増加するネパール人労働者。企業のCSR活動と日本の未来

2018年05月27日 11:01

植樹現場

ローヤルゼリーなどのミツバチ産品の製造・販売を行う山田養蜂場は1999年から、同国で植樹活動を続けている

少子高齢化問題を抱えている日本社会において、人手不足を埋める働き手として、日本で働く外国人の存在感は日ごとに大きくなっている。中でも、ここ数年で急増しているのがネパールの人々だ。

 ネパールは中国とインドという大国に挟まれた南アジアの内陸国。日本人には「世界最高峰のエベレストがある国」といった方がピンとくるのではないだろうか。そんなネパールは、アジア諸国の中でも特に日本への関心が高い国として知られており、外交関係樹立以来60年以上にわたって、友好関係を築いてきた。2011年3月に発生した東日本大震災の際にはネパール政府から真っ先に支援物資が届いたり、逆に2015年4月にネパールで大地震が発生した折には、日本からも災害救助隊が派遣されるなど、同じアジアの友邦として互いに助け合い、絆を深めている。

 そんなネパールへのCSR活動を展開している日本企業も多い。

 ネパールでは森林の伐採が進み、それに伴う土砂崩れなどが深刻化していることを受け、ローヤルゼリーなどのミツバチ産品の製造・販売を行う山田養蜂場は1999年から、同国で植樹活動を続けている。20年目を迎える今年、これまで植樹した樹木が合計46万本以上に達するというから驚きだ。同社では当初、ネパールへ衣類を送付するなどの支援を行っていたが「ただ物やお金を送るだけの活動では、かえって彼らの自立を妨げることになるかもしれない。本当の意味での自立支援活動に繋げたい」との思いから、自然環境を未来の子どもたちへ受け渡すことのできる植樹活動を選んだ。同社では今年も7月に、同国の世界遺産である「チャングナラヤン寺院」にて植樹祭を実施し、2700本を植樹する予定をしており、4泊6日で一般の参加者も参加できるツアーも企画している。

 また、刻み昆布の「ふじっ子」や加工煮豆の「おまめさん」などで知られる食品メーカーのフジッコ<2908>は、ネパールで深刻な保健問題となっている、ヨード欠乏症の根絶に尽力する熱田親憙氏の活動を支援し、「昆布ミネラルカプセル」を無償提供している。

 京セラ<6971>は、未だ無電化地域の多いネパールの学校施設にむけて、教育環境改善の目的で太陽光発電システムと電化設備を寄贈している。教育水準を向上させることは、ネパールの将来的な発展の大きな一助となることだろう。

 教育だけでなく、ネパールは医療面でもたくさんの問題を抱えている。地域によっては診療所が無かったり、重病人や怪我人を医療設備の整った近隣の市に移送したくても、その手段がなかったりする。そんな現状を鑑みて、インテリアの通信販売会社・ベガコーポレーション<3542>は、設備の整った日本の救急車を寄贈するなどの支援を行っている。

 ネパールからの留学生や労働者はこれからも増え続けることが予測される中、企業のこうした地道な活動の一つ一つは、ネパールだけでなく、日本にとってもきっと良い影響をもたらすことだろう。労働力不足が叫ばれる日本社会を救う大きな力になるかもしれない。(編集担当:松田渡)