車のIT化に勝機 ソニーの新たな成長の柱は「車の目」

2014年08月27日 10:55

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ソニーに対する市場の評価が変わりつつある。8月15日の株価は5日続伸となり、一時は1883円50銭まで上昇。2014年4~6月期の好決算発表で急伸した1日の直近高値に迫った。

 ソニー<6758>に対する市場の評価が変わりつつある。8月15日の株価は5日続伸となり、一時は1883円50銭まで上昇。2014年4~6月期の好決算発表で急伸した1日の直近高値に迫った。株価は7月末を6%上回っており、同期間に下落しているパナソニック<6752>やシャープ<6753>と対照的だ。

 リストラ途上のソニーだが、買い材料が相次いでいる。PS4の販売台数が1000万台を突破したとの13日の発表も材料視された。ゲーム事業は4~6月期に営業黒字に回復したが、PS4の好調で収益期待が一段と高まった。さらに15日には自動車のカメラ用センサーへの参入が伝わり、株価を押し上げた。
 
 ソニーが開発したのは光の感度を高めた車載カメラ用センサーだ。現在の一般的な車載用センサーと比べて感度が約10倍で、暗い場所の物を認識しやすい。月明かりでも周囲の風景をカラーで表示し、運転者は目で見るよりも鮮明に道路上の障害物を確認できる。半導体子会社の熊本工場で15年後半から量産し、車載機器メーカーに販売する。

 25年には世界でスマートカーの年間生産が1億台となる見通し。これまで自動車のIT(情報技術)化はカーナビゲーションシステムでの情報収集などにとどまっていたがスマートカーは重要機能である安全確保にも電子機器をフル活用する。自動車メーカーだけでは開発が難しく、電機各社の商機が広がっている。

 スマートカーには幅広い企業が取り組む。画像センサーの搭載数が増え、車載機器のコンピューターの処理能力を上げる電子部品の需要も拡大する。TDK<6762>は誤作動を防いで効率を高める電子部品の月産能力を現状の2倍に当たる4000万個に増やす。アルプス電気<6770>は速度メーターや地図を前方のフロントガラス越しに見えるように表示する特殊なディスプレーを今秋から量産。京セラ<6971>は自動車関連製品で16年度に、13年度の倍となる3000億円の売上高を目指す。 

 03年、出井氏がCEOだった時、ソニーの業績が想定を下回っただけで市場全体が大きく値を下げた。いわゆる「ソニーショック」だ。しかし、今年5月に14年度の業績予想で3度目の下方修正を行った際には、翌日の株価はわずかに下落しただけだ。投資家にとってソニーの業績低迷、事業方針の迷走は今や見慣れた風景となってしまった。今度のソニーの挑戦は果たして本物か、投資家はまだ疑心暗鬼だ。(編集担当:久保田雄城)