需要に対し、単一の供給網に依存せず複数のエネルギー機能を組み合わせる構想です。ただし、どの国や施設でどの技術を採用するか、設備投資額がいくらになるかなど、個別案件の条件は発表されていません。

 両社の既存の協力実績として、シンガポールの「SG1」データセンター向け電力購入契約があります。また、DayOneは2026年6月、マレーシアで太陽光発電約1.5GWp、蓄電池約2.2GWhに関連する供給契約を発表しています。これらは今回のMOUによって新たに締結された契約ではありません。マレーシアの数値も設備の完成・稼働実績を示すものではなく、今回の覚書は既存の電力確保策を背景に、アジアでの協力可能性を検討するものです。

 日本市場との接点について、デイワンは会社概要で事業展開地域としてシンガポールやマレーシアとともに東京と九州を挙げています。ただし、今回のMOUが東京や九州のデータセンターに適用されるとは発表されていません。日本国内での発電設備建設や電力供給契約、Sembcorpによる投資が決定した事実はありません。

 AI向けデータセンターでは、計算設備の増強に伴う電力確保が重要になります。今回の協力構想は、建屋建設後に電力供給を待つのではなく、開発初期から電源と施設を同期させて計画するものです。もっとも、共同検討によって開発期間がどれほど短縮されるか、電力コストがどれだけ下がるかといった定量的な効果は示されていません。

 デイワンとSembcorpのMOUは、AIデータセンター開発において電力確保を施設建設と切り離さずに計画する方向性を示しています。一方、現段階で合意したのは共同検討の枠組みであり、個別の供給契約や投資計画が確定したわけではありません。計算設備だけでなく、電力の供給方法や確保時期が開発の成否を握る中、計画と実績の境界を見極める必要があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)