3月10日、積水ハウスが2022 年1月期の本決算を発表した。前期2021年1月期は新型コロナの影響もあり、減益決算だったが、一転して増収、2ケタ増益の決算となった。受注は引き続き好調で、第5次中計の最終年度となる2023年1月期では、引き続き、売上、利益ともに過去最高を更新する計画だ。
■売上、利益ともに過去最高の記録を更新、増配と自己株取得で株主還元も強化
2022年1月期の売上高は前期比5.8%増、過去最高の2兆5,895億円で、1.3%増にとどまった前期と比べて勢いを取り戻した。営業利益は前期の9.1%減から23.4%増の2,301億円へ、経常利益は前期の13.7%減から24.6%増の2,300億円へ、当期純利益は前期の12.5%減から24.6%増の1,539億円へと、前期の減益から2ケタ増益に一転して利益面でも過去最高益を達成した決算だった。売上、利益の各項目とも期初の業績見通しを上回って着地している。年間配当は前期比6円増配の90円で、これは10期連続増配になる。さらに同日、300億円を上限とする自己株式取得についても決定するなど、株主還元も強化する。
セグメント別の売上高は、「請負型」は全体で1.4%増。前期マイナスだった戸建住宅事業は9.1%増、賃貸住宅事業は7.0%増とV字回復を遂げた一方、前期に新型コロナによる販促イベント自粛による戸建、賃貸の不振を補っていた建築・土木事業は、13.5%減と落ち込んだ。「ストック型」は全体で6.1%増。リフォーム事業は前期の7.6%減から10.7%増へ急回復し、不動産フィー事業は前期の4.3%増から4.9%増へ着実に伸びた。「開発型」は全体で19.8%増。優良な土地を確保して営業体制を強化した分譲住宅事業が37.6%増と大きく伸び、都市再開発事業は2.1%減だが、マンション事業は販売・引渡しが好調で17.5%増。前期減収だった国際事業はアメリカの住宅販売事業、コミュニティ開発事業が引き続き伸びて4.9%増だった。
営業利益では開発型の分譲住宅事業の91.8%増が突出している。開発型のマンション事業の41.6%増、請負型の戸建住宅事業の31.8%増、国際事業の26.3%増、ストック型のリフォーム事業の24.7%増は、それぞれ上昇する資材価格を吸収しながらも順調に収益をあげた。リフォーム事業は積極的な提案活動により、環境性能の向上のような大規模リフォームの受注増が寄与している。営業利益のマイナスは受注環境が厳しくなった建築・土木事業の5.6%減と都市再開発事業の31.9%減。
受注高は全体的には前期の3.2%減から13.3%増へ大きくプラス転換し、ZEHや「ファミリー スイート」などの高付加価値提案が好調な戸建住宅事業は9.6%増、賃貸住宅事業は9.9%増と、コロナ禍が続く中でも着実に伸び、主力事業の請負型全体では12.7%増と2ケタの増加だった。子育て世代の住宅取得支援制度の創設、環境性能を重視する新しい住宅ローン減税制度などの政策効果もあって好調さを取り戻した受注状況は2023年1月期の業績のさらなる向上に寄与しそうだ。
■第5次中計の最終年度は第6次へスムーズにバトンタッチか
2023年1月期の業績見通しは、売上高は7.6%増の2兆7,870億円、営業利益は2.5%増の2,360億円、経常利益1.7%増の2,340億円、当期純利益2.7%増の1,580億円で着実な増収増益を見込んでいる。7期連続増収で、2期連続で過去最高益を更新する見通し。年間配当予想は前期比4円増配の94円で、11期連続の年間増配を計画している。ROEは10.5%の見通し。
セグメント別では、売上高は「請負型」の戸建住宅事業4.3%増、賃貸住宅事業5.7%増、「ストック型」のリフォーム事業5.0%増、「開発型」の分譲住宅事業8.6%増を見込んでいる。2022年1月期が減収だった建築・土木事業は24.8%の増収でV字回復を見込む。戸建住宅、賃貸住宅、分譲住宅やリフォームではコロナ禍の「新しい生活様式」や、リモートワーク化で起きている「都心から郊外へ」のシフトが、今後もトレンドとして持続すると見込んでいる。営業利益では戸建住宅事業2.4%増、賃貸住宅事業3.5%増、建築・土木事業3.7%増、リフォーム事業3.7%増、不動産フィー事業4.0%増、分譲住宅事業3.1%増と、主力事業では資材価格上昇のリスクを乗り越え「ポスト・コロナ」に向けて堅実な増益を見込んでいる。マンション事業、都市再開発事業は2ケタ減益の見通し。国際事業は7.7%の増益の見通しである。
今期は健康、つながり、学びを軸にしたサービスを提供する「プラットフォームハウス構想」第1弾として「PLATFORM HOUSE touch」の販売を開始し、2022年春から地方創生事業「Trip Base 道の駅プロジェクト」のセカンドステージとして、8道県14カ所でホテル(計1,184室)を順次開業させていく計画もすでに始まっている。
2023年1月期(2022年度)は、第5次中期経営計画(2020~2022年度)の最終年度になる。その最終目標に対して、期末の業績は過去のレコードを全て上回って着地する見通しで、次の第6次中期経営計画に向け、減速することなくスムーズにバトンを渡していけそうだ。(編集担当:寺尾淳)