東京電力福島第一原発事故に伴う賠償・除染・廃炉・汚染水・中間貯蔵。これに必要な合計額は21兆円を超えるとの試算が、9日、経済産業省が設けた東京電力改革・福島第一原発問題委員会で示された。賠償額はすでに5兆4000億円に上っている。
試算によると廃炉・汚染水対策の額が当初の2兆円から4倍の8兆円に膨れ上がり、賠償も5兆4000億円から7兆9000億円。除染も2兆5000億円から4兆円。中間貯蔵施設も1兆1000億円から1兆6000億円に膨れた。
これらの合計は21兆5000億円。このうち、交付国債枠で国が無利子の交付国債を発行し、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通して東電が支払うべき「賠償・除染」額を立て替え払いする額は中間貯蔵に必要な1兆6000億円を除いて11兆9000億円になる。
4兆円とされる除染費用は東電が単独で返済することになる。株式の売却益などで捻出するというが東電株にどれだけの価値が市場で評価されるのか、不透明。また、これまでの除染費用に国が東電に対し求償すべき額は1兆2210億円(9月末まで分)。
河野太郎前国務大臣がブログで紹介したところでは、国が東電に求償した額は1兆108億円、これに対し、9月末までに東電が支払ったのは5306億円にとどまっている。
賠償額についても、7兆9000億円のうち、3兆9000億円は東電が、その他の大手電力会社が3兆7000億円、新電力も2400億円を負担する。結局、これらは電気料金に転嫁され、国民全体で負担させられることになる。全く理解できない。
原発稼働で得てきた利益は東電株主、東電役員、東電社員、事業に多額の融資をした金融機関に還元され続けてきたはずだが、事故を引き起こした結果、生じた莫大な処理費を国民全体で負担する結果になる。
何より、これら、株主や貸し手責任はどうするのか、役員・社員の待遇は現況の東京電力において妥当なものなのか、改めて、検証する必要があるのではないか。
そして、何より、筆者が言いたいのは、重大な原発事故がもたらす甚大な被害を考えれば、原発を重要なベースロード電源と位置付けたエネルギー政策そのものを再度検討すべきということだ。原発生き残り、再稼働、さらに拡大への道を保証するものになりかねない。
民進党は2030年代に原発ゼロをめざすとしているが、早期に、具体化への道筋を示すべき。示せなければ、原発容認の自民に対峙する政権政党にはなれないだろう。看板ではなく、具体化への道筋が必要だ。
原発事故の現実を前にしても「原発は必要」とする政権か、「原発はいらない」と原発ゼロへの具体化への道を示せる政権か、原発政策においての明確な選択肢を期待する国民は多い。東電の事故による21兆円を超える費用が必要との試算からも原発事故の深刻さが「費用面でも」見て取れる。(編集担当:森高龍二)