東芝本社。量子科学技術研究開発機構(QST)と東芝は、国際核融合実験炉「ITER」向けに製作した世界最大級の超伝導TFコイルをマイナス269度まで冷却し、1万アンペアの大電流を安定して流す通電試験に成功した
今回のニュースのポイント
量子科学技術研究開発機構(QST)と東芝は25日、国際核融合実験炉「ITER」向けに製作した世界最大級の超伝導トロイダル磁場コイル(TFコイル)について、フランスのITER建設サイトにおいて摂氏マイナス269度まで冷却し、1万アンペアの大電流を安定して流すことに成功したと発表しました。本成果は、実機を実際の運転で想定される極低温まで冷却して超伝導状態とし、1万アンペアまでの安定通電を確認した初の実証事例となります。冷媒漏えいなどの不具合もなく、主要な熱・流体特性が設計想定の範囲内であることが確認されました。
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量子科学技術研究開発機構(QST)と東芝は25日、両者が共同で開発・製作した国際核融合実験炉「ITER(イーター)」向けの超伝導トロイダル磁場コイル(TFコイル)について、極低温下での通電試験に成功したと発表しました。
TFコイルは、超高温のプラズマを強力な磁場で閉じ込めるためのITERの中核機器です。1機あたり高さ16.5メートル、幅9.2メートル、重量310トンという巨大なD型コイルで、ITER本体ではこれを18機、ドーナツ状に配置します。超伝導マグネットシステム全体では直径約30メートル、重量約1万トンにおよぶ超大型構造物となります。
今回の検証では、フランスのITER建設サイトにおいて、TFコイル実機を室温から摂氏マイナス269度まで冷却し、超伝導状態へ移行させたうえで、1万アンペアまでの大電流を安定して通電させることに成功しました。試験では、ジョイント部の抵抗発熱量や極低温下での冷媒の流動特性を精緻に測定し、いずれも設計時の想定範囲内であることを確認しました。また、冷媒漏えいなどの不具合も発生しなかったとしています。
本試験で達成された1万アンペアの通電は、統合試験に向けた重要な段階的成果です。TFコイルの最終的な設計性能は、6万8,000アンペアの大電流を流すことで最大11.8テスラの強力な磁場を発生させる仕様となっています。今回の試験は最終条件そのものの実証ではないものの、巨大なコイルを「製作する」段階から、実際の極低温環境で「安定して動かす」技術実証の段階へと移行したことを意味します。
TFコイルの技術的難易度は、その巨大さと要求される精密さのギャップにあります。310トンという巨体でありながらミリメートル単位の製造精度が求められるほか、実際の運転時にはコイル直線部に最大約6万トンにおよぶ強大な電磁力が作用します。極低温、大電流、強磁場、放射線照射という過酷な環境に耐えうる技術が不可欠とされてきました。
ITERプロジェクトは日本、欧州、ロシア、米国、中国、韓国、インドの7極が参加する国際協力事業です。このうち日本は、TF導体の25%、TF構造物の全19機分、そしてTFコイル本体9機の製作を担当しました。QSTは2008年にITER機構と調達取決めを締結し、約15年にわたる技術開発を経て日本担当分の9機を2023年に製作完遂していました。今回は現地に据え付けられた実機を極低温まで冷却し、大電流を安定して流せることが確認された形です。
ITERの本格的な運転に向けては、TFコイル単体のみならず、各種超伝導コイル、電源設備、冷却プラントなどを統合したシステム全体での運用が不可欠となります。今回の実環境試験の成功は、今後の統合試験運転(コミッショニング)に向けた手引きの確立や課題抽出、リスク低減に寄与すると期待されています。
高さ16.5メートル、重量310トンの巨大構造物をマイナス269度まで冷却し、1万アンペアの電流を通すという今回の技術実証は、フュージョンエネルギーの実現そのものを直ちに意味するものではありません。しかし、日本が15年かけて培ってきた精密製造技術と超伝導技術が、実稼働に向けた極低温環境下でも機能することが確認された意義は大きく、ITERの統合試験運転に向けた重要な成果と言えそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













