【自動車業界の2016年4~6月期決算】国内販売は不振続き。海外販売は円高の悪影響をもろに受け、ガマンの時期が続く

2016年08月12日 08:03

 マツダ<7261>は売上高3.7%減、営業利益1.7%減、経常利益17.7%減。四半期純利益42.2%減の減収、大幅最終減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は18.4%。グローバル販売台数は1%増の37.5万台で過去最多。ヨーロッパは6.6万台で22%増と好調で、中国も5.9万台で3%増だった。ともにSUVの「CX-3」「CX-5」が大きく寄与している。

 営業損益ベースで為替の円高は339億円の減益要因だったが、好採算のSUVのシェアが上がった車種構成改善が113億円、製造、部品調達の原価低減などコスト削減効果が143億円の増益要因で、それらが円高の悪影響の大部分を相殺して営業減益幅を1.7%減にとどめている。しかし最終損益ベースでは、北米の販売力を強化する構造改革費用として47億円を特別損失に計上したため、42.2%減の大幅減益になった。

 富士重工<7270>は売上高0.5%増、営業利益24.3%減、経常利益8.7%減、四半期純利益6.3%減の増収減益決算。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は27.6%。北米市場での「アウトバック」などSUVの販売は供給が追いつかず納車待ちが出るほどの好調さが続く。4~6月期の全米販売台数は前年同期比11%増の17万台で、9%増の24.5万台で過去最高だった世界販売台数の69.3%を占める。その7割以上が採算性の良いSUVの車種だった。営業減益はタカタ製エアバッグのリコール費用の負担が256億円と大きく影響し、それを除けば減益幅は5%程度という。平均115%という工場稼働率の高さによるコスト低減効果が効いて、為替の円高による292億円の減益のかなりの部分をカバーできているという。

 三菱自動車<7211>は4月の燃費データねつ造問題の発覚で軽自動車主力車種の生産・販売を一時的に停止し、5月には出資を受け入れて日産・ルノー傘下入りを発表した。4~6月期の世界販売台数は前年同期比16%減。業績は売上高14.3%減、営業利益75.2%減、経常利益81.9%減、四半期純損益は前年同期の239億円の黒字から1297億円の赤字に転落。赤字額は2017年3月期の通期業績見通しの89.4%に達している。営業利益はタカタ製エアバッグのリコール費用135億円の負担もあり大幅減益。最終損益は軽4車種の購入者に補償金として一律10万円を返金するなど燃費試験関連損失として特別損失1259億円を計上し、赤字を余儀なくされた。

 池谷光司副社長は決算説明会で「国内販売は大変厳しい」と状況を説明したが、軽の販売台数は43%減でも登録車はほぼ前年同期並み。北米では人気車種「アウトランダー」が引き続き好調で販売台数5%増。ヨーロッパでも「アウトランダー」が支えになり15%減にとどまっている。中国やロシアなど新興国での販売不振は、不祥事の影響よりは市場環境が悪かったため。

 スズキ<7269>は5月、国土交通省に提出した燃費試験データで国内法規で定められたものとは異なる試験方法をとっていたことが判明した。三菱同様の燃費データねつ造問題の発覚は販売に影響し、国内での軽自動車の販売台数は前年同期比で1.6万台減った。もっとも、インドは1.7万台増の32.2万台で前年同期比約5%増、ヨーロッパは8000台増で、四輪車の世界販売台数は1.2万台減の67.5万台。国内の販売台数の減少を除けば海外ではプラスだった。

 売上高は2.4%減、営業利益は7.2%増、経常利益は1.7%減、四半期純利益は19.7%増の増収、最終増益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は40.8%もある。インドやヨーロッパで四輪車の販売台数が伸びても、為替の円高が進む中でも円ベースの売上が目減りすることがない国内販売が悪化すれば、やはり売上には大きく響く。営業損益ベースでは為替の円高は194億円の減益要因になっている。最終利益が大きく伸びたのは税負担の減少によるもの。

 ■通期業績見通しをトヨタは下方修正。スバルは売上上方修正、利益下方修正

 海外販売比率が大きい自動車業界は為替レートの影響を受けやすい業種。各社とも今期は想定為替レートを相次いで引き下げ、今やドル円が110円だと「楽観的」と言われる有り様。105円でも現状の100~102円台のほうが円高に振れている。現状、ドル円100円を想定する企業には部品メーカーのアイシン精機<7259>や二輪車メーカーのヤマハ発動機<7272>があるが、四輪車の大手では皆無。日産、ホンダ、三菱、スズキは105円で、トヨタでも102円。富士重工はなぜか105円から106円へ円安の方向に修正し、マツダは110円のままである。100円というのはおそらく、願望を込めて長続きしないと考えたくなる、悪夢のような為替水準なのだろう。

 2017年3月期の通期業績見通しは、トヨタ<7203>は円高による採算悪化と熊本地震の影響を織り込んで下方修正を行っている。売上高は5000億円減で6.7%減から8.5%減に、営業利益は1000億円減で40.4%減から43.9%減に、税引前当期純利益は1200億円減で36.3%減から40.3%減に、最終当期純利益は500億円減で35.1%減から37.3%減に、それぞれ修正した。減収、大幅減益の見通しで、減収幅も減益幅も拡大している。予想年間配当は依然として未定のまま。通期の想定為替レートはドル円を105円から102円に改めた。

 北米、ヨーロッパでの販売増が中南米などの地域の落ち込みをカバーし、ダイハツ工業、日野自動車を含むグループ全体の世界販売計画台数は6万台増の1015万台で据え置き。しかし為替の円高により、海外売上の円ベースでの目減りが大きく響く。営業利益も円高で1850億円押し下げられる見通し。

 日産<7201>は売上高3.2%減、営業利益10.5%減、経常利益7.2%減、当期純利益0.2%増の減収、最終増益を見込む。6円増配の48円の予想年間配当とともに修正はなかった。3%増の560万台の世界販売台数見通し、58万台の国内販売見通し、ドル円105円、ユーロ円120円の通期想定為替レートも変更していない。

 8月に話題の自動運転システムを搭載した新型ミニバン「セレナ」を発売し、今後は新車戦略で業績の立て直しを図る。ゴーンCEOは、コスト管理の徹底、継続的な新車攻勢、アライアンス戦略によるメリットが功を奏すると見込み、「通期予想を達成できる位置につけています」と述べている。