ロボット導入「5年以内に多数」が6割、戦略策定は4割 企業に広がる“実装ギャップ”

2026年08月22日 16:37

フィジカルAI

工場で人間と産業用ロボットが協働するイメージ。ロボットの本格導入が見込まれる一方、運用戦略や人材、安全性などの体制整備が課題となっている(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

インテルが20日に公表した委託調査によると、6カ国で実施した調査では、回答者の6割が「5年以内に多数のロボットを運用する」と見込んでいる一方、人間とロボットの協働に関する正式な戦略を策定している組織は4割にとどまることが分かりました。ロボティクス導入への意欲が高まる一方で、人材や運用戦略、安全基準といった現場側の準備が追いつかない「実装ギャップ」の実態が浮かび上がっています。

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 インテルが20日に公表した委託調査「The Robotics Readiness Gap Report」によると、調査対象となった大手組織においてロボット導入への意欲が高まる一方、運用のための準備体制が追いついていない実態が明らかになりました。本調査は調査会社のMan Bites DogおよびColeman Parkes Researchと共同で実施されたもので、米国、英国、ドイツ、日本、中国、韓国の6カ国を対象としています。年間売上高5億ドルを超える組織の経営・IT部門シニアリーダー、ロボティクス専門家、政府・医療関係者ら計800人を対象に意識調査を行いました。その結果、全体の10人中6人(60%)が、今後5年以内に自社や自組織で「多数のロボット」を運用するようになると予測しています。さらに、大規模展開によって業務の生産性が2倍に向上する可能性があるとの予測・期待も示され、ロボットは単なる技術実証の段階から、具体的な事業計画に組み込まれる段階へ移りつつあります。

 しかし、将来的な大規模導入を見込む回答が多い一方で、組織側の受け入れ体制には課題が存在します。調査では、2030年までに67%が「人間とロボットが混在する労働力を管理できる準備が整う」と答え、74%が「人材計画とロボティクス戦略は不可分になる」と回答しました。将来的に人間とロボットが同じ職場で働く未来を見据える回答者が多い一方で、現時点で人間とロボットの協働に関する「正式な戦略」を策定している組織は40%にとどまります。本格導入への意識が先行する中、現時点で正式な協働戦略を策定している組織は4割にとどまり、このギャップ(準備状況の差)が本格的な普及に向けた課題となっています。

 人間とロボットの関わりを巡っては、スキルや人材の面でも壁が存在します。回答者の約3分の2は、ロボティクスの導入によって人間のスキルが低下するのではなくむしろ向上すると捉えているものの、同時に10人中4人が「スキルや人材の不足」を導入規模拡大の阻害要因として挙げました。ロボットが人間のスキルを高めるとの期待がある一方で、その導入や運用を支えるスキル・人材そのものの不足が規模拡大の阻害要因になっている構図が示されています。

 また、安全性に関しても対照的な結果が出ています。回答者の31%が、ロボティクスが最も大きな価値をもたらす領域として「安全性」を挙げた一方で、55%が「安全性への懸念」によって実際のロボット導入が遅れたと回答しました。安全性に価値を見いだす回答がある一方で、ロボット自体の安全性への懸念が導入の壁にもなっています。この点について、回答者の68%がより明確なグローバル安全基準の策定により導入が加速すると考えており、基準の整備が導入を後押しするとみる回答者が多いことが分かります。

 技術面においては、現実空間で動くロボット特有の「処理スピード」の要素が挙げられます。ミッションクリティカルなロボット運用では、回答者の4分の3以上が100ミリ秒以内での意思決定を必要としており、約4分の1は10ミリ秒未満での応答を必要としています。現実空間で動作するロボットでは迅速な判断が求められることから、エッジやデバイス側でAI処理を行う体制も重要になります。調査では42%の組織がエッジ・デバイス搭載AIの戦略策定や予算化を進め、39%が開発を行っていると回答しました。

 今回の調査結果は、ロボットの大規模展開を左右する要素が、ロボット自体の単体性能だけでなく、戦略、スキル、安全性、処理インフラといった周囲の環境整備にあることを示しています。人工知能が現実空間へと広がる「フィジカルAI」が注目を集める中、企業や組織が直面する課題も技術の性能そのものから、働き方、人材育成、安全基準、エッジやデバイス側のAI処理基盤へと広がっています。導入への期待感が先行する中で、人とロボットが共存できる環境をどこまで具体的に構築できるかが、本格普及を左右する要素となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)