AIも含むITの進化によって職場における様々な業務プロセス自動化への取り組みが加速度を増している。自動化によって多くの職種で人々の仕事が機械に代替されてしまうことは間違いないであろう。
リスク管理サービスを提供するマーシュ&マクレナン社のグローバル・リスクセンターが「The Twin Threats of Aging and Automation(高齢化と自動化:2つの脅威)」というリポートを発表した。
このリポートによれば、50~64歳の低熟練労働者が全労働人口に占める割合が比較的高いアジアの主要国において業務プロセス自動化によって高齢労働者の仕事が奪われてしまう危険性が高くなっている。
国別に高齢労働者の「職場自動化による代替リスク」を見ると、最もリスクが高くなっているのは中国で76%という指標になっている。次いでベトナムとタイの69%、韓国とチリが63%、そして6位の日本が59%だ。
主要先進国をみると、ドイツが57%、アメリカが52%、イギリスが47%となっている。差は大きく開いてないものの、日本のリスクは主要先進国ではトップだ。
一方、15カ国の中で高齢化率、代替リスクともに最低水準なのはカナダとオーストラリアだ。代替リスクはカナダが47%、オーストラリアは42%となっており、この2カ国の高齢労働者は自動化の影響を比較的受けにくいと評価されている。
レポートでは、仕事の自動化が一般的に難しいとされる高度技能を持つ労働者が多いシンガポール、日本、韓国、ドイツ、イタリアのような国でさえ自動化によって高齢労働者は機械に代替される危険性があるとしている。
レポートの共同執筆者であるアクセル・ミラー氏は「高齢化が進みつつある国々においては、高齢労働者は、特定の仕事に従事する意向と能力だけがあったのでは足りない。『過去の』職場や業務の事情に精通しているのみでは、『将来の』経済社会から追い出されてしまうリスクがある」とコメントしている。
また、同じく共同執筆者のパティ・ソン氏は「政府や企業は高齢労働者を蔑ろにすべきではない。デジタル戦略の拡大だけでなく、こうした高齢労働者の問題に対応していくためのプランも今後は不可欠となる」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)