東芝は22日、1カ月前に発売を発表したメガネ型ウェアラブル端末の開発と発売を中止すると発表した。経営環境が悪化する中での業務仕分けで「不採算部門」の判定を受けたためで、東芝では「『新生東芝アクションプラン』における経営施策である『事業ポートフォリオ及び事業運営体制の見直し』の一環として決定したもの」で、「すぐに安定した収益が得られる分野ではないと判断された」としている。短期間での「発売PR」と「撤回」というドタバタ自体が東芝の苦境を表している。
発売中止となったのは、先月13日に東京ビッグサイトで開催された「ウェアラブルEXPO」で発表したばかりのメガネ型ウェアラブル端末「Wearvue(ウェアビュー)TG-1」で、今月29日に初出荷の予定だった。東芝としてはこの分野からの完全撤退で、ウェアラブル端末に携わっていた開発や営業のスタッフは他部署に配転になる。
ウェアビューは、工場や倉庫内で使用することを想定し、作業手順やチェックリストをレンズ越しに表示することで、作業効率を上げようというものだった。発表資料では「長時間の作業でもストレスなく使えるよう、軽くて快適な装着性を実現」「人と対面する接客業務などでも違和感を持たれることがない自然なデザイン」をうたっている。資料の最後には、「当社はメガネ型ウェアラブル端末を通じて、今後も多様化するユーザーニーズに応え、より使いやすい機能を搭載した次世代の業務支援ツールを提供し、様々な業種・業態の生産性向上に貢献していきます」と宣言していた。
撤退するところがあれば、攻勢をかけるところもある。セイコーエプソンは23日、新しい技術を開発し、秋に商品化することを発表した。新世代プラットフォームを採用した「MOVERIO『BT-300』」は、光学エンジンに同社独自の0.43型超小型高精細カラーディスプレイを採用したことで、「従来品のコントラストではできなかったスクリーン感を意識させない映像表現を実現」したという。
セイコーエプソンでは「今後、観光などのサービス向けに最適化したモデルを商品化予定」と鼻息が荒い。一方、東芝ではウェアラブルに不採算部門のレッテルを貼った。メガネはもちろん、時計から着衣にまで可能性が追究されているウェアラブル端末の将来やいかに。(編集担当:城西泰)